北の領主と副団長
翌朝、領主の館に向かう
『冒険者殿、ありがとうございます』
領主が言うと
『間に合って良かったです』
キリシアが言う
『ゴブリンジェネラルを倒すとは思いませんでした』
『あれ弱すぎる!』
キリシアの言葉に領主は
『え?ゴブリンジェネラルが弱い?』
『キリシア殿の相手じゃなかったです』
領主の息子が言う
『そうなのか?』
『子供の相手をするようなものだった』
領主の息子が言うと領主も苦笑いする
『ゴブリンはどの辺りからきたのですか?』
『北の方角ですが、騎士団が知っています』
『逃げ出した奴ら?』
キリシアが言うと
『逃げ出すとは思いませんでした』
『敵前逃亡した奴らは処罰が必要です』
ガシリオが言う
『他の人はいないの?』
『怪我して動けない人たちがいます』
領主が言う
『治療しよう。それで聞き出そう』
マルスが言うと案内してくれる、部屋に入ると運び込んだポーションで治療が行われていた
『リリシャ、回復魔法もお願い』
キリシアが言うとリリシャとミリアとアニーが回復魔法をかけて回る
『ガシリオ!』
『生きていたのだな!』
『他の騎士達は?』
『ゴブリンの大群を見て逃げ出したよ』
『え?』
若い騎士は呆然とする
『馬鹿言うな!』
『事実だ!リベリアの冒険者が来たから助かっただけだ!』
ガシリオは怒りの表情で言うと
『くっ、なんて事だ!!!騎士が敵前逃亡とは・・・・』
『住民が逃げれないように門を閉ざしていたぐらいだ!』
『は?そんなこと・・・・』
騎士は領主が来ているのを見て
『騎士団に逆らったら、反逆罪とか取り潰させるぞとか言っていました』
領主が言うと
『そんなこと・・・・・あり得ない』
周りの騎士達も話を聞いて怒り始めている
『誰が指揮を執っているんだ!』
『それだけじゃない!騎士団長に報告も上がってなかった!だからこの事態を王都は知らない状態だった!』
『は?なんだと!!!バカな!あり得ない!!』
『団長に増援の状況を確認する手紙を出したら、確認の為に騎士団員が飛んできて確認して帰った程だからな!!』
『なんだと!そんなことあり得ん!ガシリオ、嘘じゃないのか?』
『嘘ついてどうなる?それよりも、早く団長に報告を出す方が先だろう!』
ガシリオが言うと団員達は相談を始めて、片腕の騎士が王都に向かう準備をし始める。他の団員も鎧を着て見回りの準備をする
『騎士が面会を求めてきています』
兵士が言うと
『すぐに通せ』
領主はここで会うことにする
『副団長!』
騎士達は驚き声を上げる
『お前達は何をしている!報告は!!』
『副団長、この者達は今まで怪我して治療していた所です』
ガシリオが説明すると
『ガシリオ!どうなっているんだ!』
『昨夜、残っていた騎士団員と魔法士団員は逃亡しました』
『は?何を言っている?』
副団長は領主を見ると
『町の警備や兵士の規律を奪って門を閉ざしていたくせに、ゴブリンの大群を見て逃げ出しました』
領主が言うと
『そんな馬鹿な!誰が指揮を!!』
『騎士団の言う事を聞かなかったら、取り潰しや反逆罪だと言われました』
『馬鹿な!そんなことあり得ない!!』
副団長は怒り、騎士達を睨みつける
『ガシリオがいなかったら、昨日、この町は全滅していたよ』
キリシアが言うと
『なんだと!本当か』
『事実です!リベリアの冒険者達が来てくれなかったら、今頃この館もゴブリンに占領されていました』
領主が言うと
『冒険者に後れを取ったのか!精鋭騎士が!』
『当たり前です!本物の英雄の前に騎士では勝ち目がありません!』
ガシリオが言うと
『本物の?まさかこの者達がヴァンパイアを倒した者なのか?』
『そうです!騎士団の精鋭でも子供扱いされますよ!私なんか訓練でボコボコにされ続けていますから』
ガシリオが笑いだす
『は?そんなに強いのか?』
『昨日も、ゴブリンジェネラルを一対一で余裕で倒して弱すぎると叫んでいましたから』
領主の息子が言うとガシリオが大笑いする
『あのゴブリンジェネラルを!!』
『北の門の外を見ればわかります。昨日の戦いを見ていた者はまだ信じられない光景でしたから・・・・』
領主の息子が言いながら言葉を詰まらせる
『先に確認させて貰う!』
副団長は戦場を見に行く
副団長と団員はゴブリンジェネラルとオーガとゴブリンの大量の死体を見て
『本当に・・・・こんなことが・・・どんな魔法使いが・・・オーガは剣士か・・・・こっちは槍だな』
副団長はガシリオの言っていた意味が本当と自覚する
『副団長・・・これは・・・』
『間違いなく倒されてから間もない・・・魔法以外は3人だな!』
『え?何故ですか?』
『槍とオーガを斬った者とあのオーガを倒した者の3人だ!』
団員も見て気が付き
『こんな強い人なんているはずはない・・・』
『噂ではリベリア最強の冒険者は20階層に到達しているからな・・・・』
『え?本当ですか?』
『それに国王に献上された魔法のランプと改変報告も、その冒険者達と言われているから魔法使いもいる』
副団長はそう言うと領主の館に戻ってくる
『確認した・・・間違いなく倒されていた。倒したのはヴァンパイアの証を持つ冒険者で間違いないな!』
『副団長、間違いありません』
ガシリオが言うと
『一手訓練してみたいな!』
副団長が言うと
『やる?』
キリシアが微笑み言うと
『え?まさかこの娘が?』
副団長がガシリオを見ると
『副団長、地獄を見ますよ』
ガシリオが苦笑いすると、警備隊隊員がみんな苦笑いする
『なんだ!ガシリオ!』
『やるなら訓練用の槍用意して』
キリシアがニッコリする
『領主様、訓練場と訓練用の武器貸してください』
マルスがニッコリして言うと案内してくれる。そしてキリシアは槍を持って中央に向かう
『相手して貰おう!』
副団長が剣を持って向かう
『はじめ!』
ガシリオが合図をすると
副団長は闘気を纏い、そしてキリシアに斬りかかるが、すべてかわしながら、ニッコリ笑い、槍で手を弾き、そして腹を払い弾き飛ばす。壁に叩きつけられて副団長は気絶する
『リリシャ、回復魔法』
リリシャは回復魔法を使い治療する
『ありがとう』
副団長は立ち上がりガシリオを見る
『わかりましたか?一対一じゃかなわない事が!』
ガシリオが笑うと
『勝てる気がまるでしない!!』
副団長も大笑いする
『ガシリオ、お前が帰ってこないのはこれが原因か?』
『警備隊で訓練するのが楽しい!どうだリベリア警備隊隊員と騎士団団員の一騎討ち、見てみたくないか?』
『は?良いが勝てるつもりか?』
『面白いと思うぞ!リベリア警備隊は強くなったぞ!』
『おい、誰か相手をしてやれ!』
騎士が剣を持って中央にいくと、警備隊隊員も剣を持って中央にいく
『はじめ!』
警備隊隊員は斬り込み、騎士は剣で受けるが、警備隊隊員は次々と打ち込み、騎士の反撃をかわして腹に一撃を加える
『馬鹿な、敗けた・・・・』
騎士は悔しそうな顔をする
『ぐっ、まさか警備隊に負けるとは!なんだ!あの動きの良さは?』
副団長が言うと
『地獄の特訓と目標の高さですね』
ガシリオはキリシアを見て言う
『なる程な。キリシア殿、騎士にならないか?』
『面倒。冒険者がいい』
キリシアはそっけなく言う
『国王陛下に報告すれば爵位も貰えるぞ!』
『いらない。面倒!』
『褒美はいらないのか?』
『面倒ならいらない!!変わりにガシリオもらっておいて』
キリシアはキッパリ言うと
『ガシリオ!キリシア殿は野心は無いのか』
『国王陛下への献上も、面倒だからってギルドマスターを小間使い代わりにするくらいだからな。無理をいうな!』
ガシリオが笑うとみんな笑いだす
『そんな馬鹿な事が・・・・確かにバイルがよく来るようになったな・・・・・』
『わかったか!だから静かに迷宮に潜っていてくれたら良いし、時々警備隊で訓練をしてくれたらありがたいだけだ!!』
ガシリオが大笑いする
『槍の天才か』
『天才じゃない!マルスのおかげ!』
キリシアはマルスを見て言う
『仕方ない、マルスだからな!』
ガシリオが言うとみんな笑いだす
『え?なんだ!ガシリオ』
『マルス、面倒だから騎士団相手にちょっと本気だして!』
キリシアが微笑みながら言うと
『キリシア、あとが面倒』
マルスが呟くと騎士が1人出てきて誘う
『マルス、面倒なら瞬殺で良いから』
キリシアが笑うとマルスは剣を片手に中央に向かう
『面倒だから副団長も含めて全員でかかってきて』
マルスが笑うと
『副団長全員じゃないと相手にならないと言われていますよ』
ガシリオが焚き付ける
『良いのか?』
『いつも警備隊隊員を30人相手に訓練してくれるから余裕だよ』
ガシリオが笑い、騎士団団員全員と副団長が並ぶ
『副団長、良いですか?』
『オーガを殲滅したのは彼だろう!』
副団長が言うと団員は顔色を変える
『はじめ』
騎士達は構えて待ち受ける
『来ないならこっちからいくけど、良いかな?』
騎士達は動かず構えている。マルスは近づきながら、急にスピードを上げて1人目を弾き飛ばし、次々と弾き飛ばし、最後に副団長の剣をかわして壁に弾き飛ばす
リリシャとミリアとアニーが回復に回り、騎士達は立ち上がる
『こんな事が・・・・』
副団長はガシリオを見る
『いつもの事です。これで強さはわかりましたか?』
『正直勝てる気がしない!』
『今回のゴブリン討伐は、この子達のサポートにみんな回る事で良いですよね』
ガシリオが言うと
『仕方ない・・・悔しいがそれが一番だな』
副団長は認める
『じゃあゴブリンどもの巣穴に進攻する時は、なるべく無理はしないで、大物はこの子達に任せる作戦で良いですか?』
『仕方ない!私が認める!良いな全員』
『了解!!!』
騎士達は背筋を正して言う
『ガシリオ、これが狙いで焚き付けた?』
キリシアが言うとガシリオは苦笑いする
『してやられたな!ガシリオめ!』
副団長も大笑いすると騎士達も笑いだす
『面倒な事は絶対しないからね』
キリシアが言うと
『面倒な報告は副団長と騎士達と領主に押し付ければ良いと思いますよ』
ガシリオが言うと
『約束だからね』
キリシアが副団長を見て言う
『国王陛下には私から申し上げます』
副団長が言って約束をすると
『領主として約束します』
領主が言うとキリシアが笑顔で微笑む