密談
アルクオドールとルキアが休憩に部屋に向かい、シルトバス伯爵夫人を呼び出す
『アーメルド伯爵、何か御用ですか?』
シルトバス伯爵夫人が案内されて入ってくると、アルクオドールに勧められて、席に座り、侍女が飲み物を持ってくる
『もう少しお待ち下さい』
アルクオドールが微笑みながら言い席に座り、ルキアが隣に座る
『何の用でしょう? 若い2人の式でも呼び出されたなら、先に用向きを伝えるのが筋ではなくて?』
伯爵夫人がアルクオドールを睨んでいる
『アルクオドール、お待たせ』
マルスとリリシャとキリシアとエミールとミリアとアニーとメトリシアが入ってくる
『え! ミリア・・・』
伯爵夫人が驚いて立ち上がる
『本来なら、面と向かって話は避けるべきなのですが・・・』
リリシャが考えながら言う
『何か困っているのですか? まさか! ミリア、子供でも出来たのですか?』
伯爵夫人がマルスを睨んで言う
『えーーーーーーー! マルス師匠、そうなのですか!!』
メトリシアがマルスを見て叫ぶ
『それは無いから!! メトリシア・・・冗談はやめてください』
マルスが慌てて言うと、リリシャが爆笑している
『伯爵夫人様、個人的な事では無いです』
アルクオドールが笑いを堪えながら言うと、ミリアとアニーが顔を見合せて笑っている
『どのようなお困り事ですか? 支援も出来ないほど、伯爵家の屋台骨は傾いていますが・・・何が望みですか?』
『え! そんなに酷いのですか! 奥様』
アニーが驚いている
『アニー・・・あなたは去って正解です。 分家も分家・・・税をあげて住民の流出に、魔法使いの質が酷く下がり、今年は宮廷魔術師にもシルトバス家出身者も居なくなり、シルトバス伯爵家の名声も地に落ちました。このような状況で支援など出来ません』
伯爵夫人が諦めたように言う
『え! そんなに・・・何故話したのですか?』
アニーが驚いている
『はぁ・・・元を辿れば、息子がアーメルドに対してした事が原因です。アルクオドール様より追及と怨み節ぐらいは、覚悟の上、本日訪問しています』
伯爵夫人がアルクオドールを見て言う
『・・・その事は報告書と重臣から話は聞いています。 祖父の死後、急遽家を継いだ時に、国王陛下よりリベリアの英雄様と仲良くして欲しいと言われてました。 本来ならアーメルド伯爵家の取り潰しも有り得た状況です』
アルクオドールが伯爵夫人を見て言うと、ルキアが驚いて目を見開いている
『そうですね・・・王家にも報告をしなかったからこそ、シルトバス伯爵家は存続してますが、ギリギリです。先のミリアを罵った分家の馬鹿の所為で、分家も完全に沈黙して、領地運営に追われています。完全に没落ですね』
伯爵夫人が諦めたように、アルクオドールを見て言う
『没落して魔法使いを目指していた、魔法使い見習いは居ますか?』
マルスが笑顔で聞く
『は? 何故? 家臣の家もかなり衰退して、今年魔法学院を受けれないほど、資金難の者は何人もいますが・・・何を考えていますか?』
伯爵夫人が驚いて言う
『アーメルドに移住させませんか?』
マルスが笑顔で言うと、伯爵夫人が驚いている
『アーメルドも人を雇えるほど、余裕は有りません』
アルクオドールが考えてから言うと、伯爵夫人がアルクオドールを見て考えている
『えーと・・・お母様、この魔法のランプがアーメルドで貸し出されます。 貸出し商会で魔力補充係を募集します』
ミリアが考えながら説明を始める
『魔力補充ですか? 魔力補充銅貨20枚で・・・生活は出来ますか?』
伯爵夫人が考え込んでいる
『商会のすぐ近くに、商会が借りる部屋を用意して、格安で貸し出します。贅沢をしなければ生活は出来ます。 特に魔法使い見習いなら、修行になります』
マルスが笑顔で言う
『そうですね・・・悪い話では無いですね・・・これ以上若い人を雇うのは不可能です。質が更に落ちてしまうので・・・生きていけるなら、今年魔法学院を受けさせてあげれなかった家臣の子息と子女の移住なら可能です』
伯爵夫人が考えている
『実力があがれば、シルトバス家に戻り、再仕官も考えてあげてください』
アルクオドールが笑顔で言う
『アーメルドには、利点が無いですが良いのですか?』
『実は、魔法使いを大量に雇うと、流石に王家や近隣諸国と隣接する領地の方に、不審感と驚異に思われます・・・妬みも相当です。 今年の2人雇うのでも、気を使いました。 1つだけ誤算は、マルス様達がやる気を出し過ぎて、まさか、多く魔法のランプを用意してしまうとは思いませんでした』
アルクオドールがマルスを見て言うと、伯爵夫人が驚いている
(え! まさか・・・リベリアの英雄様が魔法のランプの商会の魔法のランプを作製を・・・真似が出来ないのは、実力が違いすぎるからですね・・・)
『マルスの所為です。ミリアも気合い入れてましたね』
リリシャがミリアを見ている
『え! 才能の欠片も無いのに、気合い入れて最低のランプを作ってしまいました。本当にごめんなさい』
ミリアが頭を下げながら言うと、伯爵夫人が驚いている
『ミリア・・・ごめんなさいね・・・ミリアの才能を伸ばせなかったのは、家の魔法使いが能無しばかりだったからですね』
伯爵夫人が後悔したようにミリアを見ている
『お陰でマルス師匠に出会えました。感謝してます』
ミリアが笑顔で言う
『少し教えて欲しいのですが・・・魔法の基礎は何ですか? 領地の魔法使いと魔法学院の生徒では、根本的に違いすぎます』
『ルキア、教えてあげてね』
マルスが笑顔でルキアを見て言うと、伯爵夫人がルキアを見ている
『魔力制御です。 魔力量がいくら有っても魔力制御出来なければ、意味有りません。 詠唱など魔力制御出来なければ、いくらしても無駄です』
ルキアが笑顔で伯爵夫人を見ている
『そうですか・・・やはり・・・基礎を学ばせるにしても、教える魔法使いが居ません・・・シルトバス家は衰退する一方ですね・・・』
伯爵夫人が悔しそうに呟く
『若くて、これから学ぶ気が有れば、アーメルドで学べば良いです。頭の固い講師達も使い物にならないのだから』
マルスが笑顔で言う
『はい! 講師に何も教えて貰ってません、ルキアちゃんが文句言ったら、泣いて飛び出して行くだけです』
ミリアが笑顔で言う
『は? 泣いて飛び出していく? 何故?』
伯爵夫人が驚いている
『講師が出来ない事を生徒が全部出来るから、文句言われると、逃げ出すだけです。最初の頃は、免除されているから、研究室でゆっくりしていてくださいって言っていたけど、最後は授業も何もしてくれなくなりました』
ミリアが笑顔で説明していると、伯爵夫人が少し嬉しそうに聞いている
『今年の卒業生は、魔法師団に入った人も今までの宮廷魔術師以上の実力者です。使えない宮廷魔術師達は、いつでも魔法のランプの魔力補充係に降格されます。 本当は、お母様から内密に話して貰うつもりでしたけど、シルトバス伯爵家の面子を考えて、今日密談をしています』
メトリシアが笑顔で言うと、伯爵夫人が驚いている
(密談? さらっと宮廷魔術師が魔力補充係に降格と言いましたか? 噂では聞いてましたが・・・今年の卒業生は、歴代最高の実力者の集まりと言うとは、本当でしょうか?)
 




