1話 転生が失敗した
『ん・・・・』
窓からの朝日が差し込んでいた。
『無事に覚醒できたみたいだな・・・』
しかし直後、記憶の統合が始まったのと同時に頭痛に襲われた。
『うーーぁがぁ~~頭が割れる』
目の前が真っ白になり、うずくまる体の感覚が消えていく。
記憶の統合に失敗した。
それは転生に失敗したことを意味する。長い間かけて準備した転生魔法は完璧であったはず、しかし失敗してしまい大切な記憶が失われた。
何かが聞こえてきた。
『・・・・マルス』
『マルス大丈夫?』
『マルス!!!』
大きな悲鳴を聞いて母親が心配そうに呼び掛け続けている。
『・・・ん』
かすかに目を開けた。
そして意識を失っていく。
暗闇の中、目を覚まし周りを見渡す。
窓からは月が見えていた。
寝台より起き上がり、外に広がる景色を確認する。
そして、手足を確認する。
何かを思い出そうとすると霞がかかったように思い出せない。
転生したことは覚えている。しかし、転生前の記憶をほとんど覚えていない。はっきりしているのは、魔法が使えていたことと長く生きたことにより、転生をする事を決めたこと・・・。
『記憶が無いのは仕方ない。折角子供に転生出来たのだから人生を楽しもう』
物音を聞いて母親がやってきた。強く抱き締めて涙ぐんでいる。
『マルス』
いきなり強く抱き締められた。『マルス大丈夫?』涙ぐんでもいた。
『お腹空いた』
言葉を聞いて母親が驚き目を丸くする。
『ごはん食べられる?』
『うん』
扉から小さな女の子が覗き込んでいる。
『お兄ちゃん大丈夫?』
『大丈夫だよレディナ』
言葉を聞いて笑顔になる。
そして抱きついてくる。
その後ろに父親がやってくる。
3日間意識を取り戻さなかったからかなり心配していたことが解った。
母親が温めたスープとパンを用意してくれた。
テーブルで食べながら、まだ心配そうに家族が話しかけてくる。笑顔で話をしながら家族団欒を楽しんだ。