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97 宿


 アイドルグループのエルフ48とダスト君一行は、赤の森を歩く。

 美少女だけの集団。

 厳密にはこの中に一人だけ男が混ざっているのだが、当てるのは難しいだろう。


 森守の親子は、しばらくすれば回復するはずなので犬娘に任せて放置した。

 ひどい?

 いやいや、女の子の味方をしただけだから。

 浮気の心配が無くなった犬娘は尻尾を振って喜んでいたので、悪くない取り引きだったように思う。


 当初は森守の家に泊まる事も考えたが森守の家は狭くて不可能なので、宿を求めて少し遠いがメルカーナの村を目指して歩いている訳だ。



「お前様、日が暮れて来たのじゃ。」


「仕方ないか、ここからは別行動をとろう。」


 やはり、このまま歩いていると遅くなる。


 可哀想だが、駆け出しのアイドルなんてブラックなお仕事だ。村までは少し遠いが、皆には頑張って歩き続けてもらおう。

 到着出来ないとホームレスになるし。


「ピンク、僕たちは先行して村に帰って宿を手配するから、エルフ達の引率を任せたよ。頑張ってね。」


「師匠、了解ですにゃ。」


 石化したコイシちゃんをバシッと掴み、ハクレンに背負われる。

 シュタタッ!と凄い速度で駆け出す。

 サラに背負われたリリイもそれに追従し、さながら2つの流星のようだ。



 あっという間に、村に到着。

 相変わらず村の男共の視線が痛い。


 可愛いってのも罪だね。

 ゾクゾクする。

 僕に惚れちゃった?


 美少女達に見蕩れて動かなくなった旦那のケツを蹴り上げて、村のおばちゃんが近寄ってきた。


「まったく男共ときたら!!あれ?あんた等、調査員さんは?」


「兄は別の探索に出掛けたので、代わりを僕が引き継ぎました。」


 さらりと嘘を吐くダスト君。


「あらまあ!そうなの。それにしても似てないわねぇ。貴女は、なんて綺麗なのかしら。」


「ありがとう。」


 ダスト君は素直に照れた。

 そして、そんなダスト君のご尊顔に見蕩れていたおばちゃんは、ふと何かに気付いたようで困り顔になる。


「でも、調査員さんが出掛けたのは困ったわね。今夜はダブルホーンの煮込みを少し作りすぎたかも。」


「あはは。」


 ダスト君はとても少食なので笑って誤魔化したが、そこにリリイがフォローを入れた。


「それについては問題無いのじゃ。今夜は森の妖精を保護して連れて帰ってる途中なので、もっと料理を作って欲しいのじゃ。具体的には、子供が50人増えるぐらいかの。」


「50人!?」


「頼んだのじゃ。」


 大銀貨一枚をそっと手渡した。

 大銀貨を見つめて目を白黒させるおばちゃんをそのままにして、村長宅へ向かう。


 うちのロリが迷惑をかけますと、ペコリと頭を下げておいた。

 村長宅は、この村ではかなり大きい。村の集会場も兼ねているのだろう。

 どのような交渉をするのか分からないが、ここからはリリイにお任せだ。

 頼んだよ。


「村長ー。相談があるのじゃ。」


「おーぅ。調査員さん達か。何か困った事でもあったですかな?おや、見ない顔だね。あのー、調査員さんは?」


 のしのしと、村長が奥から出て来てお出迎えをしてくれる。

 気まずそうに豚野郎を探してキョロキョロする村長。美少女圧が高すぎたのか豚野郎に心の平穏を求めてくる。


「兄は別の探索に出掛けたので、代わりを僕が引き継ぎました。」


 ニッコリ微笑み、またしても可愛いよの返答を期待するダスト君。

 ちっと舌打ちしたロリババアがそんな2人を押しのけて話を進める。


「お前様よ、そのくだりはもうお腹いっぱいなのじゃ。それよりも村長、今日は頼みがあって来たのじゃ。」


「おおぅ、何か知らぬが入ってくれ。」


 ロリババアに気圧され、たじろぐ村長と客室へ移動する。

 古いながらも立派な家だ。


「しかし、この家はこの村で一番大きいのう。見事なのじゃ。」


「まぁ、集会場も兼ねとるからな。」


 褒められた村長は満更でもなさそうだ。

 リリイが何故か珍しく露骨にヨイショをしたのが気になる。


 ソファに座り、出されたお茶を飲みながら話を切り出した。


「村長よ、妾達は少し困った事になってしまってのう。赤の森で妖精を保護したのじゃ。」


「妖精とはなんですかの?」


 不思議ワードをぶっこまれて戸惑う村長に、どう説明するのかとロリを見ていると、なにやら魔法を唱えだした。


鷹の目(イーグルアイ)


 ボウッと机の上に40センチ四方の立体映像が映し出された。

 少し上空から、赤の森の中をフィギュアが歩いているかのような映像だった。

 赤の森の中を、村に向かって歩くピンクが率いるエルフ48が映っている。先頭の5人くらいが見えるアングルだ。


「これは、いったい?先頭の子達は見た事がある気がするのだが。」


「その通りじゃ。猫娘が森で保護した少女達を連れて、今この村に帰ってきておる。」


 ちょいとリリイが指先を動かすと、映像がズームインになりエルフの美少女の表情がアップになってよく見えた。

 歩き慣れないのか、その顔には疲労が見える。


「この子達は?」


「先程、妖精と言ったが、赤の森の難民じゃ。家を失って今夜はこのままでは野宿じゃろう。何とかしてやりたいのじゃが。妾は、この村の住人で無いしのう。」


「そんなの、村に受け入れますよ。子供を野宿させるなんて出来ない。」


 村長は良い人らしい。

 かなり真剣に食いついているのを確認し、リリイがニヤついた。



「しかしのう。その気持ちは有り難いが、借りている部屋はちと手狭なのじゃ。」


「なら、この家を使ってくれればいい。」


 先程、広い家を褒められた事もあり、するすると誘導された。5人ぐらいなら余裕だろうと思ったのだろう。


「それは誠か!頼もしい事を言ってくれるのじゃ。心細いだろうから、彼女達はなるべく同じ家に入れてやりたい。いや、しかしのう。ここは奥方の意見も聞いた方が良いのではないのか?」


 ちらりと、村長の妻を見る。

 村長は妻とアイコンタクトをする。


「あんた、アタシも賛成だよ。」

「そうだ。心配せんでええぞ。メルカーナの村は子供を見捨てない。我が家で全員の面倒を見よう。」

「あんた、格好いいよ。」


「それは安心なのじゃ。家は7日以内に用意するので、それまで世話になるの。」


 一件落着となり、ほんわりとした空気が流れた。

 村長の夫婦は愛情を深めた。




 そんなほんわりとした空気をぶち壊すのは、やはりリリイ。


 すいっと手を動かすと映像が、今度は逆にどんどんとズームアウトする。

 難民の全体像が見えてきた。

 5人のエルフが10人に、20人に。どんどんと長い行列が見えてくるではないか。



 どんどんと、青ざめる村長達。



 リリイは、ニッコリ笑って、駄目押しの小金貨を握らせる。


「助かったのじゃ。流石はメルカーナの村長。」


 邪気の無い笑顔に負けて、震えながら悪魔から金を受け取ってしまった。

 今更無かった事には出来ない。


 この瞬間、村長宅はエルフ48に乗っとられたのだった。



 これが、女傑リリイ・アーハイムの手腕。





「何か言いたそうじゃの?」


「結局、金じゃないかーー。」


 ダスト君は、月夜に吠えた。



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