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93 エルフ17


 イヨーオッ!


 パパパンパパパンパパパンパンッ!



 異能発動によりバチバチと発光する様子は溶接工場のようだが、ここは錆びたような焦げたような仕事場の臭いはしない。香水のような新緑の香りと女の子の香りで充ちていた。

 エルフ製造工場から、次々と美少女エルフが製造される。原料の紅葉蟹は沢山いるし、ハクレン達にとって、こんなの軽いお仕事だから。


「御主人様、速度上げて行くっす。」


 ダストが伸ばした手に次々と供給される紅い蟹。まるでピストンのように3人が供給を続ける。


 文明レベルが低いだけのクソつまんない異世界から、ファンタジーとして産声を上げつつある。



 実に順調だ。

 工場はフル稼働する。


 しかしながら、最新工場のあおりを受ける者もいる。昔ながらの手作りで一品を作る時代ではなくなったのだ。仕事を工場に取られた猫娘は考える。


 猫娘ピンクは賢い。

 というか、けっこう計算高い。


 アルジャーノンに花束を、という馬鹿の方が幸せに生きれるみたいなお話があるが、つまりはそういう事だ。

 気付かねば、幸せだったというのに。


 気付いてしまった。



 ふるふると震えだす猫娘。

 口を開いた。


「ピンクって、もしかして、かませですにゃん?」


 ダストは、そっと目を反らした。


 


「うっにゃーっ。師匠ぉ何か言ってくださいにゃ。」


 真っ赤な顔で、あざと可愛く計算された猫の仕草は、無意識レベルでダストから望む回答を引き出す。

 可愛さを自覚したクソ猫の前で踊るといい。


「そ、そんな事無いぞ。ピンクが一番最初に捕まえたから役に立ってる。」


 ダストは誘導された。

 コロコロと。

 飲み屋のお姉さんに手玉に転がされるように。気持ち良く転がる。


 この娘、何処でこんなテクニックを?

 普通に酒場だったな。


 可愛い女の子が困れば、男は手を差し伸べざるを得ない。棒を押したら倒れるかのように。


「師匠、優しいですにゃ。」


 そして、自然に泥まみれのまま抱きつく。避けていい流れでは無い。

 ダストはこれを避けられない。


「ピンクゥ、汚れんだろぉ。」


「むしろ汚してやるですにゃん!」


 なんと、ここに来てダスト争奪戦を強引に食い込んできた。試合に負けて勝負に勝つ。

 これがピンクの戦い方。


 前回優勝者のコイシちゃんは、まさかの種族特性が仇になり移動出来ないっ、ここで無念の脱落!

 というか、凄いハンデで生活してるのだなこの娘。


 泥棒猫ピンクは巻き返した。

 完全に、息を吹き返した。


 2人だけ汚れるという、お揃い感を演出するのが小憎い。にゃふふ。



 一人出遅れたリリイは、ゆっくりと近付くが、二番煎じでダストに抱きつき汚れるのは女帝のプライドが許さないだろう。

 ここに計算高い猫娘ピンクの策略が隠れていた。


「リリイさん、あまり近付くと、汚れてしまうですにゃ。」


 こっちくんにゃよ、ロリババアと牽制っ。



 甘いんだよ、小娘がっ。

 妾は、リリイ・アーハイム!


「汚れた泥棒猫から妾が綺麗にしてやるのじゃ。ウォッシュ!」


 シュワシュワとした泡に包まれ浄化する2人。魂まで浄化すると、そのまま消えそうな2人であるが残ったようだ。


「甘いのう小娘。少しばかり頭が回ってもしょせん人間の敵では無いのじゃ。」


「にゃ!」


 同じ種族である事を強調し、さらりとお揃い感を書き換える。

 歴戦の強者。


「お主様、褒めてくれてもええんじゃよ?」


 ピタリと寄り添うロリババア。



 これは落ちたか?

 童貞ダスト。


 しかしながら、勝負に夢中になるあまり2人は肝心な事を見逃していた。

 ダストは今、仕事中であった。



「あー、もう邪魔だっ!」


 2人の美少女を振り払う。


 そして、よろめく男は一歩前へ!

 高速で稼働している工場は危険なのに、不注意で踏み込む。

 ハクレンは止まれなかった。


 交差する2人。


 ハクレンの美脚とダストの頭脳は急速に接近する。


 ゴスッ!





「「「ダストーーー!!」」」


 そして一つになる美少女達の悲鳴。仲良き事は美しきかな。

 豚野郎ダストは、笑顔で倒れる。



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