91 正妻力
「エルフだぁぁあ!」
興奮したダストの叫びに、びくぅっとエルフの少女は震える。人間怖い。
森の服を纏った、おどおどした少女は神話から切り出したかのように神秘的な美しさを秘める。
あぁ、異世界に来たんだなと実感した。すとんと、胸になにか落ちるものがあった。
コース料理のメインの肉が、ようやく出て来たような安堵感。
「やったよ!コイシちゃん。」
「ダストは偉いよ。」
喜びの爆発したダストは、ぎゅっとコイシちゃんの胸に抱きつき顔を埋め、撫で撫でされながら喜びを分かち合った。
習慣とは怖いものだ。
種族特性を活かした誰も真似出来ない膝枕を極めし女コイシは、習慣というアドバンテージを密かに築き上げ、ここに来て正妻力を見せつける。
この女の正妻力は、53万!
出遅れたハーレムメンバーは歯噛みする。
ハクレンは、ボリボリと人参を齧る。あっ、コイツは、変わらない。
いやっ、それは違う!待ってくれ。音がポリポリから、ボリボリに変わってる。無意識のヤケ人参だ。くそ可愛ええ。
リリイは、計算を始める。ロリな外観に隠された大人の女。巻き返す手練手管は、ストックが違う。それは内包された大人の余裕。ファーストキスを奪った唇で妖艶に微笑む。
猫娘ピンクは、今からさらに抱きつき巻き返そうとするが、汚れてしまった哀れな自分の姿を見てしまう。
動けない。
まるでピエロだ。
大切な人の喜ぶ顔が見たくて柄にも無く夢中になり汚れたが、しょせん正妻力の足りない虚飾で飾った女である事が露呈する。
分かってた。
「良くやったぞ、ピンク!」
彼の言葉を脳内でリフレイン。大丈夫、私はこの言葉で生きていける。
馬娘サラとポニーは、今のところ果実以外には興味を示さないクールビューティー。サイズの違いという厚い壁のあるフェアリーは、鱗粉を撒き散らしふよふよと飛ぶ。樹人ポーは、そもそもこの場に来ていない。
こいつらは、別次元!
ダストは思い出したかのように、笑う。
「ハクレン リリイ ピンク サラ ポニー あと妖精も、ありがとうな。」
彼女達の間にあった不穏な冬のような空気は、春風のように変わる。
眩しい笑顔でダストの感謝を受け取る。
そう。彼女達は、チョロインである。
「ちょっと、私だけ扱いが雑なのだし!」
至福のなでなでタイムは終了だ。俺にはやるべき事がある。とキリリと大人の顔になるダスト。
ご機嫌斜めなフェアリーを肩にとまらせてご機嫌をとった。
「ハーミットォォ!がぶう。」
「痛ててて。」
夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、犬娘にかじられる声が聞こえた。
しかしながら、ダストは、森守の息子の捻くれクソ野郎に初めて好感を持った。
エルフの良さが分かるとは、もしかしたら、良い酒が飲めるかもしれんな。酒場〈乙女達の楽園〉に招待してもいいかと。
一目見れば囚われる。
ファンタジーの化身、それこそがエルフだ。語り合いたい。
コオオ。
そんな効果音が聴こえるような、男は背中にオーラを纏い、肩に妖精を乗せる。
ダストは神々から、使命をその右手に託された。
この退屈な異世界が、ファンタジーへと進化を遂げ一つ上のステージに上がるために。
俺だけの異能の右手に纏う燐光は消えていない。そうだ、この光りは祭りが終わるまで輝く。
情熱という火を焚べて、輝き放つ。
待たせたな。
エルフ祭り開催じゃあ!
「さて、エルフ補完計画も遂に、最終段階を迎えた。プロジェクトメンバーよ、今まで良く頑張ってくれた。ひとまず感謝を。それでは最後の仕上げと行こうか。ここからは、大漁獲得の必要がある。気合い入れて、一気にっ行くぞぉー。」
「「「ニャーッ!」」」
クラン〈乙女達の楽園〉の掛け声は、にゃーだ。美しき拳を、空に突き上げろ。
「師匠、頑張るですにゃ。」
「仕掛け沢山仕掛けるんだわん。」
びしっと敬礼してきたピンクと、小さい籠を準備した犬娘。
しかし、ダストはそれを断る。
甘いだけではリーダーは務まらない。時に非情な判断を下す。
「その献身に感謝を。しかしながら、その必要は無い。こいつらの動きは、既に見切った。紅葉蟹の捕獲方法は、立案済だ。」
二人は、捕獲方法を考え始めたが、今まで何を見てきたというのだ。
やれやれだ。
ダストは、鼻息荒くブヒる。
「宣伝」
原作が完結し、リメイク版を作成中のようです。
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虹の橋がかかるまで―女神となった人外青年の勘違い冒険譚―
作者:一二三 四五八
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