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74 メルカーナの村


「ここはメルカーナの村だよ。」


 そんな村人(仮)を、猫娘はジト目で見てくる。


「オーナー、何言ってるんですにゃ?」


 言ってくれる人がいないから仕方なしにね?さて、本物の村人に聞き込みをしようか。

 第1村人発見、クワを持ったまさしく村人という服装、完璧だ。


「あのー、すみません。宿屋は何処ですか?」


「旅人かのう。宿屋なんてこんな小さな村には無えだよ。」


「え?」


 無いだと!?

 RPGの常識を軽々と覆してきた。


 では、テントを持っていない美少女クランの今夜は野宿なのか、異世界に来てニートを脱却したかと思ったら、ホームレスになるとは人生分からないものだ。


 そんな役立たずのダストを救うのは年の功、ロリなリリイ。


「村長の家に案内して欲しいのじゃが。」


「お安い御用だべ。」


 本物の村人に案内され、他の民家より少し立派な家へと案内された。


「ご苦労なのじゃ。」


「お嬢ちゃん、こげな事でお金なんかいらねぇだよ。村長ぉ旅人が来とるだー。」


 リリイの渡そうとしたお金を断り、声を張り上げる善良な村人。

 この村には呼び鈴という物はないらしい。


「おーぅ。良くいらっしゃたっな。入ってくれ、話は中で聞こう。これはまた別嬪さん揃いな事で。」


 出てきた恰幅のいい男性により、粗末な応接室へと案内される。


「妾達は、赤の森を調査しに、この村へと立ち寄らせて貰ったのじゃ。」


「おぉっ、都会の子供はしっかりして偉いねぇ。儂の孫にも見倣わせたいわ。廃屋が1軒あるから好きに使ってくれていいぞ。」


 リリイの幼い外見とは思えないしっかりとした対応に、村長は目をパチパチさせる。

 安心しろ、そいつはお前より年上だから。


「感謝する。取り敢えず、7日。滞在する予定じゃ。前金でも全額払えるから、食事とメイドと風呂等の可能な限りのもてなしをお願いするのじゃ。」


「風呂は付いてるし、食事も問題無いが、メイドなんてこの村には。手の空いた婆さんでも良いのか?」


「構わんのじゃ、何人でも良いから来た分だけ払うので大勢用意するのじゃ。じゃが、メンバーを見れば分かると思うが夜の接待は間に合っておるでの。」


 リリイが好き放題、話を進めてビビる。

 一体幾ら使う気なのかと、小市民の俺は気になって仕方がない。

 金銭感覚がぶっ壊れているようなので、これは後で注意しないといけないか。


「高くなるが、構わないんだな?」


「妾はリリイ・アーハイム。二言は無い。」


 ほーら、村長だって心配してるのに。

 足りなかったら、リリイにも出して貰おうか。


「大銀貨1枚だ。」


 大銀貨1枚、つまり10万円相当か。

 中々にボッタクリだが、専属メイド付ならおかしくはない値段であり、この程度なら払えなくも無いとホッとする。

 大銀貨1枚✕7人✕7日=大銀貨49枚。


「分かった、払おうか。」


 ダストは、小金貨4枚と大銀貨9枚を取り出した。


 それを見て、村長とロリが固まる。

 ロリがパクパクと口を動かし、


 ん?


「お主、金銭感覚がぶっ壊れるておるのじゃ!どういう勘違いをしたのか知らんが、全部で大銀貨1枚じゃ。」


 村長もこくこくと頷く。


「え?」


「1枚を残して、引っ込めるのじゃ。」


「分かった、仕方ない。」


 小金貨1枚(大銀貨10枚)を残して、残りを仕舞う。

 貧乏な村の、恰幅のいい見た目に反して小心者の村長が貰っていいのか悩みだした。


「はぁ…世間知らずで、すまぬのう。これは下げれぬから、せめて豪勢に頼むのじゃ。」


 村長は、震えながらキラリと光る小金貨を掴む。


「メルカーナの村へようこそ!」


 あっ、村長が壊れた。


 そしてダストは秘かに熱望していた『村の名前の紹介』を受け、感激する。



 廃屋に案内されると、大勢の村の女性が、掃除をしたり料理を作ったりと、てんやわんやしていた。

 村長、頑張ったなぁ。


「あんたら、赤の森の特産品が、食べたいんだってね。クリアフィッシュ、メルカーナの卵、紅葉蟹。今日は美味しいお魚を出すから期待していてね。」


「湖があるのか?」

「にゃんと、お魚ですにゃ!」


「私らは、買うだけだから、そこまでは。」

「白の湖があるらしいよ。」


「白湖か。どうやって捕るか知らないか?」


「うーん、この村は基本、農民だから、捕り方を知ってる人はいないんじゃ無いかな。」

「魚を卸してる、あの偏屈な森守なら分かるんじゃない?」



「「後は、ごゆっくりー。」」


 綺麗になった部屋と、

 ででーんと出された豪華な料理。


 仕事は済んだとばかり村の女性達は、帰宅していく。



【クリアフィッシュ】

 体長80cmのアロワナに似た魚が、豪快に焼き上げられていた。


 裏側の半身は、カルパッチョにしたり、煮付けてたりと、芸が細かい。


 料理前に見せて貰ったが、銀色の綺麗な魚だ、鱗が透明であり、この名前にも納得である。

 

「ダスト。はい、あーん。」


「もぐもぐ。淡白な白身かとも思ったが、力強くレベルアップするような異世界特有の味。モンスターなのか、こいつは。」


「美味しいですにゃー。」


「これは、なかなか美味いのじゃ。」


「御主人様!メルカーナ村ニンジンも、なかなか好きな味っす。なんといっても、取り立てっすよ。」


「うむ、良かったな。」


 馬娘達は菜食らしいが、それなりに満足してくれるらしい。



 食事を楽しんでると、いきなりドアが開いて使いっぱしりの若者が現れた。

 どうもこの村のセキュリティはゼロのようで慣れそうにもない。


「旦那、伝え忘れた事が・・・」


 ノックもせず現れた村人に、コイシちゃんの膝枕をしながら食べさせて貰うという自堕落なお大臣遊びを見られてしまった。

 おっと、都会の遊びは田舎者には、刺激が強すぎたようで、村人が固まる。


「何だ?」


「何だっけ?えーと、そうだ!村長が、赤の森の行くならこれを持って行けって。」


 ゴトリと置かれた瓶には、透明の液体が入っていた。


「これは?」


「虫除け。赤の森には、チクチクという激ヤバいモンスターがいるんだ。結界石も鎧も効かないから、血の赤とも呼ばれてる。その液体を塗ってれば、来ない。」


「そうか?助かる。材料は?」


「知らない。それと、死食鳥という変な黒くて丸々と太った不味い鳥が、テントとか設営品を壊すから、置きっぱなしは止めた方が良いらしい。」


「虫除け瓶の代金は?」


「いや、要らないよ。もう貰ってるらしいから、伝言は全部伝えたよ。じゃ、お邪魔しました。」


 見てはいけないものを見て、恥ずかしそうな顔をした若者が慌てて出て行く。


 ダストだって、足をバタバタさせたいくらいには恥ずかしい。

 コイシちゃんに頭を撫でられて、取り敢えず忘れる事にしようか。



 若者の言葉に含まれていた危険性を、聡明なリリイはいち早く理解した。


「赤の森に直行しとったら、そのチクチクとらに殺されておったのじゃな。それで案内人か、流石じゃの。」


「オーナーの先見の明が凄いですにゃ。」


「ダストは凄いよ。撫で撫で。」


 異世界は人の命が軽くて恐れるが、運良く回避出来たらしい。

 道案内くらいのつもりだったのだが、この村へ来て良かったと、撫で撫でして貰いながら、脱力した。



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