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6 始まりの村


「そういえば、旅人よ、この辺りは山賊が出るので、気をつけてくれ。ではな。」


 別れ際、イカれた騎士が、何かほざいていたが、無視する。やっと村に到着して馬という狂気の乗り物から開放された。もう乗りたくはない。生きているのが、不思議なぐらいだ。

 厳つい騎士よ、次に会ったら、美少女にしてやるから、覚悟しておくんだな。



 しょぼい村に到着した。悪くは無いが、科学大国の日本と比べると、どうもね。《始まりの村》と心の中で、名付けよう。


 さて、形見のネックレスを引き渡し、入村できたが、現在の所持金は、ゴブリンのクズ魔石1個だけ。これで何とか食べ物を分けて貰いたいところだ。

 ハードモードすぎるだろ。パン2個、いやせめて1個だけでいいから交換して貰えないだろうか。

 広場の真ん中で、作戦を練る。鉛のように足は重いが、なにか行動に出なければ、遠からず飢えて死ぬ。この村では残飯なんか出ないだろう。ホームレスという選択肢すら選べない。



 思案していたら、金髪の爽やかイケメンが、近付いてきた。


「隣の大陸から来た行商人の形見のネックレスを届けてくれたのは、君かい?」


「そうですが、何か?」


 お近づきになりたいのは、美少女なので、イケメンは死ね。薬指に指輪ね、若そうだが結婚してるのか、羨ま死ね。

 しかし、情報屋が来たと思えば、有り難い。せいぜい利用してやろう。


「しかも埋葬してくれたんだろ、ありがとう。運送ギルドから失踪情報だけ届いて困ってたところだったんだ。君のお陰で、探す手間も、埋める手間も省けた。」


「当たり前の事をしただけだ。」


 照れ隠しに、そう答えながらも、お礼を言われた事が、素直に嬉しい。

 人から感謝されると、こんなにも、いい気分になるんだな。久しく忘れていた感覚。


「僕は、フランツ。この村の自警団をしている。良かったら、今日の酒を奢らせてくれ。この村の飯は美味いぞ。」


「そ、そうか。ありがとう。旅人のダストだ。遠慮なく頂こう。」


 なんだとっ!ありがとう。フランツありがとう。イケメンの癖にイイヤツだな。これで、飢えなくてすんだ。ピンチを脱した。

 食糧問題の解決策は、正直に白状すると絶望的だった。まさに、君は救世主だ。


 和解しよう。イケメンだから死ねとか思って悪かった。君は良いイケメンだ。


 俺たちは、固い握手を交わした。






 ピカッ!


 ダストの意に反して右手が光る。



 異能発動ーーーー


 『絶対美少女化(ハーレム)!!』


進化前:イケメン

成功

名前:フランツ→フラン

種族:人族(美少女)

特記:既婚者

特徴:金髪碧眼のスラリとしたスタイル

性格:爽やか

異能:剣技[N]→化粧[N]

装備:自警団の服[R]、普通の剣[R]→シックなドレス[SR]、小さなバッグ[R]



「あっ!なんという事を。」


 バカ、バカ、バカ、やってしまった。高速で、豪華な晩飯が遠ざかっていくのを幻視した。飯を奢ってくれる予定の爽やかイケメン自警団は、この世界から消えた。なぜ、迂闊にも握手をしたのだ。


 光る右手とともに、現れたスラリとした大人びた美少女と、ガッツリと握手している。これは、許してくれないだろう。罪悪感が半端ない。


 美少女が異世界に1人増えた。青い瞳、流れる短い金髪。爽やかな笑顔。スラリとした肢体。シックな白いドレス。青い小さなバッグがアクセントとなり、例えるならば、それは爽やかな海辺の青空。


「きゃぁぁぁ!」

「うわ、うわ、フランツが。」


 阿鼻叫喚だ。村人1が現れた。村人2〜6が現れた。村人7〜21が現れた。


▶逃げられない。

▶逃げられない。

▶逃げられない。




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