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59 猫娘ピンク


「それで、いつ出発するんですにゃ?強引に誘うオーナーのせいで、色々とお誘いの予定を断らないと、いけなくなったですにゃ。」


「いや、誘ってないんだが…。」


 VIPルームで、偶然にも小休憩をとっていたらしい猫娘ピンクが、俺達の会話を盗み聞きしていたらしく、割り込んできた。

 この前、置き去りにした事を根に持っているのか、うざ絡みしてくる。


 まさか・・・こいつ。ダスト様親衛隊の座を狙っているのか?少し自分が美人である事に自覚があるだけの存在で。あえて言おう、俺の能力ならば、美少女は作れるのだ。


「にゃふふ。」


 不敵に笑う勘違いした雌猫に、厳しい現実を教えてやる必要があるようだ。そうだよな、ハクレンと、信頼を込めて、俺専用の馬娘にバトンを渡す。


「残念っ、実に、残念っだ。猫娘ピンクよ、君は、可愛い。服装は、甘くお洒落だし、愛嬌があり、抜け目が無い。まさかのピンクの髪なのに、まるで違和感が無い可愛いさだ。しかし、誠に哀しきかな、機動力が足りていない。そうだよな、ハクレン。」


「そんにゃ、照れるですにゃ。」


 バトンを強奪した、照れたピンクの顔も、うざ可愛いな。

 しかし、俺は、美少女ハクレンに抱き着いて一心同体になっている時間が好きなのだ、誰にも邪魔はさせない。ところが肝心のハクレンが、変な事を言い出す。


「・・た、たまには、ゆっくり旅も良いかもっす。例えば、山に山菜を採りに入った時、探し疲れて、ふと、座り込んだ時、実は、ぱらぱらと、山菜に囲まれている事に気付くような、つまり、遅い速度でしか、気付けぬ事もあるっす。」


 んん?どうした事だ。

 君は、疲れないし、ゴールまで休まないウサギさんだったはずだろ?

 なんなら、周回で抜き去り、カメの心を折るまである。まず、すんなりと、一着でゴールし、2周目を目指すため、スタートに戻る。すれ違い際に、鈍ガメ野郎が「忘れものかい?」と聞いてくるのが、実に滑稽だ。リスタートし、すぐに追い上げて、悔しがるカメに、言い放つのだ。「え?ゴールは、してるっす。これは2周目っすけど…」と。



 そんなハクレンが、まさかのバトンミス。


 ギギギと、振り返り、ハクレンを見ると、美味しそうに、酒場で販売していないオレンジ色のオリジナルドリンクを飲んでいた。


「それ美味しそうだな、ハクレン?」


「流石、御主人様っす。いやー、ひと目で見抜くとはご慧眼っす。王都の厳選ニンジンをベースに、各種ニンジンと、林檎、レモン等のフレーバーをミックスした、ピンク特製スペシャルドリンクの良さが。ずずーっ。あぁ、美味いっす。」


 幸せそうな笑顔で、ピンク(・・・)特製スペシャルドリンクを飲むハクレン。


「くそっ!!いつの間にか、ハクレンを買収してやがった。」


「にゃふっ。」


 俺だけのハクレンを奪われた気分だ。しかし、守りたい、この笑顔。

 どうすべきか悩むが、気付けば、ピンクの罠にハマっていたようで、正妻コイシの援護射撃が決め手となった。


「ダスト、連れて行ってあげなよ。」


「良いだろう、ピンクよ。特別に同行を許可する。道中、美味いスペシャルドリンクを作ってやってくれ。」


「了解ですにゃ!」


 猫娘ピンクが、同行メンバーになりました。


 コイシちゃんは、いつだって優しい。恋のライバルを無防備に迎え入れる程に、そんな事を考えていると、目が合った。


「だって、私は磨けば光るけど、種族的に、美しさが劣化しないからね。争奪戦が長引いた方が有利だよ。」


 え?

 堕天なされた?


 いや、幻聴に違いない。ハクレンを玩ばれた事がショックだったんだ。



 そうに違いない。


「よしっ、旅の準備をするため、屋敷へと帰還する。今日の営業は、ここまで。各自、好きな時に、撤退するように。」


「そんな、わしは、まだ満足しておらんのだが。」


 おっと、セルゲイの婆さんが、まだ飲みたいカクテルでもあったのか、慌ててる。ダストは、ニッコリと笑って、ホストとして発言した。


「はい、撤収!」


 絶望した顔のセルゲイ婆さんを置き去りにする冷徹な判断が出来る男ダスト。


 いや、俺が帰るだけで、猫娘達は帰らないと思うけど。婆さん、自覚無いだけで愛されてるんだぜ。それに、猫娘もなんだかんだ仕事を愛してるようだし。


 心配しなくても、老人の夜は早い。セルゲイ婆さんは、その後、1時間もたたぬ間に、娘クロと一緒に、満足した顔を浮かべて眠そうに、隣りの屋敷へとお帰りになったそうだ。



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