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40 南ギルド荒らし


 平和な南ギルドを荒らすべく、《乙女達の楽園》は、進撃を開始した。


「さてと、冒険者ギルドに、出発の届け出をするかな。」


 事前に、顔を出しておくと、情報が貰えたり、買取がスムーズだったり、と、メリットがある。


 ギルドに入ると、やはり、ドヨリっと空気が変わった。それも当然だ。見た事のない絶世の美少女が3人も、来訪したからだ。


 僕の可愛いさに惚れてしまった男の人は、ごめんね。



 そう。そして、被害者は男だけでは無い。一番の被害者は、男達の関心が奪われた女達だろう。この南ギルドには、受付嬢の他に、アイドルグループがいた。


 ダスト君達にアイドルの座を奪われた、その南ギルドの元アイドル《女神の使徒》は、苛立っていた。


 可愛い女性だけで結成されたそのクランは、女の身にありながら、Dランクの実力を誇り、ファンも多い。

 ただ、荒くれ冒険者の中では、可愛いだけであり、絶世の美少女クラン《乙女達の楽園》の3人を前にすると、路傍の石ころだ。


 懲りずに自分達を口説きにきた男冒険者の目が、そちらに釘付けになっているのが、分かる。


 くっそー。私達の居場所を奪いやがって、どうやって貶めようかと、他の男冒険者と同じく、受付嬢との会話に、聞き耳を立てる《女神の使徒》のメンバー。


「え?Cランク!?クラン《乙女達の楽園》のダスト様は、ベテラン冒険者様だったのですね。失礼致しました。」


 は?Cランクだと。私らより、上じゃねーか。思わず悔しさのあまり、《女神の使徒》は、ダスト君に、絡んで、舌戦を仕掛けた。



「あら、見ない顔ね。同じ女のグループとして、なにかアドバイスをしてあげるわ。行き先は、もう決まって?」


「いや、まだ決まって無いかな。」


 ハスキーボイスのダスト君が答えた。嫌味をたっぷり載せてアドバイスをしてあげる。


「なら、初心者平原が良いかしら。子供にも倒せるザコラビットで溢れているから。それに、近くにある、迷いの森は、恵みの宝庫よ。」


「そっか、ありがとう。そこに行ってみるよ。まさに、そういう場所を探していたんだ。」


 糞みたいな提案に、了承したダスト君に、さらに苛つく。

 ザコラビットは、子供でも倒せるほど弱く、ドロップアイテムは、大して、お金にならないし、迷いの森は入ったら死ぬからだ。


 そわそわと、男共が、《女神の使徒》から興味を失い、ダスト君達に、話し掛けるチャンスを伺っているのが分かる。

 それを少し迷惑そうな顔をしているダスト君達に、彼女達の苛つきは最高潮を迎える。何故なら、それは、つい先程までの立ち位置だったからだ。

 奪われたアイドルの座。だから、つい自分達に向けられていた心ない言葉を、彼女はぶつけた。


「綺麗な顔をしているようだけど、冒険するより、誰かの子供でも生んで引退したら?」


「僕は、子供は産めない。男だからね。」


 予想外の返答に、《女神の使徒》は、言葉を失う。禁断の質問をしてしまった罪悪感と、女として負けた敗北感で、彼女達は、もう戦えない。


 ザワリっと、周りを囲んでいた荒くれ男達の垣根にも、またヒビが入る。

 憂いを帯びたダスト君の瞳は、妖しく惹き込まれる何かと、近付きがたい混沌を内包していた。


 このままダスト君達は、出発できるかと思われたが、心の折れない青年が立ちはだかった。


「大丈夫、これだけ可愛いければ、性別なんて超えられるさ。」


 ダスト君は、その言葉にキュンと来た。そして、邪魔だから、退いて欲しいなという相反する気持ちが混在する。これが、悩める乙女心なのか。


 自分の気持ちに素直になろう。


 想いのまま、伝えよう。


 顔を赤らめて、もじもじしながら、ダスト君は恥ずかしそうに青年の想いに応えた。



「嬉しい。僕、勃っちゃった。」


 その魔法の言葉により、モーゼの魔法で、海が2つに割れ、道が拓いたかのように、南ギルドの冒険者達が、2つに割れた。


 進みだせ、道は拓いた。


 男の中の男の娘、ダスト君。今、出撃せよ、無害な平和を愛するザコラビットを殲滅せんがために、初心者平原へ!



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