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2 ヒロイン登場


「しかし、どうするかなぁ。まずは街に行きたい、そして靴が欲しいな。」


 とても柔らかい苔の上とはいえ、裸足だ。不安は、尽きないが、街を探しながらあてもなく、魔境を歩く。

 木々の隙間からは、街は見えない。愚かな男は、足元も確認せず、街を探しながら、さ迷う。


「あー武器もねぇな。でもあっても使えないし、モンスターに遭遇したら、走って逃げるとして、無理めな敵なら木に登ってやり過ごす。で、街に着いたら、金はどうするか。そうだな、そこは問題ない。異能で美少女に養って貰う。完璧な計画だ。」


 そんな考え事をしながら、少し歩いた時、油断していたダストは、外の世界の洗礼を受けた。


 地球と比べ、凄くイージーな地形だったにも関わらず、悲しい事にダストの地球での前の職業の後遺症のため、その地形にすら耐えられなかった。

 自宅警備という狭い場所から24時間出られないという過酷極まる待機業務が、彼から深刻な程、筋力を奪っていたのだ。もともと、良くない運動神経も合わさり、なにも無い場所でバランスを崩す。


「うわぁぁ。倒れそう。あっ!目の前に、い、石があるぅ。」


 柔らかな地面に足をとられ、ゆっくりとバランスを崩した先に、さらに不運な事に、尖った石を発見。手をバタつかせるが、倒れるのは止まらない。このままでは顔に直撃。ぐんぐんと迫ってきた石に、慌てて、右手を伸ばし、ガード体勢をとるダスト。

 彼の本能が惰眠から目覚め、顔面へのダメージを減らすべく手を犠牲にする事を、選択した。


 したが……



 その時、異能が、発動した。


 !?


 まさに、尖った石で手を怪我すると思われた瞬間、彼だけの異能が発動した。



 異能発動ーーーー


 『絶対美少女化(ハーレム)!!』



 ダストの右手が光り輝く。そして、尖った石で怪我をするかと思われた瞬間、奇跡が起きた。例えるならば、それは神の奇跡、混沌神の寵愛。


 重力に負けて倒れ込んだ彼の右手にきた衝撃は、尖った石に切り裂かれ熱を帯びたジンジンとする耐え難い痛みでは無く、なぜか、天上の「むにゅっ」とした幸せの衝撃だった。

 体験した事がない、甘い幸せの衝撃が、脳髄を奔る。



「は?なにが起きた?」


 事情を1ミリも理解出来ないダストは、手を握りしめ、指先で、もう一度その感触を確かめる。「むにゅっ」と、先程感じた天上の感触がある。つまり、先程の幸せな衝撃は、夢や幻では無く、現実である事を再確認した。だから何?意味分かんねーよ!そして、気持ちいい。


「うっはーっ、なんだ?このハリがあり充実感の溢れる弾力は!」


 さらに、分からない事は続く。目と鼻の先に、見知らぬ美少女が、いつの間にか、いた事に気付く。灰色の瞳に、灰色の髪。少し尖った表情。薄い唇。デニムのツナギから、見える細い手足。なんとはなしに気まずくなって挨拶をする。


「あっ、ども。」


 誰?いつの間に?という疑問もあるが、その瞳に、吸い込まれるように、目と目が合った。非難の色合いが込められた彼女の灰色の瞳が、すっと下の方を見る。その冷ややかな視線の先を追うと、彼女の形の良い胸に、伸びている痴漢の手を発見した。


 誰だ!この羨ましい手は!いや、違った。許せぬ、無垢な少女を弄ぶ痴漢め。成敗してくれる。義憤に駆られ手の付け根を視線で追うと、自分の身体に繋がっている。


 ふむ。


 これは、もしや?再確認の必要があるな。「むにゅっ。」おぉう。ハリのあるバストにしっかりと食い込む指が見える。眼福である。少女特有の膨らみかけた固めの弾力を味わう。

 俺の目は誤魔化せない。名探偵ダストは、この事件の犯人が分かった。「間違いない!犯人は、ダストだ!」


 バシン!


 正解者には、美少女のビンタを。

 穢なき美少女の胸を卑劣なる手で都合3回にも渡り弄んだ性犯罪ダストは、被害者の少女から、目から火花が出る程の強いビンタの刑に処された。




「す、すまない。悪気は無かった。」


「分かった。許してあげる。」


 ダストが、謝ると、驚く事に、あっさりと無表情の少女から許しが出た。


 え?許して貰えるの?


 何もしてないのに、挙動不審な態度から犯人にされた過去すらあるダストは、あっさりと許された事に驚愕した。


 もしや、もしや、これが…ハーレムのチカラか。俺の時代が来たかもしれん。



「えっと、助けてくれてありがとう。」


「いいよ。」


 少し微笑む美少女が、可愛い。灰色の髪が好きだ。恋に落ちたかも。心臓が高鳴る。異世界に来て良かったぁ。もっと、彼女の事が知りたい。


「あ、俺はダスト。君は?」


小石(コイシ)。」


 可愛い。思考のメモリは、彼女の映像記録に全て使っている。処理落ちしそうだ。なんて返せばいいか分からんくて、会話が止まる。元プロニートには美少女との会話はハードル高すぎ。心臓が痛い。しかし、いい名前だなぁ。あっ、それを言えば良かった。でもタイミングがもう遅い。

 えぇと、会話、会話。そういえば、よく分からないけど、転けそうな所を助けてくれたんだよね。


「あ、たす、助けてくれて、ありがとう。」


「こちらこそ、ありがとう?」


 というか、さっきも同じ事を言った事を思い出す。そして、なぜかお礼言われちゃったよ。

 小石ちゃんの優しい対応に、少し落ち着きを取り戻すと、なにか視界に違和感がある事に気付く。会話の切っ掛け、そういえば、先程まであった尖った石が無くなっている。彼女が、何処かに片付けてくれたのか?


「そういえば、ここにあった尖った石、知らない?」


「え…。私が、その…尖った石だけど。ダストが擬人化してくれたんだよ。石族に進化して情報量が増えて楽しい。だから、ありがとう。」



「は?」


 彼の低いマシンスペックでは理解出来ない。驚愕の表情でダストは固まった。


 鑑定能力が無く、理解能力も低いダストに任せると、日が暮れてしまうので、さっくり解説。



異能:絶対美少女化(ハーレム)[神R]

効果:この世の全てを美少女に!右手で直に触った魂のあるモノを、美少女化する。物体すら擬人化する。唯一無二のダストだけの神異能


進化前:尖った石

大成功★

名前:小石(コイシ)

種族:石族(美少女)

特徴:灰色の瞳髪。少し尖った表情。

異能:不食[SR]、小石に変身[R]

装備:ジーンズのツナギ[R]

欠点:移動不可



「はぁぁぁぁ!?」


「…煩いよ、ダスト。」



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