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11 ロリババア


 ダストは老婆リリィと握手をする。


 彼は、過酷なプロニート勤務の職業病で、捻くれてしまったが、幼い頃は、普通の優しい少年だった。

 だから、気付いてるんだぜババア、足が悪いんだろ。耐え難いはずの痛みを隠している仕草が、俺の死んだ婆ちゃんと一緒だから、分かる。老化という呪いに苦しんでるのを見ていると俺まで辛いんだ。


 さっそく、昨夜の恩を返す時が来た。倍返しだ。今度は、俺が救う番だ。こんな豚野郎に飛べるといってくれたな。そんなババアは、地平の彼方まで走れるようにしてやる。

 信じろ!この異世界でただ一人、奇跡を起こせる俺ならば可能だ。いや、奇跡は起こす。

 ダストは、尊敬と感謝を、ありったけ右手に込めて、リリィの手を握った。



 右手が光る。


 現実を変えろ、常識がなんだ、何に縛られている。老化という呪いが、痛む足腰が、まるでその背中に大きな岩を背負っているかのように禄に動けてないくせに、訳知り顔で諦めているのを見るのは、もうっ十分だ。



 砕けよ。

 全部、一切合切、全て砕けよ。


 汝は、美少女。


 今、この瞬間、俺だけの異能であるこの右手の奇跡をもって、無限なる活力を与える。その身に背負う大きな岩のような呪いは既に砕いた。美少女として生まれ変わるが良い。老婆リリィ・アァーハイムゥ!



 異能発動ーーーー


 『絶対美少女化(ハーレム)!!』



進化前:老婆

大成功★

名前:リリィ・アーハイム

種族:人族(美少女)

特記:未亡人

属性:ロリババア

装備:シックなドレス[SR]→小春日和のワンピース[SR]


 異世界に美少女が生まれた。


 背の低い幼女よりのロリ少女。ぷるぷると瑞々しい肌、華奢だが、その小さな身体からは、内包するエネルギーが、陽向のように、発散されている。


 瑞々しい美少女。



 ダストの眼前で、完全に枯れたババアが、脱皮し、美少女として生まれ変わった。ロリババアの誕生である。


 鰹の古節のような化石女が、カンナで磨かれ、薄ピンクの空に透けるような削りたての花節のように鮮やかに変身した。その身体の線は、薄く細い。


 晩秋を思わせる茶色の渋い色味の高級で落ち着いた老婆の服が、春のようなひらひらとした桜色の可愛いらしいワンピースへと趣きを変えた。


 古節を削るかの如く、華やかな香りが部屋を満たす。御老人の加齢臭を誤魔化す香木の匂いが消え去り、少女の華やかな香りに変質し、部屋の空気が、春色に若く色付く。


「ん?そんな顔で見つめてどうしたのじゃ。あれ、声がおかしいのう。」


 妖精みたいなロリっ娘が、不思議そうに身をよじる。中身はババアだから、適応が遅いのかも。可愛いんだよ、貴女に見惚れてるんだ、さっさと気付けバカ。


「おぉっ、身体が軽いのじゃ、足が、足が全然、痛くない。腰が軽い。なんと神経痛が全然ない。うわぁ、手もすべすべなのじゃ。ん?服も変わっておるのう。うひゃあ。」


 興奮のあまり、ぴょんぴょんと飛び跳ねるロリババア。


「どうじゃ、妾は若いか、惚れたか?惚れたかのう?」


 部屋をぐるぐると走り回ったかと思うと、愛らしい目付きで、顔を覗き込んできた。完全に、肉体に精神年齢が引っ張られ、幼児退行しているらしい。


「うるさいぞ、ババア」


 照れ隠しに暴言を吐いて、頭を、わしわしと少し乱暴に撫でてやろうと幼女に手を伸ばしたら、さっと避けられた。


「手を出したくなる程に欲情されるとは妾も罪な女じゃ。しかし、残念ながら、安い女では無い。さて、いちおう確認させて貰うかの、分身想像(ミラージュ)


 魔法を唱えると、なんと、幼女が2人になった。全く同じ動きをする三次元の分身が現出した。動くと、揺れて姿が不安定になるが、止まっていれば違いが分からぬほど、あまりにリアルであり驚く。

 例えるならば、文明レベルの低い、未開のジャングルの住人が、自動車を見て、驚くような感覚。


「はぅ。この姿は、ええのう。気に入ったのじゃ。」


 自分の姿を見て、御満悦のロリババアは、色々なポーズをとって自分の姿を確認する。双子の幼女が、真似っ子をしているかのような、そんな光景は見ていて、ほっこりさせられる。



「ダストよ、此度は大儀であった。よって、そなたに褒美を取らせる。」


 何か思いついたのか、ニヤリと悪い顔で笑うリリィは、悪戯っ娘のようで、とても可愛い。

 それに対し、好きにしてくれと投げやりに、応えたダストは、次の瞬間、



「何をくれるんだ。むぐっ。」



 ーーー甘い。


 それは、爽やかな甘さ。

 脳髄が蕩ける。



 ダストの脳髄に衝撃が奔った。言うなれば、思考が白くなる見体験のゾーンに突入していたというのが適切だろうか。理解は追いつかないが、爆発する多幸感。


 熱い。熱い。熱い。身体が、叫びたがってるんだ。



『唇を奪われた。』


 これが、ファーストキスの衝撃なのか。

 キス、言葉にすれば、たったの2文字であり、ずっと無関係の事で、リア充がサルのように盛ってやがるのを冷めた目で見ていたそんな行為。


 とてとて、近付いてきたロリが、優しく頭を両手でホールドしたかと思うと、実に自然な感じで、いきなり唇を奪ってきた。


 さらに、攻撃はとまらず、侵食するピンクの小さな舌は、ダストの口内で、陵辱の限りを尽くした。

 すでに城は陥落しており、ダストに出来るのは怒涛の快感を享受し、びくん、びくんと与えられるまま反応する事だけ。


 嗚呼、ベロチューである。


 無垢なロリの中身は、大人の女であり、熟れた情感の残滓がある数々の浮名を流した歴戦の女帝リリィ・アーハイムなのだ。


「ふむ。ダストよ、美味であった。」


「あひゅう。」


 ぺろりと、満足げに舌なめずりするロリの前で、天国に旅立ったのは、経験値0の30年間という長い間ずっと始まりの村から出た事の無いレベル1の魔法使い。


 大量の経験値を獲得し、幸せのままレベルアップ酔いをする。


「し、幸せだぁぁぁあ。」


 ダストは、咆哮した。




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