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103 メルル酒


「くぅー、それにしても、このメルル酒は美味しいよね。」


「それには同感じゃ。生き返るような味なのじゃ。」

「ですにゃ。この一杯の中に大自然の力強さを感じるですにゃ。」


 森の息吹を感じる。奥行きのある清涼感と、アルコール特有の臓腑から、せり上がるような熱気。相反する2つが混ざりあう。良い物を飲んでるぅぅという高いお酒特有の高揚感があった。


 ふぅーーっ。熱い呼気を吐く。


 美味しいっ。


「あらあら、随分と村の名物を気に入ってくれたようで嬉しいよ。まっ、アタシはお酒は飲まないんだけどね。それはメルルの樹液から作ってるのさ。生きてるお酒とか昔から呼ばれてる。ここでしか飲めない地酒さね。」


 上機嫌になったおばさんが、料理を運んでくれた。その中に、メルカーナの卵があった。黒いぶにぶにとした食感の味が無いなにかだ。


「配膳ご苦労さまです。良ければ、これを。」

「まあ!あの果物かい。妹さんありがとう。」


 頑張ってくれる人には特別報酬を。


 ふと、酔った頭が、そこで常識とかを置き去りにして正解を導き出す。


「あっ!」

「どうしたのじゃ?」


 ダスト君は目頭を揉む。

 あはっ、そういう事かあ。


「いや、分かってしまった。このメルカーナの卵は、タピオカの代わりになる。」

「タピオカ?」


 2人はキョトンとした顔になる。


「美味しいジュースだよ。」

「師匠、詳しく教えてくださいですにゃ。」


 食いつくピンクをいなして、ダスト君は不適に笑う。

 笑わずにはいられなかった。もう一つ重要な事に気付いたからだ。


「いいよ、ピンク。でもそれは後でね。それよりもドワーフ見つけたかも。」


「なんじゃと!」

「何処ですにゃ?」


 ダスト君は、へらりと笑い。手を広げ、手のひらに、グラスから酒を零した。

 完全に酔っ払いの所業。何がしたいの?である。


 しかし、これこそが正解。


 右手がパアアと光り、メルル酒が燐光を纏い蒸発した。


ー異能発動。



「光ったのじゃ!!」

「でも、消えたですにゃ?何も変化は無いようですにゃ。」


「おそらく量が足りて無いんだと見るね。この酒には魂があった。ならば液体でも異能は発動する。ドワーフは酒の精霊だった。」


 半信半疑のようだが、メンバーは直ぐに行動に出る。交渉担当のリリイが動き出す。

 ヤケ酒で潰れている村長を見つけて、ロリが踏みつけて起こし、メルル酒を樽で購入した。

 昼間は失敗したが、恐れずダスト君は挑戦する。


 男の娘は、小さな背中で語る。


 酒樽を鏡開きで開けて、構える。

 現れた水面には、黒髪の絶世の美少女が映り込んだ。


 行くぜ。



「力を貸してくれ

 魔法と科学を融合させし者よ


 酒は浴びる程用意しよう

 だから、

 この世界を、

 僕とアートに変えるんだ。


 来いよ

 ドワーフゥゥゥ!」


 水面を叩く!

 波紋が水しぶきが、光りの粒子となり飛び散る。奇跡は起こる。


 ピッカァァ




 異能発動ーーーー


 『絶対美少女化(ハーレム)!!』



進化前:メルル酒

成功

名前:メル

種族:ドワーフ(美少女)

外観:背の低い亜人

特能:超技術。低身長。筋力増加。スタミナ減少、速度減少。

装備:裸→つなぎ[R]、木槌[R]、技巧の木工セット[SR]



 異世界に美少女が生まれた。


 童顔の乙女。背が低くく、胸の大きい年齢詐欺系の美少女。


 技術とともにある者。

 超技術は科学すら超越する。


 酒樽から産まれた美少女。

 その身体は、酒で出来ている。



「いいよ。力を貸してあげる。」


 ドワーフのメルは、その力を証明するかのように、酒樽を一瞬で分解して酒樽の中から現れて、ニッと笑った。


「お酒は、そこにあるよ。」


 と、ダスト君がセルフコーナを指差すと、握手を求めて来た。ぐっと固い握手をして、契約成立である。


 コップなんていらないとばかりに酒瓶のままグイグイやりだしたドワーフを残し、酔って眠くなったダスト君は拠点に戻った。


 今夜の乙女達の楽園が贈る臨時酒場は、営業終了です。



 新たな仲間を迎えて、最後の大仕事の絵図が見えてきた。

 エルフの村を建設。

 次回、一大プロジェクトがメルカーナの村で始動する。

 


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