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10 未亡人


 ダストは、目覚める。


 良く眠れた。心が軽い。湧き上がる充実感。それは、変な感覚だった。


 食事を部屋に運んできたボーイに、お館様との会合まで、しばし待機せよと伝えられる。メイドでは無くてボーイなのは、ババアの趣味に違いない。


「美味いな。異世界なのに、ふわふわしたパンだ。小石ちゃんは、食べないの?」


「いらないかな。石族だよ、私。」


 不食スキルを持ってるらしい小石ちゃんは、栄養が不要らしい。食事の幸せを知らないのは、可哀想にも思うが、価値観の違いだろう。まぁ、極貧生活に陥る可能性がある俺としては、最高のパートナーだ。



 案内された会合の場所である小部屋には、向かい合う長椅子と、中央に机がある。長椅子に小石ちゃんと仲良く座ってババアを待つ。


 遅れて入ってきた背の低いババアは、小石ちゃんを見つけて、ぎょっとした。


「待たせな、ダストよ。人払いは済んでおる。ん、何者じゃ。」


「この子は、小石ちゃ」


「黙れっ、まだ魔道具を起動しておらん。よし、《盗聴防止(ジャミング)》を起動したので話して良いぞ。その娘、どうやって連れて来たのじゃ。ここの警備はそこまで緩くはないぞ。」


 屋敷の主である老婆リリィ・アーハイムが、机の中央に置かれた魔道具をしわくちゃな手で触ると、緑の光が部屋を満たした。


「小石ちゃんは、俺の異能で擬人化した石族で、凄い事に、小石の欠片に変身出来る。」


 説明を聞いたババアが思っていたより強力な異能である事に気付き頭を抱えて、能力を褒められた小石ちゃんが誇らしげに健康的な胸をはる。可愛いよ。


「ダストよ、この部屋での問答は妾だけの腹に秘めるとアーハイム家の名の元に約束しよう。悪くはせぬ。じゃから、これから妾の問いに対して、知っている事を正確に全て話すのじゃ。良いな?」


「あぁ、分かった。質問してくれ。」


 昨夜の一件で、ババアの評価はカンストしている。利用されてどんな目にあっても構わないと思っているが、相変わらずババアは凄い。『全て』というワードが、重要な事を黙りミスリードをさせる手法を潰しいてる。


「何が分かったのじゃ?」


「何が言いたい?ババアの問いに、知っている事を正確に全て話す。だろ?」


 ニンマリ笑うババアの意図が分からない。

ん?あぁ。全てとか言う単語は、聞こえてませんでした。という逃げを塞いだのか。慎重すぎる。


「良い子じゃ、それでええ。それでは、お主の異能について教えるのじゃ。」


 そうか、昨夜。その質問は無かったのか、何でもベラベラ話してたと思うのだが。目先の利益より、長期の信頼を取ってくれたようだ。


「俺の異能は、絶対美少女化(ハーレム)[神R]

だ。まだ3回しか使っていないため、詳しくは分かっていないが、右手で直に触った装備品以外のモノを、例外なく美少女化するようだ。」


「『美少女化』とはなんじゃ?」


「この村で、俺の犠牲者フランツ、いや今はフランか。性別も外観年齢も変わっていただろ。女体化では無く美少女化だ。ただ、ゴブリンは、中途半端な結果だったので、この異能は、不安定なのかもしれない。」


 それを聞いて、ババアが悪い顔をしてニヤつく。若返りたいんだろうな。流石に、これくらいはダストにも分かる。


「ふむ。先程の『直に』とは?」


「ガントレット越しに触った時は発動しなかった。」


「手袋は、どうじゃ?」


「は?あ、いや、試した事は無いな。」


 一時退室したババアが、高級感溢れる木箱を持ち帰ってきた。箱をあけると、男物の黒革のお洒落な手袋が鎮座しており、その手袋を渡してきた。


「さて、試してみるかの?それを嵌めて妾と握手をするのじゃ。なに、失敗しても構わない。」


 言われるままに、格好いい中ニ心をくすぐる手袋をつけると、吸い付くようなフィット感で、とてもテンションが上がった。


 そのままダストは、ババアと握手をするが、予想どおり、何も起こらない。

 お婆ちゃんの知恵袋により、随分とお手軽な異能暴走の解決方法を授けられた。


「有効なようじゃな。妾のダーリンの形見の手袋をくれてやる。おおっと、妾は、未亡人じゃぞ。」


装備:黒竜の手袋[SR]を獲得。

情報:異能[神R]の封印方法を獲得。

情報:老婆リリィは未亡人(攻略可能)


「くそっ、不要な情報を獲得した。俺の明晰な頭脳に、闇情報が。」


「失礼な小僧じゃの。まぁ、ええ。分かっておるじゃろ、脱ぎな、ダスト。では、妾を美少女にしてもらおうかの。」


 ババアに、(手袋を)脱ぐように命令されて、素肌を晒す。ババアが悪い笑顔で、脱ぐ様子を、舐めるように視姦する。


 ダストの脂ぎったぶにぶにした素肌と、ババアのしわしわとした素肌が、お互いを求めて、近付く。



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