口づけ一つで… ハイル×リーファ
いつの間にやら桃の節句は過ぎてしまっていました…。全然関係のない内容ではありますが、なんとなくその日に上げたかったなというだけです。
満月が沈んだある朝のこと。いつものように手枷足枷を外してくれようとしているリーファの顔を、ふと下から覗きこむように見つめて。それに気づいたリーファと目が合った瞬間、何も考えずにその柔らかい唇に己のそれを重ねる。まだ先ほどまでの影響が残っていて少し本能が抑えきれなかったのかと頭の片隅で思うのと同時に、普段ならば疲れ切って立ち上がることさえできない体に魔力が満ちていくのを感じた。
「……いい、けれど…いきなりされると驚くわ」
そっと離したその先で、今の今まで重ねていたふっくらとした桃色の唇からそんな言葉がこぼれ落ちる。ほんの少し染まった頬に、一瞬もっと深く味わってしまえと誘惑されかけたけれど。今はそれどころではないと、今度こそしっかり理性を保つ。もちろん、あとでしっかり美味しくいただくつもりではいるけれど。
「リーファ…すみません。ずっと、気づかずにいたのですが……」
「どうしたの?」
「……こんな場所で休まなくても、リーファとの口づけ一つで動けるまで魔力が回復しました…」
「…………え……?」
そこからは珍しくリーファが混乱している姿が見られた。「え、ちょ、ちょっと待って…え?待って、え?どういうこと??」と、目を白黒させている姿が可愛いけれど面白くて。耐えきれずにくすくすと笑ってしまったら、頬を膨らませて抗議されてしまったけれど。それすら可愛くて、思わず「食べてしまいますよ」と耳元で囁いたら、顔を真っ赤にしながら涙目で睨んできた。上目遣いのそれは、怖くもなんともなかったけれど。惜しむらくは、まだ手枷を外してもらっていなかったこと。先に外してもらってから言えばよかったと後悔した。そうすれば可愛いリーファを思う存分抱きしめられたというのに。
次はそんな失敗はしないと心に決めつつ、全ての枷を外してくれたリーファを抱き上げて地下牢から出る。どうせなら今日はこのまま入浴と着替えだけを済ませて、執務室でリーファを抱きかかえながら転寝でもしようかと考えながら、ゆっくり部屋へと向かうことにした。
正確に言えば、執務室で"美味しくいただいて"から二人でうたた寝です。そして先に目を覚ますのは当然ハイルの方です。