第一話 勇者の物語
物語とは、口碑によって伝わったものが殆どであります。歴史に沿ったものもあれば、誰かの創作かもしれません。
伝わってくる間にもっと面白くしようと、手を加えられた形跡だってあります。
さて、ここで紹介するのはよくある話。
剣と魔法、勇者の物語についてです。
ただ、勇者の物語ですが勇者にはクローズアップはしません。なぜなら、それは勇者の物語で完結しているからであります。
今回お話しするのは、勇者の物語に出てくる魔王のことでございます。
早速お話を始めたいところですが、まずは勇者の物語がどんなものかを知ってもらいましょう。
ある小さな村に子供が生まれました。
闇に包まれた時代。その村は貧しく、日々の生活を送るのがやっとという有様です。加えて、父親のいない子供と母親は疎まれ、石を投げつけられていました。
そんな母を救うために、子供は王都に行くことにしました。すると、その途中で見たのは闇に苦しめられる人々。
子供はそんな人々を救いたいと思いました。そして、神はその思いを受け入れ力を与えたのです。同行していた剣士は言いました。
「君が勇者になるのは、運命なのかもしれないな」
勇者は闇を打倒する旅に出ます。
出会い、別れ、出会い、そしてついに魔王と決着をつけることが出来たのです。
それから世界は平和に満たされましたとさ。
おしまい。
これが、勇者の物語です。平凡で捻りのない、どこにでもあるようなお話。
そのため、この魔王の話も月並みでつまらないものになってしまうかもしれません。
それでもいいのです。魔王がどうして生まれたか、なぜ魔王と勇者は決着をつけねばならなかったのか。それを知っておいてほしいのです。
最も、全てを語れるとは思っておりません。随分と簡略化してしまうかもしれません。
それでも、語るべきことなのです。
では、前置きが長くなりましたが、どうぞご覧ください。