二.
ミックンは町の方に行ってみようと思いました。この地域には毎年、夏祭りのときに屋台を出しに来るだけでどういう町なのかはまったく知らないのです。ずっと眠っていた祠に戻ってみたけれど、神様は住んでないみたいで空っぽでした。期待していたのになんにも救われません。よく考えてみれば、いるなら起こしてくれたはずじゃないですか。
大きい畑が二枚、三枚と見えます。畑には何かが小さい芽を出しています。絹さやは収穫できそうです。ネギも植わっていました。ミックンの家も家庭菜園をずっとやっていました。教養と言うより食べるためです。
ミックンはこの町がとても田舎な事に気付きました。けれどあの祠には神様がいない。不思議です。声がするほうに向かう道々に道祖神が並んでいます。ミックンはなぜだか安心しました。
眠っている間にミックンは、自然にお化けの世界のルールを身につけたみたいです。もしかしてあの祠には神様が通勤しているのかもしれない。でなけりゃ毎日お花やお水をお供えしている人間がかわいそうだ。
駅とか、商店街に行きたかったけれど流されるようにたどり着くのは木の沢山あるところばかりです。こうなってまた、ミックンは気付いたことがあります。もと住んでいたところ、産まれて育った場所をはっきりと思い出せないのです。
ミックンは自分のことをどうしたらいいのか分からないお化けの新一年生みたいだと思いました。けれどこの世のことが何にも分からない赤ちゃんみたいだとも思うのです。
見知らぬお化けが月の上を飛んでいきました。