ゲームのステータスって大抵心理テストで決められるよね
ーーーおきてーーーー
こえがする
ーーーーおきてーーーーー
だれかがよんでる
ーーさぁーー
いったい
だれが
ーーーおきなさい、遅刻するわよーーー
...え?
「えええええええ!?」
絶叫とともに跳ね起きる俺
い、今何時だ?
顔を上げた先に掛け時計がかけられており時刻は
『8:35』
「やばい!?遅刻する!?」
ベットの上から思いっきり立ち上がり降りようとすると
「やっっと、起きたねバカタカ」
声のほうに顔を向けると幼馴染の前島さやか(マエジマサヤカ)が呆れた顔で俺を見ている
「ようさやか」
「『よう』じゃないわよマッタク。いつまで寝てるのよあんた」
「おお、わりーわりー。ちょっとまってな」
そういいながらパジャマを着替えようとすると
「な、何朝から変なもの見せようとしてんのよぉ~~!!」
と言いながら床に置いてある丸クッションを投げつけてくる
「うおお!?ちょ、やめ」
「バカバカバカ!!サイテー!!!」
そう言い放ち一目散に部屋を出ていくさやか
「あいつ、一体なにおこって...?」
ふと俺の下半身を見ると
いわゆる高校生男子特有の生理現象が起こっていたのであった
「もうバカタカ。朝から変なもん見せつけんな」
「悪い悪い。でもな、こいつは健全な男子ならさも当然なことであってだな」
「いいわけケッコーよ。まったく家が近くじゃなきゃこんなやつの面倒なんか見たくないわよ」
「そうゆうなよさやか。ワビとして学食のパフェおごるから許してくれよ」
(ピクン)さやかのポニーテールに反応アリ
「そ、そうゆうことなら、許してあげる」
「ありがとうさやか」(こいつが怒った時には甘いものに限る)
俺の名前は前村一鷹(マエムライチタカ)18才高校三年生だ
彼女はいないがこうしておせっかいを焼いてくる幼馴染がいる
これで両親が旅行とかしていたらちょっとしたゲームの主人公だ
部活は剣道部所属子供の頃からずっとやっている
全国大会にも出場したこともある(一回戦で敗退したけど)
勉強は、まぁ、それなり?赤点取らないくらいには頑張ってる
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン...
「やべっ、予鈴!?」
「遅刻になっちゃう!急ぐよタカ!」
「がってん!」
チャイムの音が遅刻寸前だったことを思い出させ俺たちは猛ダッシュをかけるのであった
「ぜー...ぜー...ま、まに、あった...ぜい...」
「よータカ。お疲れ」
俺の席は窓側の一番後ろの席にある
その前の席に座ってるはずのクラスメイト高柳順平(たかやぎじゅんぺい)がなぜか俺の席に座ってる
「オ...おいジュンぺー、席、あ、あけろ...」
「へいへい」
と言いながら席を空けて
「どうぞ殿。この順平めが温めておきました」
とか言いながらイスをひいて座りやすくする
「ぶふっ。ちょ、わらわ、せんな、いてぇ」
「ハハッ。相変わらず笑いの沸点ひっくいなーおまえ」
「う、うる、せぇ」
とかなんとかいいながらも席につくと
キーーーンコーーーーンカーーーーンコーーーーン...
と本鈴のチャイムが鳴る
そこから少ししてから教卓側のドアからガラガラガラッと勢いよくドアが開くと担任の小野山千晴(オノヤマチハル)先生の登場だ
普通なら何でもないことのはずだがクラスメイトはざわつきだす
「ちはるちゃんきたきた」「今日はだいじょうぶかな?」「いつもどおりに10円」
「おいタカタカ、お前はどう思う」
前の席の順平も他のクラスメイト同様に聞いてくる
「そうだな、今日は...」
うーんと考えるふりをしてから
「教卓に弄ばれるであろう」
と低い声でインチキ預言者のように言ってみた
「おいおいなんだよそれ」
と順平がいうと
「ハイハイ、みんな静かにしてね」
と先生が手を叩きながら注意する
「はい、では日直号令」
「起立!」ガタッ「気を付け!」バッ「礼!」
「「「おはようございま...」」」
「ゴンっ!」
ゴンっという音に反応して元の体制に戻ると
教卓の千晴先生が教卓に思いっきりダイブしたらしく頭を打ち付けていた
「い、いた...」
と起き上がると
ズルっ
っと滑ってしまいそのまま
ゴンっ
とまた教卓にダイブ
「いたーーー!?」
と叫びそのまま動かなくなってしまった...
「お、おいおい」
前の順平がこっちを向いて話しかけてくる
「さっきのお前の預言、的中じゃん」
「お、おう...」
こんなことあるんだな
そう思っているなかも千晴先生の叫び声に隣のクラスの担任が駆けつけ千晴先生はそのまま保健室へといくのであった
昼休み
校内の学食でお昼ごはんを食べている
「しっかし、今日のタカすご過ぎ」
と俺の左側に座ってる順平がそう話を切り出す
「ん、まぁでもただの偶然だろ?」
「えっ?何々みーにもおしえておしえて」
そう順平の前で身乗り出しているこいつは二つ年下の月島ミヤ(ツキシマミヤ)剣道部の後輩だ
よくこうして一緒にお昼を食べたりしている
「いやな、今日タカが預言することがな、全部その通りになってるんだよ」
「ええっーー!?そうなんですかタカ先輩!!」
「いや、たぶんたまたまだよ...」
そう今日俺はあの朝のあれから預言をすることが全部的中しているのだ
一時間目は教員がプリントをぶちまけてしまうと言ったら配布する瞬間教員の手からすり落ち床に散乱
二時限目の休み時間には水道の蛇口が壊れてると言うと右から三つ目の蛇口が水を出した瞬間止まらなくなってしまい
三時限目なんか急に自習になるなんてありえないことを言ったら千晴先生がやってきて
「三時限目の大野先生が貧血で倒れてしまいましたので急きょ自習になります」
っていって本当に自習になっちまった
「ほえーー先輩、すごいです」
「な?スゲーだろミヤ」
「いやでもたまたまだろ?」
「でもよ、たまたまにしたって全部お前が預言してからすぐに起きてんだぜ?ありえねーよふつー」
「先輩先輩、みー宝くじ買ってほしいなぁ」
「おっ俺も俺も」
「勘弁しろよおまえら...」
とあきれるようなことを言ってくる
ちなみに俺の前ではそんな話には気にも止めずにおいしそうに俺のパフェを食べているさやかがいた
放課後
部活も終わり帰り支度をしていると「せんぱーい」とミヤが後ろから抱き着いてきた
「おう。ミヤか。女子部も今終わりなのか」
「はいですよ。なのでみーは先輩と一緒に帰ろうかと思いまして」
「ん。そうか。それなら帰るか」
「はいです!」
そのまま昇降口まで行くとそこにたまたまさやかが出口で立っていた
「おっさやかじゃん」
「タ、タカ。今帰りなの?」
「おう。お前もか?」
「そうよ」
「ならさやか先輩もみーたちとかえりましょー」
「え?えぇ、そうね。そうしましょう」
「はいです!」
夕方の帰り道
駅前のほうに寄り道をしてからミヤとも別れ俺とさやかも家に帰ることになった
「もうすぐ中間だけど、あんた大丈夫なの?」
「ヘーキヘーキ。今回もいつも通りさ」
「そのいつも通りってまた私のノート写すってことでしょ?」
「もちろんでございますさやか様。恵まれないわたくし目に是非お慈悲をぉ~」
「なにいってんのよバカタカ!こないだのときが最後っていったでしょ!」
「いやいやそこをなんとか」
「だからねぇ...ん?」
「?どうしたさやか?」
とさやかが急に黙ったので何があるのか見てみると
古い木造の店があった
看板には「運命と巡り合う」と書いてある
「こんなお店、見たことあったかしら?」
確かに今まで何度も通った道だがこんな場所に店があったなんて
というかこんな建物あったか?
「『運命と巡り合う』か。さやかこうゆうの好きだろ?ちょっと入ってみねぇ?」
「えっでも、もう遅いし」
「少し見るくらいなら平気だろ?ほらいこうぜ」
そういいながらさやかの手を掴み強引に店に入る
「ちょ、ちょっとタカ...」
扉を開けて中に入ると
外見とは裏腹に店内はとてもおしゃれできれいだった
「すげぇ...」
「わぁ...これ小物のアンティークとかかしら?」
そういいながらさやかはテーブルに乗っている小さなうさぎのようなものを手に取る
壁には古そうな時計とかがかけられていたり西洋家具とか照明器具もあったりする
「ふぅん...」
誘っといてなんだが俺はこうゆうものにはさほど興味もない
いろいろ物色し始めるさやかをしり目に俺は一人で店内をうろうろし始める
ガラス細工の置物、変な形の古いコップ、シャンデリアとかもあるのかすげーなここ
「これもかわいいなぁ...あっでも、これも捨てがたいかも...うーん、迷っちゃうなぁ」
とお財布事情と相談しながら買うつもりのさやかの声を聴きながら見ているとあるものに目が留まった
それはピンポン玉くらいの白い球体なんだが俺には初めて見るものに見えなかった
なんだがよくわかんないけど、つい最近こいつを目にしたようなきが...
ーーーヤットーーミツカッターーー
「うおっ!?」
いま、声がした?女の声?
さやかのほうをみると相変わらず小物とにらめっこで俺に話しかけてきた様子はない
店内を見渡すが店員は一人もいない
ーーーーワタシヲーーーミテーーーイチタカーーーー
また声が響く
なんだこれ?何が起きてるんだ
するとさっきまで聞こえていたさやかの声が急に聞こえなくなった
バッっとさやかのほうをみるとさやかがまるで石にされたかのように微動だにしない
壁の時計をみるこちらも動いていない
なんだ?いったいこれはどうゆことだ?
ーーーーシツモンーースルーーーーイチタカーー
頭に響く声はそう言ってくる
「し、質問?」
なんなんだおいこいつはどうなってんだよ?
ーーイチタカガアルクトミチガミエルーーーーヒダリハチカミチミギハマワリミチーー
ーーーサアーードッチヲススムーーーーコタエテーーー
...よくわかんねえけどこいつは
「右だ。楽するのは好きだが回り道を歩くのが好きなんだよ」
ーーーーーーーワカッターーーーーーー
その声の後に後ろからさやかの声が聞こえてくる
「ねーねータカータカも一緒に選んでくれなーい?」
はっとその声に気が付くと俺はさやかのところへ急いで移動する
「大丈夫か!?さやか!!」
「えっ?何々どうしたのタカ???」
急なことによくわかんないみたいな反応をするさやか
時計を見るとカチコチと時を刻んでいる
あれは、いったい
「!さっきの玉」
そういうと俺はすぐさま玉のあったところに移動する
しかしそこにあったのはただのメリーゴーランドの形をしたオルゴールがあった
「なになに?どうしたのタカ?」
さやかが心配そうに駆け寄って話しかけてくる
「いや、よくわかんねぇ」
そうとしか言えなかった
さやかはよくわかんないと首をかしげながら俺を見ていた
次の日
「おっすタカ!」
「おう順平。おはよ」
「今日は遅刻ギリギリじゃねーじゃん。めっずらしー」
「たまにはこんな日もあんだよ」
昨日
あれから家に帰るまでさやかはずっと俺の心配をしてくれていた
「なんでもないから」とはいうもののそれに納得するわけはなく腑に落ちない顔で家に帰って行った
そして俺も昨日のことが頭から離れずいろいろと考えているといつもより早く寝たみたいで今朝はいつもなら遅刻ギリギリの時間に起きるはずが七時前に目が覚めいつも通り起こしに来たさやかを驚かせてしまった
「ふぅ」
改めて昨日のことを考える
あのピンポン玉は確かにあの店にあった
そして俺はそれを見たことがある、はずだなぜかは知らないけど
そして予鈴がなりしばらくしてから本鈴がなり今日の学校生活が始まった
一日何事もなく放課後になる
今日さやかは家庭科部の活動がある
俺はいつも家庭科部で作ったおこぼれをもらうため特に残る必要のない放課後の学校にいつもなら一人で待っているのだが...
「なんで、おまえもいるんだ?」
「えー、だってだってみーもさやか先輩のクッキーほしーですもーーん」
今日に限ってなぜがミヤが一緒にいる
たぶん今日の昼のときにあいつがクッキーをつくるって話してるのを聞いたからだろう
「だからって俺と一緒に待たなくてもいいだろ?」
「いやです。だってさやか先輩絶対先輩のところに来ますもん」
「はぁ?なにいってんだおまえ?」
「そうしたらみーはさやか先輩を探さなくてすみます。みーかしこい」
ふふーと鼻息をもらし自信満々なミヤ
その理屈はどこからきてんだよ...
「それにそれに、一人で待っているより二人のほうがさみしくなくて楽しいです」
「はいはいわかったよ」
まぁ、確かにそれはそうかもな
こいつでもいるだけましか
生徒のいない俺のクラスでミヤと二人っきりでさやかを待つ
ミヤは高1の割には背が低く本人は「150センチはあります!」と断言しているがどう見ても140センチ代だろう
さらさらのブロンドのツインテールが教室でくるくると回るたびに左右に揺れているのが何ともほほえましい光景だ
「あっ、先輩先輩いまみーに見とれてましたね?」
屈託のない笑顔でそんなことを聞いてくる
「へいへいそーですよー」
俺はなんとも愛想のない返事をミヤに返す
「ふふーそうでしょーそーでしょー。みーは可愛いですからねーふふー」
といいながらさらにくるくるまわってる
「はいはいそうですよ。ほら、そんなに回りすぎると転ぶぞ?」
「みーはそんなドジは...ひゃああ!?」
ドーンとその場に尻もちをつくミヤ
「ほらなーだからいったろー」
「いたたた、ち、違います先輩。何か踏んで転んでしまったのです!」
「はいはいほら痛くない...」
ミヤの足元には転ぶ時に踏んだと言っていた"何か"があった
「?先輩??」
それは見覚えがある
そう
昨日見たあのピンポン玉だ
ーーーーみつかったーーーー
まただ
またあの女の声
隣ですでに立ち上がってるミヤが「先輩?どうしたんですか?」と声をかけているが俺には全然聞こえない
というかむしろ聞いていない例の声のほうが気になりすぎて反応できないのだ
ーーーーしつもんするーーーーいちたかーーーー
昨日よりもはっきりした声だ
「おう、わかった」俺はそう答える
ーーーひゃくにんのったふねとせんにんのったふねがあるーーーどちらのふねもこわれてしまいどちらかのふねしかたすけられないーーー
ーーーおまえならどっちをたすけるーーー
俺なら...
「助けるなら千人の船を助けたい。だが百人の船に俺の友達がいるのならそっちを助ける。逆も同じだ」
ーーーわかったーーー
すっと声がやむ
「先輩!?せーんーぱーいー!!」
「ちょっと、大丈夫なのタカ?」
気が付くと部活が終わったのかさやかも来ていて二人して俺の心配をしていた
「あ、あぁ。大丈夫だ」
「大丈夫って先輩、すごい汗ですよ?」
「ん?あ...」
手のひらにはすごい汗がでていた
「い、いや、何でもないから...」
「なんでもないわけないでしょ!昨日もおかしかったじゃない」
「えっ?先輩そうだったんですか?」
「いや、それは...」
説明したくても何がなんやら
あ、そうだ
「み、ミヤ。おまえさっき転んだときに何かにつまずいたんだよな?」
「え?あ、はい。多分この辺...あれ?」
ミヤがしめした場所にはさっきまであったはずのピンポン玉が消えていた
「あ、あれ?えっと、どこにいったのでしょう?」
ミヤも思わず困惑しだす
さやかもその様子をみて困惑しだす
一番わけわかんねぇのは俺なんだが...
一週間後
あれから何も変化はない
あのあと三人でピンポン玉を探したが見つからず遅くなってきたので謎のまま帰ることになった
俺にもよくわかんないが一応説明してみた
最初は半信半疑ではあったもののそれぞれ状況を目の当たりにしていた二人はとりあえず納得してくれた
そしてそのまま何事もなく帰宅した(ちなみに俺もミヤもちゃっかりさやかのクッキーをもらってる)
しかし、あのピンポン玉いったい何なんだ?
最初のときよりもしっかりと声が聞こえたし
それになんか聞いたことあるような気もする声なんだが...
よく、わかんねぇなぁ...
そしてあっという間に放課後
中間テスト一週間前とのことで部活は全面休止
なので今週はさやかのおこぼれおやつはなし
学校に残って勉強するガリ勉君ではない俺は早々に下校
ちょうど部活のないさやかとたまたまいたらしいミヤと一緒に途中までいっしょに歩くことになった
「ねぇ、あれから大丈夫なの?タカ」
とそう心配そうに聞いてくるさやか
「ん?」
「そうですそうです。みーも心配ですよ」
とミヤもぴょこぴょこ跳ねながら聞いてくる
「いや、まぁ。でもあれからそのピンポン玉?か?見かけてないし。なんか夢だったのかもしんねぇ」
と笑ってみるも通じるわけもなく
「そのわりにはあんなに必死だったじゃないのよ」
「ですです。あの時の先輩すごい汗で制服びっちょりでしたよ」
「いやいやそこまでじゃなかったぞ?」
「でもでも、すごい汗に間違いはないのです。みー、とってもとっても心配してたんですから」
「ほら。後輩もこうして心配してくれてるのよ」
「ですですよー」
「うーん...」
でも実際何も起きてないのは事実だし
「ほんと、何だったんだろう...」
夜
夕食を食べて風呂にも入り一応見回りにくる母親に見せるために勉強してるふりをしながら適当にノートに落書きをしていた
変な動物とかロボットとか草とか落書きも書き始めると楽しいもんだ
花を書こうと丸をつくるとあのピンポン玉を思い出した
(結局あれからもう現れないんだし、やっぱ夢とかだったんだよ。きっと)
そう夢。幻。妄想。
そんなところだ
だいたいそんなことが起きるなんてありえないだろ
「おっと」
そんなことを考えながらからか書いた線が汚くなってしまった
「えっとぉ、消しゴム消しゴム...」
そういいながら筆箱に手を突っ込み探す
「お、あったあった」
筆箱から消しゴムを取り出す
「さてさて...えっ?」
取り出したのは消しゴム...ではなく
あのピンポン玉
ーーーー見つかったねーーーー
間髪入れずに響く声
「ま、マジかよ...」
夢、そう夢のはずなんだ
なのになぜまた
ーーーこれが、最後の質問だから頑張って答えて一鷹ーーー
さ、最後だって?
一体どうゆう...
ーーー最後の、質問ーーー
その声を最後に意識を失った
「う、うーーん」
寝ていたのか、俺は?
「あ、あさ...?」
目覚めて見えた景色は
何もない真っ青な世界だった
「な、なんだこれ...?夢?」
と思った矢先に目の前が光りだす
「うわ!?」
するとそこにさやかとミヤが現れた
「えっ!?なにこれ!?!?」
「あ、あれ?み、みーはお家にいたはずですよ?」
パジャマ姿のミヤと下着姿のさやかがそこにいた
「え?」
「え?」
「あ、先輩「見るなバカタカーーーーー!!!」
「あべし!?」
さやかの見事な正拳が俺の顔面を破壊した
「そ、それで、ここはどこなのよバカタカ?」
「お、おふぇにも、わふぁんないっす」
「先輩、ちゃんと喋れてないですよー?」
あのあと倒れた俺の上着をはぎ取りさやかは一様下着が見えないような格好になっているのだが
「いったい何なんですかねー。ここは?」
結構な時間ここにいるとは思うが何も変化はない
すこし歩いてみたがどこにもいかないしミヤが少し遅れてついてきていたはずなのに気が付くと前にいてこっちが追いつく形になるしなんなんだこれ
「おーーい、だれかーー」
そうさやかが叫ぶも特に反応はない
「困りました...そしてみーはとってもおねむさんです」
「ダメよミヤちゃん。こんなとこで寝ちゃ。そこのけだものに襲われちゃうよ?」
「誰がけだものだ誰が」
「うみゃー...zzz」
「ミヤちゃん!起きておーきーてー」
そう言いながらぶんぶんとゆすりだすさやか
「まったく...」
そう言いながら少しだけ先を歩いてみる
「ほら、おいてくぞーおまえらー」
「...みゃーあ?」
「あ、まちなさいバカタカ!」
と言いながらミヤから少し離れるさやか
すると
ーーー質問ーーー
「っつ!?」
声!?あいつの声だ
そして
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
「!?さやか!!」
さやかの叫び声が響くと同時に青い床が地面に変わる
「な、なんだ!?」
「ふ、ふええ?せ、先輩??」
地面はそのまま裂けて三人はそれぞれ分断されてしまう
ーーーーさあ一鷹ーーーー
ーーーー今目の前にいる二人のうちどちらかしか助けられないーーーー
ーーーーどちらかを選べーーーー
「...は?」
目の前には恐怖で座り込んでるさやか
状況を把握できず泣き出しそうなミヤ
この二人のうちどちらかしか助けられない...だと
「そ、そんなの、答えられるかぁ!!!」
俺は空に向けてそう言い放つ
ーーーー答えて一鷹ーーーー
ーーーーさぁ、はやくーーーー
「お、おいおいおいおい...」
一体どうしたらいいんだよこれ
「た、たかぁ...」
いつもは強気なさやかが見たこともないようなよわよわしい姿をみせて
「せ、せんぱぁい...たすけてください...せんぱぁぁい」
いつもは明るいミヤが怯えきって俺に助けをすがっている
これをみて選べっていうのかよ...!
足場は少しずつ狭まっているみたいで二人ともどんどん中央に追い詰められている
一体、どうしたらいいんだ...
考え込んでいるとミヤが急に何かを悟ったような顔つきで話し出した
「先輩、はやくさやか先輩を助けてあげてください」
「!?みや?おまえなにいって?」
「何を言い出してるのミヤちゃん!!??」
「い、いいんです。みーのことはいいですから。せんぱい、はやくさやかせんぱいを...」
ボロボロと泣きながら必死にさやかを助けろと言い出すミヤ
「やめろミヤ!待ってろ必ず俺が...」
「だ、だって、さ、さやかせんぱいは...」
涙をたくさん蓄えながらミヤはにっこり笑いながら
「さやか先輩は先輩のこと、大好きなんですから」
と笑顔を崩さずにそう続けた
「なっ、ミヤお前何言って...?」
「だって、そうじゃないですか...!いつもさやか先輩は先輩のこと気にかけてて、先輩の部活終わりに合わせて昇降口で待っていたりして、家庭科部の料理だって先輩の大好きなもの作って終わったらすぐに探しています!だ、だから先輩は、さやか先輩の思いに答えないとダメなんです!!」
「...ミヤちゃん」
「...さやか」
はーはーと息を吐きながらミヤはまた笑いながら
「なので先輩?みーのことはいいから、みーじゃなくてさやか先輩を...」
「ミヤちゃん!!」
そんなミヤの提案をかき消そうとさやかが叫ぶ
「さ、さやか?」
「...タカ、確かに今ミヤちゃんが言ってる通り、私はタカが好きよ?」
「お、おいさやか?」
「でも!!」
バッと顔をあげるとさやかも泣いている
そしてミヤに顔をむけると
「ミヤちゃんだって、タカのこと大好きじゃない!!」
と強い声で言い放つ
「せ、せんぱい?」
いきなりのことにあっけにとられるミヤ
そんなこともおかまいなしにさやかは続ける
「いいタカ?ミヤちゃんは何故いつもお昼に私たちの席をとっていてくれてると思う?何故いつもタカにだけ抱き着いていると思う?何故ミヤちゃんはタカと同じ剣道部だと思う?それはね、タカのことが好きだからよ!」
「お、おいさやかまで何を...」
「や、やめてください!先輩!?」
先ほどまでとは急に態度が変わり叫びだすミヤ
「いいえ、やめない。タカ、ミヤちゃんはクラスでも人気者でお昼を一緒に食べてくれる友達だっているわ。でもね、あんたと一緒がいいって断ってるのよ?」
「せ、せんぱい、やめて...」
「いつものスキンシップだってねぇ!普通年頃の女の子はあそこまでしないわ。ミヤちゃんは少しでもタカと一緒にいたいと思ってるの!!部活だって!」
「も、もう...やめて...」
「部活だってね!昔あんたが全国出た時の予選会でまだ中学生だったあのこがお兄さんの応援に来たときにたまたまあんたを見かけて!そのときに!!ひ、ひとめぼれしちゃってんのよ!!」
「なっ、おま!?なにいって」
「せ、先輩!その話はないしょっていったじゃないですかぁ!!」
「み、ミヤ!?」
三人が三人それぞれ叫びぜーぜーと息を切らす
そして涙声でさやかが喋る
「だ、だからタカ、私なんかより、ミヤちゃんを助けなさいよ...」
「せ、せんぱい...」
「さやか...」
「ご、ごめんねミヤちゃん。内緒だったのに話しちゃって...」
ミヤは首を左右に振ってにっこりと笑う
「い、いいえ、私だって、さやか先輩の秘密、言っちゃいました...」
そう聞くとさやかもみやに笑いかける
「お、おまえら...」
そんな二人の告白に俺は戸惑いを隠すことができない
「さぁ...タカ...」
「先輩...お願いですから...」
「ミヤちゃんを助けなさい」
「さやか先輩を助けてあげてください」
俺は
ーーーーさぁ、答えてーーーー
オレは
ーーーーさぁ、答えなさいーーーー
おれは!
ーーーー答えなさい!前村一鷹!----
「うおおおおおおおおお!!!」
俺は空に向かって叫ぶ
二人のうち一人を選べ?
俺のことを好きな女性を一人だけ選べ?
自分より相手を助けろと言ってるあいつらから一人だけを選べだと?
「...俺は」
目の前の崖から向こうの二人まで大体二メートル
二人の間の裂け目も大体二メートル
だったら
やることは一つ!
距離をとり走る体制になる
「おまえら!!」
泣いてる二人はそろって俺のほうを向いている
「俺を信じてそこに立ってろ!」
その言葉に動揺するもゆっくり立ち上がる二人
「せんぱい...?」
「タカ...?」
よし
「いくぞぉ!」
そういうなり全速力で走りだす
崖のギリギリでまずはさやかにめがけて大ジャンプする
そして着地に成功
「タ、タカ!!」
「つかまれさやか!」
「うん!!」
右腕でさやかをしっかりと抱きかかえる
そして
「うおおおおおお!!!」
そのまま隣のミヤのところへ!
「せ、せんぱい!?」
ギリギリで着地に成功する
「おらミヤ!おまえもつかまれ!!」
「えっ?ででも先輩...」
「タカ!?あんたまさか!?」
「うるせぇ!」
強引に左腕でミヤを抱きかかえる
「ひやぁぁ!?」
「やめなさいよ!!み、ミヤちゃんいやがって「だからうるせぇ!!」
と叫び強引に黙らせる
「俺はな、こんな状況で、一人しか助けられないなんてこといいたくないんだ!!だから!」
最後の力を振り絞れよ俺
「だから、さやかも!ミヤも助けて!三人で...!」
そう言いながら走りだし
「三人で帰るんダァァァァァ!!」
思いっきり跳んだ
ーーーー前村一鷹ーーーー
ーーーー最初の質問の答え:理解不能ーーーー
ーーーー二つ目の質問の答え:理解不能ーーーー
ーーーー最後の質問の答えーーーー
「あ、あんた...」
「せ、せんぱい...」
「ぜい...ぜい...ぜい...」
か、身体中の筋肉と骨が...悲鳴をあげている...
「よくも二人とも助けたわ」
「先輩って欲張りさん?」
「う...うるせぇ...」
さすがに二人抱えて2メートルの幅跳びは...しんどい...わ....
ーーーー予想外ーーーー




