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四月  部署異動にトラブルはつきものです

私の名前は前村一鷹(マエムライチタカ) 27才 独身 彼女無し

株式会社リオン・ファクトリーに勤務するサラリーマンです


ごくごく普通の高校、大学と進学し22才の時に入社

そして今まで5年間毎日無遅刻無欠席の皆勤を貫き6年目の今年社長から新しい部署への転属と課長補佐代理というなんとも言いがたい昇進(?)を受けましたが


「…第十三特別地区…部…ですか」


地区から部の間に少し空白があるがあまり聞き慣れた部署では無いな


「うむ。そこの課長補佐代理を勤めてもらう。頑張り次第では課長補佐に昇進も夢じゃないぞ。一鷹君」


「は、はぁ…」


その昇進は果たして素直に喜んだ方がいいのかどうか…


「まぁ楽しい部署だから君なら大丈夫さ。引き継ぎ等は直接部署で行ってもらうよ。では、これを」


そう言いながら社長は銀色の鍵を取り出して私の手に置いた


「この鍵は?」


「第十三特別地区に入るための鍵だ。ここの4階から渡り廊下でいける旧館があるだろう?そこが第十三特別地区だ。まぁ頑張りたまえ一鷹君。はっはっは」


「わ、わかりました」


そう言い残し一礼して社長室を出る

頂いた鍵を見てとりあえずどんな部署なのか少し恐れながら階段を登っていく


この異動が私の人生を大きく変えてしまうことになるとは夢にも思っていなかった




株式会社リオン・ファクトリーはおもちゃ会社だ

主に子供向けのおもちゃを販売・開発をしており、おもちゃ屋やデパートのヒーローショーで使われたりしている

以前は営業部署で日夜せっせと働いてはいたが、開発研究部署やおもちゃの委託専用部署等はよく見かけたり知り合いがいたりしたが第十三特別地区なんて部署の話は聞いたこと無い


おまけに旧館にもいい噂を聞いたこともない

創業30年の会社の旧本社で改装工事を行っておらずボロボロのコンクリートで出来ているし、建物は現本社と同じ4階建てではあるが一階には入り口はなく、4階に何枚か窓があるだけでのっぺらぼうのような外観だ

なので社内では幽霊館と噂があるほどだ


4階の渡り廊下に入るための扉に手をかける

ガチャ、ギギギギギと耳にさわる音をたてながら扉を開けると本社より綺麗な廊下と突き当たりにコンクリートでできた壁がある


「?鍵穴がない?」


コンクリートの壁には鍵穴が見当たらない

触ったところくぼみも見当たらずどうしたらいいのかわからない


「…一旦戻ったほうがいいのか?」


スーツのポケットにある鍵を取り出して見る


んー、やはり鍵穴が無いな


「どうしたらいいのか聞きに…」


いこうと言おうとした瞬間持っている鍵が急に光だした


「ウワッ!?」


な、なんだ!?凄く眩しくて目が開けられない…!?


光が弱くなり目もだんだん見えてくると

目の前のコンクリートの壁だったはずが木製の扉になっていた


なんだ?これは一体…

とりあえず事情が飲み込めない

やはり一旦戻ってどうゆうことなのか…


「えっ…?」


入ってきた扉が


無くなってる






テラスカウンターでお日様の下コーヒーを飲みながら退屈そうに待っている女性が1人

「新人君、遅いなぁ~」

そういいながらコーヒーを口にしてのんびりと新人の到着を待っている






落ち着け落ち着け

今朝社長から異動の指令が来て

第十三特別地区とかいうとこの課長補佐代理に配属されて

そのために4階の旧館にいくための渡り廊下の先にはもらった鍵で開けれそうな鍵穴が無くて

鍵が急に光ったと思ったら

木製の扉が出てきて

本館に戻る扉が無くなって…


駄目だ

頭がこんがらがってきたぞ…


とりあえずは落ち着こう

うん、ちょうど目の前に現れた扉には鍵穴があるしもしかしたらこの鍵で開けられるのかもしれないなうん


そう思って鍵穴に鍵を差し込んでみる


ガチャガチャガチャ…


「ん?」


ガチャガチャガチャ…



開かない…


「なんで開かないんだあ~!?」


そう叫びながら扉をドンドンと叩きつける


硬い木製の扉には傷ひとつつかずただ私の腕が痛くなるだけだ


ふと、叩いていると平らな木面の一部が窪んでいる


手のひらで上下に動かしながら触ると明らかに扉の中心部分が窪んでいる


見た目ではまっ平らにしか見えないのに…


そして、窪みを指でなぞると鍵のような形に窪んでいるのに気がつく


「…!もしかして」


鍵穴から鍵を引き抜き窪みに合わせるように鍵を嵌め込む


「…ピッタリだ」


ガコンッ!!


何かロックが外れるような音がする


「…今度は一体なん…」


言い終わる前に木の扉が鍵を飲み込みそこから白い色が扉を塗りつぶしあっという間に木の扉が真っ白な扉になった


ドアノブも綺麗な金色に変わり高級感を漂わせる装いになっている


「…わけがわからないな」


とはいえ出口は無いんだ

そう思いドアノブに手をかける


カチャン…

ギギギィ…


ドアが開き光がこぼれる


「何が出ても絶対に驚かないぞ…」


開いたドアから見た光景は

私が予想していたコンクリートの灰色の世界ではなく


色彩豊かな見たこともない大自然だった


「な、ななななな…なんじゃこりゃーーー!?!?」



不思議な形と色をした見たこともない植物

ふわふわと浮いている謎のシャボン玉みたいな柔らかそうな物体

七色の長い尾を持つ鳥が空を羽ばたき

新緑の香りが身体全体を包み込んだ


後ろを振り返ると

入ってきたはずの扉は無くなっていて

大自然に立ちずさむ自分がいた


「…どうゆうことだ、これはーーー!?!?」


今まで出したことの内容な大声を連発しハァハァと息を切らせる

一体全体なんなんだこれは?

これがビルの中なのか?

というか、最早ここは日本なのか?



と、疲れて途方に暮れていると前方に白い看板がある

しかも日本語で文字が書いてあるみたいだ


「おおお!」


私は走ってその看板に近づき読むと次のようにかかれていた


ここはアルタイロ国・リリラ平原

アルタイロ国城下町までこの先250m


…アルタイロ国?

…リリラ平原??


「なんだ?これは?」


聞いたこともない国、聞いたこともない名前の場所


「で、でもまぁとりあえず国ってことは人がいるんだろうきっと。うん、そうに違いない」


うんうんとポジティブに考えていると下の方に注意書きが書いてある


注意

モンスター出没注意


「…もん、すたー?」


すると後ろのほうから何かが近づいてくる気配がする

振り向くと

牛の顔をしたスライム上の何かがこちらに雄叫びを上げながら近づいてくる


「▲◎δγΟΕκβΤΘΕΡΨλγβΚΡεζΕ!!」


「ギャァァァァぁぁぁぁぁぁ!!??!!??」


そして私も雄叫びを上げながら看板に示された方向に向かって真っ直ぐ逃げるのであった





「ゼーゼー、はーはー」


なんとか化け物とのおいかけっこに勝利しゆっくりと歩く

ピシッと決まっていたスーツはヨレヨレのくたくた

ズボンも走り回って草だらけ

革靴は左の靴がパカパカいうオモチャみたいになっている


「い、一体なんなんだここは?」


と、ゆっくり歩いていると人の話し声が聞こえてくる


しかも聞き慣れた言葉、日本語だ


「よ、よかった…これでなんとか…」


と思ったのもつかの間

目の前には壁に囲まれ、白い橋がかけられている巨大建造物

橋の下には水が流れて見えるのだが下にあるはずの地面が見えない

そして流れる水はまるでナイアガラの滝を彷彿させる光景に私の脳みそのキャパシティを一発でショートさせた


「…一体なんなんですかこれは?」


そういいその場にへたりこむ

すると、橋のほうからこちらに向かい二人の男性が近づいてくる


腰が抜けて立てない私はその場から逃げることもできない


そうこうしてるうちに屈強そうな男が二人私を見下ろしている


なんかRPGゲームとかでいそうな鎧の兵士みたいな格好な彼ら

おまけに耳が横に長く尖っている


「なっ、なっ」


私は口を開けるもパクパクと開いたり閉じたりで驚きすぎてまともに喋れない


片方の大男がジロジロと私の顔をみる

もう片方の少し優男が私の顔の前に手をふり意識確認をしてくる


なんだろう

よくわかんない人に普通に心配されている感じがする


「あのっ、えっとぉ…」


やっと喋れるようになると優男が話しかけてくる


「貴方…もしかして…マエムライチタカさん?」


「!は、はい!そうです!前村一鷹です!!」


シャキッと立ち上がりキビキビと返事を返す

どのような状況でもしっかりと対応ができるのは私のいいところとは思うが、初対面の人(なのかすらわからないが)に対して順応出来すぎるなぁと我ながら思う


「あぁー!よかったよかった!サトウさんがずっと待っていましたので迷われてたのか心配でしたよ!」


と安心した表情で話す優男

サトウさん?誰だ一体?


「えぇーっと??」


「とりあえずこちらに来てくださいイチタカさん」


と大男が私の背中に手で支え、優男がこちらですと手招いている


とりあえず事情は飲み込めなくとも(何故か)私のことを知っているんだから黙って従おう

そう思いながら町に入っていく





「こちらですイチタカさん。中でサトウさんが待ってますから」


といいにこやかに手をふりながら帰る鎧の男二人


あれから町中を散策しながら連れられていったのだが

見たこともない果実や魚や綺麗な花のお店

どこからともなく火を吹いたり凍らせたりする実演販売所

挙げ句剣や盾や槍とか置いてあるお店もあったりで物騒だったりと目移りばっかりしてしまった


「一体ほんとなんなんだここは…」


と思い連れてこられた目の前の場所を改めてみる


白と青を貴重としたレ〇ブロッグを重ねたのような風貌の店構えの中心の看板はとても見慣れた名前だった


『リオン・ファクトリー アルタイロ国支店「ギルドセンター」』


リオン・ファクトリー、アルタイロ国支店!?


な、なんで日本のおもちゃ会社がこんな不思議な国に支店を構えてるんだ??


「ど、どうゆうこと??」


頭をひねらせ考えているとカランコロンと目の前の薄い青い扉が開く


「お!やっときたね課長補佐代理!」


そう言われて目を向けると

赤いショートカットの髪に薄いピンクのスーツを着た日本のどこにでもいそうな普通のOLさんがいた


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