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幕間 終

 空守タワー最上階にある展望フロアは、終日多くのカップルや家族連れで賑わう人気スポットだが、今やその姿は跡形もない。

 なぜならばフロアを中心に、天辺のアンテナをも飲み込んで、ローマのコロッセウムを想起させる闘技場がその場に現れたからだ。

 外から観れば、ダルマ落としのダルマをフリスビーに挿げ替えたような、異様な様を呈しているだろう。

 闘技場に用いられている建材は、全てはプラスッチックのような、白色のすべすべした何かで構成されており、毒々しい光沢を放っている。

 戦士が戦う競技場部分は楕円形で、直径は一○○メートル程度の広さがあった。。

 

 この異常事態の中ルキフェルは闘技場の観客席に腰かけていた。

 観覧しているのは、二度と立ち上がることはないヒーローたちの亡骸だ。テレポーターなどの空間跳躍できる者は大半が奇襲をかけ、ここで返り討ちに合っている。

 その他有象無象でこの場所に到達したものは現時刻では一人もいない。


 この惨劇を生み出しながらも、ルキフェルは眉一つ動かさない。

 その眼は子供が興味のなくなったオモチャに向ける眼差しと非常によく似ていた。


 「パターナイフ状況はどう?」


 声に答え、パターナイフがどこからともなく現れた。

 音もなく虚空から唐突に登場したその姿を見て、ルキフェルはクスリと口角を歪ませた。

 首だけを動かして、彼に、優秀な殺し屋に目をうつす。

 パターナイフは白髪の前髪を胸元にたれ下がるくらい伸ばしており、その表情をうかがい知ることはできない。

 しかし白髪の奥にある紅い瞳は、ドロドロと次の獲物を求め続けていた。

 両手に構えるククリ刀はインビジブルキッドを殺した時とは違う、新しいものに取り換えられている。

 ヒーローの専門の殺し屋である彼は、血油や刃こぼれで切れ味を落とすような愚は決して犯さない、なので仕事のたびに刀を変えるのはただの趣味だ。


 「あと一戦・・・・・・という所でしょうな」

 「ヒーローたちが攻撃を仕掛ける回数ってこと? まあ時間も戦力もないだろうし、特攻しかないかもね。ボクとしてはつまらないけど。その時がきたらボクたち二人で楽しもうか」

 「インスタントヴィラン共はよろしいので?」

 「いいでしょ別に、思いのほかヌルゲーになっちゃったし。最後くらい遊ばないとボクの気が晴れないよ」


 ルキフェルの眼がキャプテン・マイティに敗北した時の、生まれて初めて挫折した時の屈辱を回想していた。

 二度とあのような無様はさらさない、その身体から立ち上るオーラは、幾多の修羅場を潜り抜けてきたパターナイフすらも恐怖させた。


 

  最期の戦いが幕を開けようとしていた。

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