上坂朱里②
<1日目>12:15
「このゲームにはガチャがあります」
上坂朱里が全員に向かって説明をする。
ガチャ。ガチャガチャとも言われるもので機械に硬貨を入れて回すことで
中に入っている景品があたるというものだ。
ソーシャルゲームであればレアリティの高いカードが当たる傾向にあるが
そういったガチャは例外なく有料だったり、他のアイテムとの抱き合わせや
特定のレアリティ保障つきの高額ガチャがあったりと形態は様々である。
「先ほども説明しましたがベースは昔のソーシャルカードゲームなので
過去のそれらのゲームにあった基本的機能は全て備わっています。
一人で楽しむクエストもありますし、カードを強化する合成もあります。
カードもレアリティが存在し、イベント報酬や有料ガチャでなければ
レアリティの高いカードも手に入らないのも一緒ですが今回の検証では
イベントがないのでイベント報酬は無視してください」
ガチャは1回300円、6回1500円といったものが主流で、
最低限のレアリティが保障される上、クエストで手に入る無料のカードとは
比べものにならないほど強いカードが手に入るのでガチャに課金をするのと
しないのとでは戦力に大きな差が生まれる。
そのため金を多く使ったプレイヤーほど有利な環境で遊ぶことができ、
課金していないプレイヤーに対して蹂躙するレベルで圧倒的な力を
振るうことができる。
「ガチャに関しても働きに来ている皆さんからお金を払ってもらうのでは
あべこべなので今回はルールを改変し、プレイヤーを一人倒す毎に
1回回せるようにします。ただし、同じプレイヤーとの対戦は
24時間に1回までという制限が付きます」
拡声器がないのか、こちらの人数がそれほど多くないためか、
朱里は肉声のまま声を全体に届ける。
「なのでガチャを多く回したい人は頑張って他の人と対戦して勝ってください。
負けた場合のデメリットは現在の仕様では特にありません。
それでは今から皆さんには園内に散らばってもらい、
30分後にゲーム開始となります。始まったらできるだけ歩き回って他の人と
遭遇してみてください。勿論そのままだとカードが弱いので
まずは一人用のクエストで物語を進めながら合成用のカードを集めて、
メインとなるカードの強化をしてみてください。……ちなみに走り回るのは
端末を落とす危険性があるのでなるべく避けてください」
では解散です、朱里は最後に大きな声で言うとそれぞれ園内に
散っていった。
この解散の時点でプレイヤーは幾つかのグループに分けられており、
合計30人の参加者のうち2~5人ぐらいでグループを作っているのが
大半だったがそのうちの10人近くは1人でどこかへ歩いて行った。
今日の業務はこのあと夕方までプレイヤーたちは園内で
検証を続けることになっているので朱里自身はサポートスタッフとなり、
自分の端末を持ちながら歩き回る予定になっている。
「グループを作っている人たちは大丈夫そうだけど、一人で行動している人は
ちゃんと仕様を把握しているのか少し心配ね」
上司にメールで進捗報告を行うと朱里は中央から移動を始めた。