竹内直樹④
<1日目>13:30
「なんとなくわかったような気がする」
竹内直樹は誰もいない場所で一人呟く。
上坂朱里の一通り説明が終わり、全員で昼食をとると自由に動き回って
好きなことをしていいとのことで直樹はオリエンタルパーク内の適当に見つけた
ベンチに座りながら端末を触っていた。
仕事はもう始まっており、バスに乗り込んだ時点で時給は
発生しているらしく、直樹は説明書を読みつつ朱里の説明を思い出す。
「クエストオブドラゴンか」
どこかから怒られそうな名前だがこの名前で出すということは
恐らく商標上問題ないのだろう。
上坂朱里の説明を聞いたところどうやらこのゲームは
少し前に一時期流行ったソーシャルカードゲームを雛形に
AR機能を利用したもののようだ。
AR機能は現在のスマートフォンにも搭載されている機能で
カメラ機能のようなもので画面を通して現実を映し出すと
そこに情報が浮かび上がるといったものだ。
詳しくはAR機能で検索をかけてほしい。
手持ちの端末がスマートフォンであれば恐らく搭載されているはずなので
ついでに使ってみるのもいいかもしれない。
要するに今まではスマートフォンの画面だけで完結していたゲームが
バーチャルリアリティといえど、イラストの描かれたカードが
現実に浮かび上がって戦うというシステムらしい。
アニメやゲームでもよくあるやつで、カードを媒介にしてそこに描かれた
美少女やらを召喚したりするものという認識で恐らく間違っていないはずだ。
バトルもシンプルでカード毎にスキルこそあるものの
基本的に数値が高いものが勝つというわかりやすいルールだ。
そして対人バトルはこの端末の通信機能を使うらしく、
どうやら常に通信をして相手を探しているようで
半径100m内に端末を持ったプレイヤーがいると
バイブレーションが作動し、半径50m内になると
自動的にプレイヤー対プレイヤーの対戦になるとのことだ。
それをうまく活用するためにオリエンタルパークという
広い施設を使い、別のプレイヤーと遭遇して対戦もしてほしいとも
上坂朱里は言っていた。
直樹は対戦といったような人と競って優劣を決めるの行為は
あまり好きではないが仕事である以上我儘を言うわけにはいかない。
直樹は説明書の内容を一通り頭に叩き込むと端末の電源をつけて
ゲームを始めた。