第一章・沖縄編4
一通り食事が終わり、各自夜の自由訓練へと戻る。そこから十一時までは自由に行動してもいいということだ。
俺の場合は運動館に行き、走る。もしくはさっきみたいにシミュレータ訓練をするかのどっちかだ。ほかのやつらは風呂はいって寝るやつもいれば、ギリギリまで訓練に励むやつもいる。そこが精鋭兵らしくないといえばそれまでだが。
精鋭兵足る物云々……なんて言葉はない。厳しい教官なんて殆どいない。二十歳になればそいつがどんな状況であっても、三十五歳までの間前線で戦い続けなければならない。それまでの猶予は好きに使わせてやる。とのことだと曹長殿は言っていた。もちろんその言葉は精鋭兵訓練施設設立時の時の天皇の言葉だとされている。曹長殿はその言葉を聞いて死ぬ覚悟はいつもしていたとも言っていた。
天皇の管理下にあり、そして日ノ本の国の元にいる俺達は天皇の言葉は絶対である。そして、国のためになら死ぬことが出来る。そう教育されている。
「柊、これからなにする?」
響たちが俺に話を振ってきた。
「俺? ……そうさな、運動館行って入ろうと思ってる」
それを聞いて、何故か笑顔になって俺に顔を近づけてきた。
「走る? じゃあさ、私達と一緒にシミュレータ訓練しない? 一人でやるより皆で、って昔からよく言うじゃない?」
どういう話だ。こいつはこんな風に強引に誘ってくるわけだが、それを断る理由も特になかった。
「ああ……。別にいいよ。俺でよければ」
俺も久しぶりに合同でシミュレータ訓練をしたいとは思った。響の話を持ちかけられてぱっと思いついただけだが、一人でコンピュータ相手の訓練よりかはよっぽどタメになる訓練にはなるからだ。
「じゃあさ、決定! 今からいこう!」
服の袖をいつの間にか捕まえられてて、逃げる由もなく連行された。
「私と具志堅と中西でチーム。柊は力量があるから京一人で上等っしょ?」
そして半ば強引にチーム分けまでされた。別に不服はないが……。
成績といっても、それは殆どシミュレータのコンピュータ相手であるからの成績であって、実際に操縦する相手だと勝手が違う。なんせ均一な動きはしないし、補足してから発砲するまでの時間が長いわけでもない。やたらと打ち込んできたりもするだろう。だからシミュレータ慣れしてると厄介なもんだ。気を引き締めてかからなければならないだろうに。
「じゃあ、よろしく頼むよ」
隣通しのシミュレータに入る前に、コンピュータにそれぞれのIDを認識させ、設定しチームを振り分ける。そしてして指定されたシミュレータボックスの中に入る。
シミュレータボックスの下には多重間接の擬似振動装置が設置されていて、衝撃が走ればそれがそのまま数値化され、データ転送されしたのその装置が動くようになっている。
『柊たちに一泡吹かせてやるよ!』
そう、響が中西とぐっさんに活を入れた通信が聞こえた後、相手側からの声は遮断された……。シミュレータ訓練は開始された。




