第一章・沖縄編3
精鋭兵訓練施設では、食事は全て自分で作ることになっている。朝は六時から七時半までの間に、昼は十一時半から一時までの間に、夜は六時半から八時までの間、それぞれ一時間半の間に食事を作り、済ませなければならない。材料は一応、施設生の量は用意されている。しかし、先にとったモン勝ちというルールが存在する。
材料は全て均一に存在するわけでなく、バラバラに存在する。これも日ノ本の農業事情、蓄膿事情が喜ばしくないから仕方がないのだが。
人気のある肉類は当然、先になくなる。米も当然その次になくなるだろう。現在の状況は基本中国産、タイ産の輸入米だが、食えれば今の時代はそれに越したことはない。それでも無くなってしまうんだ。
時間が短いから、洗ってすぐに米を炊かなければならない。硬いご飯が出来るが文句はいっていられない。と、いうよりもそれが普通なんだ。
碑賀の後ろを追っかけて――といっても、もうすでに姿は見えなかった。
何を思ったか俺はシミュレータルームの待合の椅子で寝てしまっていたんだ。こんなところで寝ていなければ、と結果論を持ち込んで考えてみたが、すぐにやめた。
今は自分の食事を最優先にするべきなのだからだ。
そう考え、すぐに走って厨房へと向かう。
走っていく廊下では何人もの施設生とすれ違う。同じ目的地に向かい、皆足を進めている。
厨房を兼用の食堂にたどりつけば、沖縄県精鋭兵訓練施設第二支部(おきなわけんせいえいへいくんれんしせつだいにしぶ)におおよそ全員が集まり、ごった返していた。それでも、皆は皆、協力し合うといった観点だからだろうか? 喧嘩や暴動は起こらなし、無駄な取り合いや小競り合いはしない。
「柊、こっちにきな! これをわけてあげるよ!」
ざわめきと喧騒の中で、女が俺に向かって手をあげて呼んできた。
そいつの名前は、響 瞳
この施設で育った一人の女の訓練兵だ。年は俺と同い年か。
「貴重な日本米、そして新鮮な卵。お前、こんなもんどっからもって来たんだ?」
米の形で種類が分かるようにまで教えられた。
「具志堅、あんたがもってきたんだろ? 説明してやってよ」
そう響が後ろを向くと、アフロパーマに近い天然パーマの大きな男が立っている。
名前は具志堅 武次郎。響と同じく沖縄県精鋭兵訓練施設で育った訓練兵だ。
「いや……俺はただ、選んでいたら皆避けて……」
図体がでかいのと共に、顔が老けているせいでか、俺と響と碑賀と中西以外のやつらからは避けられている。本心としてはけっこう優しいやつなんだが、見た目がどうとかで決められてるって感じだ。
「ははは! ぐっさんがいるといいモンが食えるよ! いつもありがとな!」
ぐっさん、とは俺たちの輪のやつらが使う具志堅の呼び方だ。




