第一章・沖縄編2
すべてが日常で、すべての行動がごく普通のことだった。それがこの俺の生活環境なんだ。
精鋭兵訓練施設。俺たちはそういう名前の学校みたいなところに入れられている。二十歳になるまでにはすべての項目が終了し、戦場へと向かわされる。
基本としては戦闘機操作などの訓練だ。拳銃から戦車、空は戦闘機に至るまで、すべての乗り物に精通していなければならない。その人間を作るのが、その精鋭兵訓練施設というものだ。
「柊、凄い事になってるね。成績の桁がみんなとは二桁も違うよ!」
シミュレータから外に出る成りに、驚きの声を浴びせられる。
柊、とは俺の名前だ。柊 紘文
そして成績云々とかで驚いているのは中西 祐樹
俺は岐阜県出身でこいつは確か鹿児島出身だったか。九州生まれにしては性格というか声の張りはあまりなくて、性格は優しくしっかりしたいいやつだ。
「シミュレータだしな……」
一通り乗りこなせる人間にしか分からないことだが、この戦術機のシミュレータは動かせる人間とそうでない人間とでは成績にはっきりと差が出る。初期動作までに時間が食われてるとその分成績から減点される訳だし、力量を抑えてある敵影に被弾してもやはり減点される。
戦場ではありえない設定が出来る。かく言う俺も、一対一の戦いってのをやっていた。実際、そう孤立することなんてないことだろうに。基本は大量機体対することの大量機体だ。
「柊、次は僕にやらせてもらうよ」
そういうと、中西はシミュレータ脇にあるパソコンに自分のIDを認識させ、中に入っていった。
これが日常、日常なんだ。何もくるってはいない世界という認識がある。
確かに、この状態じゃない日々は考えられんることはない。世界は緊迫した状態なんだ。
――――1999年〜2003年。
対黄色人種と白色人種との間で戦争が行われた。
ことの始まりは1999年の10月のこと、米ノ国へ稼ぎに行っていた中ノ国人が惨殺されることから始まる。人種差別という壁に起こる殺害の嵐だった。その中に、日ノ本の人間も多数含まれている。
怒りを露にする中ノ国人らは軍隊を率い、米ノ国へ進軍。ハワイ、マウナケア島を占領に成功、真珠湾を軍事拠点として展開する。(売楓作戦)
そのとき、日ノ本は戦争には参加せず。自国の防衛に徹した戦いを続けていた。日ノ本は二次大戦時に米ノ国に対し痛手を負っていた状態が続いていたためと、新兵器の情報が漏れることを防いだための状態だった。(このときの新兵器・戦術的二足歩行型戦闘機・略称・戦術機の新型機は現在日ノ本で全国配備の円空である)
戦争凍結状態であった多国の状態は一気に凍解し、火蓋は切られた。
2000年1月。米ノ国軍は戦術的核兵器の使用を決行。中ノ国の首都「北京」は完全消滅。衛星写真での確認後、更なる核攻撃を実行。次に軍事拠点だった(当時)重慶を消滅させた。(消滅させたとの言い方は、ここでは利用方法、または価値をなくすの意味で使っている)
このとき、ハワイ島が狙わなかった理由としては以下のものがある。
・米ノ国国民が少なからずも存在するため
・その島における重要な遺産を残すため
・文化を守るため
保守的な考えを持つ米ノ国人の考えることであり、以上のことによりハワイ島本土決戦は行われなかったとされている。
2001年8月。
硬直状態にあったと思われた世界が、一気に動きだす。
ハワイ、マウナケア島に拠点を置いていた中国がそこから米ノ国本土への決戦へと進ませた。(このとき、参加国は中ノ国、露ノ国、そして米ノ国と世界的大規模な領土を持つ国だけだった)
中ノ国は、戦術的核兵器を少なからず保有してはいたが、使えるほどの威力ではなかったため使われることはなかった。(ただし、このとき露ノ国では「ツァーリ・ボンバー」を使う計画を立てていた)よって、現在におけるまでも米ノ国人には被爆者はいない。(戦争での被爆者は、という意味での使用である)
2002年。中ノ国本土に米ノ国軍による三度の戦術的核兵器使用。このとき、戦争に参加していなかった日ノ本にもそれが投下される。
以下に理由を書く
・日ノ本には新型機が存在。それが脅威になるやも知れえぬかったため。
・有色人種の国であったため。
・当時、戦況下とはいえ日ノ本は少なからず中ノ国を支援していたため。
その年、日ノ本は京都、沖縄、九州、東海地方、北陸地方を除く全ての地区が焼け野原と化した。(タイルメイト作戦)その作戦により、日ノ本の人口が半数以上が死亡したと予測、その後日ノ本に攻撃は一切加えられることはなかった。
そして、2003年4月。
各国の戦争状態は再び凍結状態に入り、現在もなおそれが続いている。
………………。
「柊さん、柊さん?」
誰かに体をゆすられている。目を開けると、そこにはショートカットの女が立って、俺の肩をゆすっていた。
「ん……? 碑賀か……? なんだ?」
俺が起きるのをを確認すると、たとえようのない笑顔で、笑った。
「柊さん、こんなところで寝てたんですか? もうすぐ夕食の時間です、早く行かないと材料がなくなりますよ?」
そう、碑賀はいうと俺に背中を向けて去っていった。
シミュレータルームの壁がけ時計を探し、見てみれば、確かに六時半を過ぎていた。
材料がなくなる……?
「あ……」
思い出した。そういわれれば今日は――




