第一章・沖縄編1
薄暗い空間。照らし出される微弱な光はプロジェクターから映し出された擬似的な画面。
薄汚い絵が操縦桿を動かすことで、リンクして動く。
スティックは腕の動きを。ボールは指の動きを。そしてペダルは脚の動きを。
四点式のシートベルトで体は固定される。少し息苦しいぐらいだ。
敵機体が接近しつつ射撃。標的はこの機体。被弾。被弾。
脚部、頭部に命中。しかし、問題はない。日ノ本の戦術機は装甲に自身があるとはよく言ったものだと思う。たしかに異常は微塵にも感じられない。
それでも衝撃は走り、操縦席全体が小さく揺れる。ペダルを踏み、バランスを保つ。
攻撃に順番なんてものは存在しない。撃たれたら負け、撃ったもん勝ちだ。それは否定できない。確かに間違いないからだ。
「コマンド、RS起動」
そう音声認識を交わすと、制服の中に入っている信号が起動し、制服の筋がほのかに青く光る。軌道は正常、という意味だ。
RSは上半身、腰から上の動作を操縦者とリンクさせるというものだ。リアクションスイッチ、またはリアクションシステム。それが正式名称だ。機体の頭はアイゴーグルに合わせて動く。それで自分の手を機体の目を見比べて確かめる。確かに正常に起動している。
右胸のパッチにかけられている戦術機専用コンバット・ナイフを手に取り、逆手でと持ち変える。
ペダルは固定動作。固定された動きしか出来ない。走る、歩く、跳躍、しゃがむ。
二つのペダルを組み合わせれば、匍匐前進なんていうのも可能だ。
走りのペダルを踏む。機械の音が少し重たくなり、機体の模擬装置がゆれ始める。
右手はナイフを持つ形。時速は約40キロで走るこの機体は、大きく揺れながらも次第に敵機体へと近づいていく。
「……っ!」
接触する瞬間、右手を強く前に出す。当然ながら機体は同じ動きをする。
敵機体の胸部に狙い通り、ナイフで大きな傷をつける。ゆっくりとした模擬訓練だった。
シミュレータの訓練機体は揺れだけは大きく、敵の機体が著しく貧弱だという。
だからこんなものでも、多少のものはのれれば士気は沸くといった感じだった。




