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第44話 皇女の策略⑥

(さあ!いよいよ伊集院さんだ…)


タカシは期待と不安が入り混じった複雑な心境で入り口を見守った。


しかし扉が開き、するすると衣装が床に擦れる音とともに入場したその人物の姿を見て全員口から魂が飛び出そうになった。


そこには雄大でゴージャスな、しかし美しく眉間に皺を寄せたご機嫌が麗しくない女王様が立っていた。



全面に深紅の薔薇刺繍が施されたベルベットドレス。


金糸刺繍のスカートが大きく広がり床を擦り、ウエストは美しく細いラインが流れていた。


(く、苦しい…メイドどもめ…コルセットで滅茶苦茶きつく締めやがって…)


首元にはダイヤモンドとルビーあしらわれた超豪華な首飾りが揺れ、髪型はプリンセスドールと呼ばれる無数の縦巻髪が腰までゴージャスに垂れている。


目には透き通るような青いカラコン。


そして黒い斑点模様の白い毛皮を肩にかけ、巨乳であった。


(畜生…こんなバカでかい胸パッドを入れやがって!あいつら絶対ふざけてやがる…)


内心、伊集院は歯をギリギリ言わせていた。



田端は唇をプルプル震わせながら名前を読み上げた。


「ベアトリクス・ド・スチュワート・エリザベスさん 27才でよろしかったでしょうか?」


伊集院はそれを聞いて愕然とした。


(な、なんちゅう名前で登録してやがる…それになんで俺だけ外人設定なんだ…)


名前を館長に伝える時の西園寺のニヤニヤ顔を想像してはらわたが煮えくり返る伊集院。


しかしそれをぐっと飲み込み笑顔で答えた。


「ハァイ!ワタクシ、エリザベスでぇす!」


「ど、どちらから…参られたのですか?」


「グレートブリテンからキマシタ。ヨロシクネ!」


いたずらっっぽく首を横にかしげてウインクする伊集院。


(うぷ…もし 採用されてもずっとこのままなのよね…う…くく…うふふふふ…)


今後を想像して必死に腹筋をなだめる和子。




「な…なんとな!西洋おなごではないか!一体どういうことじゃ!」


平九郎は大音声で思わず立ち上がり、汗まみれの田端を睨みつけた。


「は、は、はい…しかし今回は募集要項に国籍要件はなしでありまして…」


「そういう問題ではない!ここは礼和の象徴たる殿下を奉る神聖な場所ぞ!礼和人でないものを入れるつもりか!」


「は、ひ、ふ……」


「答えてみよ!田端!」


「へ…ほ…」


田端は金魚のように口をパクパクさせている。


(やばい!館長がノックアウト寸前だ…)


慌ててタカシが割って入った。


「あの…名誉顧問…少しおよろしいでしょうか…」


「なんじゃ!山田男!」


「はるばる外国からお越しになられて、きっと何かご事情があるのでは…」


「何!事情じゃと?」


「はい。しかも何やら御身分もあるご様子…少しお話を伺ってみれば如何でしょう」


「ふん!こんな胸ばかりでっかい外人おなごに大した理由があるとも思えんが…まあ良い!」


平九郎は憤然としていたが、どかっと座り直して腕を組んだ。


「理由を喋ってみよ!」


(なんだよ…胸ばっかりでっかい、て…)


伊集院は釈然としない思いであったが、ここはチャンスと思い直して語り始めた。


「ワタシ身分高い姫デス。母国で身分高い人みんな偉そうデス。でも皇女様は身分高いのにお国のために犠牲にナリマシタ。普通身分低い人が高い人の犠牲にナリマス。皇女様逆デス。ワタシ見習いたいデス。勉強したいデス。だから国に内緒で来たのデェス」


最初ジト目で聞いていた平九郎の表情が若干緩んだ。


「ぬぬ!殿下に見習いたいと申すか!それは殊勝な心がけじゃの」


「ハァイ!」


「だがそれだけでは十分とは言えぬ…殿下に仕える以上礼和の文化にもある程度は通じておらねばならぬ。巨乳の西洋女よ!その証を立ててみよ!」



「礼和の好きな食べ物を言いマァス!」


「おう!食は文化の基本じゃ!言ってみよ!」


「高野豆腐が大好きデェス!」


「なぬ!」


「ごぼうとこんにゃくの煮物が好きデス!」


「なんと!」


「海苔の佃煮も大好きデス!」


「まことか!」


「しば漬けと高菜漬けでご飯3杯食べられマス!」


「ぐ…ぐおお」


「ナマコとホヤの三杯酢たまらないデス!」


「ふおおおお…」


「湯豆腐、白菜のお浸し、しじみ汁、鮒鮨、ひじきの炊いた物、味噌田楽、ぶりのあら炊き、ワンカップ横綱、みんなみんな大好きデェス!」




平九郎は机に顔を伏せてブルブル肩を震わせている。


「め、名誉顧問?」


タカシが心配そうに声をかけたその時であった。


平九郎は顔をガバッと 跳ね上げた。


「ひゃあ!」


びっくりしてのけぞるタカシ。


平九郎の顔は涙でびっしょり濡れていた。


「すまぬ…巨乳女…わしはお前のことを見くびっておった…今の話で充分分かった…お前は礼和国の真の理解者じゃ!」


「オソレイリマス」


カラコンの碧眼でにっこり笑う伊集院。


「しかし、何でじゃろう…お主のその強い目力…どこかで見たような…」


(い、いけない!)


思わず蒼白になり、口に手を当てるミニ和子。


「いかん、いかん。このわしとしたことが…年を取るといろんな記憶が入り混じる。よし…田端!待っている2人を呼べ」


「え!今お呼びするのですか?」


「何を驚いている。結果発表じゃ!早い方が良かろう!」


「は、はい」


目を白黒させながらも田端は待機してる2人を観覧室に呼んだ。





次回 結果発表 衝撃の結末!













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