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第41話 皇女の策略③

西園寺は2人に座に戻るように勧め、メイド達にティ―の用意を即した。


「どうぞごゆっくりお過ごしください。これから彼にこちらに来るように話をします」


「ええ!今…ですか?」


「はい。すぐに来ると思いますよ。採用の秘策が有る…と言えばね」


そう言うと西園寺は べっ甲と金細工が施された美しい受話器を取り上げてダイヤルを回した。




『何だ!その秘策ってのは!』


会話口からも伊集院の大きな声が漏れ出る。


「ふふ…それはこちらに来ていただければ分かりますよ」


『ちっ!相変わらず勿体ぶりやがって… 待ってろ』


ガチャンと電話を切る音が響く。


「ふう…相変わらず粗野な方ですね…」


「本当に来られるのですか?」


ティ―が進まぬ様子のタカシが尋ねる。


「はい。省庁はここからそう遠くはありませんからね。1時間もかからないでしょう」


そう言うと西園寺は一人のメイドに耳打ちした。


「かしこまりました」


メイドは満面の笑顔になるとそそくさと部屋を退出した。


「え…あの方は…一体?」


「はい。彼女にはあるものを用意するよう命じました。我が白鳳堂家にはあらゆるものが揃っております。きっと彼にも似合うはずです」


「彼?似合うもの?この待つ間に?」


怪訝な顔つきの2人に対し西園寺は優雅にマイセンのティーカップに口を当てる。




しばらくして巨大な木製の柱時計がボーンボーンと3時の時報を鳴らした時であった。


応接室の入口の向こうからメイド達の騒がしい嬌声が聞こえてきた。


「キャ―!龍磨様よ―!」

「ステキ―!今日もスーツがお似合いよ!」


「うるせえ !騒ぐな!」


「アア!相変わらず媚びないお方!」

「冷たい目つきが…またたまらないの!」


「あん!くっつくな!俺に触るな!」



「おっと。来たようですね…」


西園寺はメイドにドアを開けさせた。


苦虫を潰したような顔で伊集院がドカドカと靴音を鳴らしながら応接室に入ってきた。


「相変わらずお前のところのメイドは騒がしいな、毎回。なんとかならねえのか!」


「貴方は本当に人気者ですね。私では何とも…」


「ちっ!それで…一体どうするって話なんだ!あのじいさんは厄介だぜ…」


「全くせっかちですね…あなたは。皇女記念館の方々もお見えになっておられるというのに」


「なんだ?あの時の面接官じゃねえか」


2人は慌てて立ち上がり頭を下げた。


そして田端が切り出した。


「先般は本当に失礼をいたしました。実はどうしてもあなた方を記念館にお迎えしたくて…西園寺さんにご相談を申し上げていたところです」


「ふん。出来レースをやろうってのか…」


「あ…はい。お察しの通りです。そこでお願いと言いますか…誠に申し上げにくい事がございまして…」


「何だよ…早く言えよ!」


口ごもる田端に変わって西園寺が割って入った。


「今回の募集は女性枠限定なのです」


「ハァ!どういうことだ!ふざけてんのか!」


「最後までお聞きなさい。つまり女性であればあの名誉顧問も承諾済みということなのです」


「だから何だってんだ!いや…まさか…」


「はい。そのまさかです」


伊集院の顔が蒼白になった。


「貴様…俺に…女の格好をしろと言うんじゃないだろうな…」


「ご心配は要りません」


西園寺はにっこり笑った。


「女装するのはあなただけではありませんから」


そのセリフを聞いた途端、伊集院は能面のような顔になった。


「悪い。今回はパスさせてもらうわ…」


そう言って帰ろうとして振り返った途端、伊集院は硬直して動けなくなった。


数十人のメイドがその手にウィッグやブーツ、スカートなど女装用のグッズを持って出口をガードしていたからである。


そして中央にいたメイド長がバラの飾りがついた化粧箱を両手に持ち、伊集院の前に淑やかに進み出て心からの笑みを浮かべた。


伊集院は思わず後ずさった。


「龍磨様。何もお帰りをお急ぎになることはございません」


「そ、そこをどけ!」


「ええ。どきますとも。龍磨様が立派な貴婦人におなり遊ばしてから…」


「さ、西園寺!」


伊集院は救いを求める悲鳴をあげた。



「御諦めください。うちのメイドは言い出したら聞きませんから」


そう言って西園寺は紅茶をもう一口飲んだ。






次回  面接開始。一番手は瑠璃。

























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