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第3話 関取の恋

 その日いつものように皇女観覧席は賑わいを見せていた。


 その中にひときわ目立つ着物に髷姿の巨漢が二人姿を現した。礼和大相撲力士 薔薇錦バラニシキ地縛霊ジバクダマ である。


 礼和国は大相撲が大変人気がある。

 彼らは汗潮部屋の兄弟子と弟弟子であった。

 薔薇錦 は前頭1枚目、地縛霊は序の口の力士である。

 薔薇錦は 汗潮部屋の筆頭 力士で、その端正な顔立ちで女性人気も高い。


 地縛霊は、土地に縛られ動けない地縛霊にちなんで(お前も土俵から決して出ないような力士になれ)という親方の熱い思いのもと名付けられた四股名であった。

ただ地縛霊は頭頂部の髪が薄く髷が結えなかったため 、落ち武者のような髪型であった。


 ガラスの前で2人は和子を見ながら嘆息した。


「おう霊よ !皇女どんは誠に綺麗でごわはん!」

「はい!首ば離れても堂々とされておりもす!」


(力士の方って直に見ると本当に大きい)


 和子は巨漢が2人並んで仕切りに感心している様子を見てクスッとした。


「ところでこんな場で誠にすんもはんが、兄さに大切な話がございもす!」と地縛霊が真剣な面持ちで言った。


(一体何の話かしら)和子は聞き耳を立てた。


「大切な話?一体なんじゃあ、霊」薔薇錦は眉間にシワを寄せて地縛霊を睨みつけた。


「いつも兄さには 、おいにしっかり稽古を付けて頂ただき誠にありがとさげもす」


「おうよ!」


「稽古中の兄さの汗で光る背中がとっても綺麗だと思いました!」 


「ふむ?」


「そして汗に濡れた兄さのお尻もとっても綺麗だと思いました!」


(え!!お尻!?)和子は驚いた。


「尻だあ?霊よ !お前何言うとんじゃあ!」薔薇錦 は 地縛霊を睨んだ。


「すんもはん、兄さ。でもおいは自分の気持ちを隠すことができもはん。」


(うふっ。)和子の腹筋がピクッと動いた。


 地縛霊は頬と耳を真っ赤にして叫んだ。

「おいは! おいは!プライベートで兄さのちゃんこを作りたいです!」


(告白!くう-ふっふふ)和子は唇をかんだ。


 しかしそれを聞いた薔薇錦は険しい表情が一転して少女漫画の登場人物のようなキラキラ光る美しい眼となった。


「霊!ええよ!」


 薔薇錦はピンクの頬で優しく答えた。


「ごっつあんで―す!!」

 地縛霊は絶叫した。


(う、受け入れた!駄目、駄目、笑っちゃあ!)

 和子の腹筋が激しくピクついた。


 その時であった。「ガラスの仕切りの前での長話はご遠慮ください」タカシの声が響いた。


 二人の力士は慌ててたかしに頭を下げると 愛しげに見つめ合いながら、手をつないで退出していった。


 危機は去った。



 夜の記念館。


「陛下!本当にやばかったですよ! 僕はちょっと心配になってたまたま居たから良かったですけど…」

 タカシは少々おかんむりだった。


「ごめんなさい 。だってまさか 告白するなんて…うふふ」


「もう…笑っちゃダメですって!」


「ええ。これからは大丈夫。 気をつけるわ」

 和子はウィンクした。


 しかし また新たな試練が待ち受けているのであった。




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