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第37話  夢子さんのビデオテープ③

『キャイーン!』


激しく身をくねらせる夢子。


しかし夢子は急に神妙な顔つきになりスタンドマイクを前に舞台の中央に静かに立った。


『タカちゃん。最後にね…夢子…歌を歌っちゃう。一生懸命作ったの。《結婚してって言わないわ》…聞いてね…』


そう言うと突然アップテンポのバックミュージックが流れ出し、夢子は両手をくるくる交差させながら激しくダンスを始めて歌い出した。



―男子と女子は不思議だね♪

―30億 対 30億♪

―出会いがすでに奇跡なの♪

―運命なんて偶然じゃない♪

―きっと何かの巡り合わせ♪



ここで突然演奏が鳴り止み、夢子がダミ声で誰かのものまねを始めた。


『まあこの~、男と女の出会いちゅうもんはですな、誠に不思議なもんでございまして、人間の行動学から申しましても、まあこの~、単純に説明がつかんものであります!』


(何これ!田中閣栄?でもすごく似てる!)


タカシは、なぜ元総理大臣の物真似をぶっこんでくるのか全く不思議だったが、そのクオリティに唸らざるを得なかった。


『まあこの~、出会いは言い換えてみれば人と人との縁ですな、これは外交においても、国会の運営においてもひじょ~に重要なものでして、この世で最も大切なものと言っても差し支えはないわけですな。まあこの~私はこれを強く訴えるものであります!』


ここで夢子はピタリとものまねを止めると、また演奏が再開され、激しいダンスを伴う歌が再開された。


―夢子と素敵な誰かさん♪

―モップを持った王子様♪

―白馬の王子がいないなんて♪

―嘘.嘘.嘘ぴょん 嘘ぴょんぴょん♪



(モップ?)


ジト目になる和子。


呼吸が荒くなるタカシ。


―素敵な素敵な誰かさん♪

―とっても素敵な誰かさん♪

―ラブラブラブラブラブミードュー♪

―アイラブユ―ラブユ―ラブミ―♪

―でも結婚してって言わないわ♪

―分かって欲しいのこの心♪

―結婚してって言わないわ♪

―言って欲しいのわかるかな♪


夢子は最後のフレーズを繰り返す中、背景に驚くべき画像がスライドショーで映し出された。


それはタカシの記念館での様子であった。


―観覧者の案内

―売店で商品の陳列

―カフェでのレジ打ち

―展示物の並び替え

―ポスターの 張替え

―食堂での注文取り

―業務の合間の清掃


挙句に


―事務室で唇に米粒をつけて弁当を食べる様子


―更衣室で制服に着替える途中のパンツ一丁のタカシ


―トイレで立ち小便しているタカシの後ろ姿


等々夢子の歌をバックミュージックに次々と 映し出されて行ったのである。



タカシは白目を向いてブクブクと口から泡を吹き出した。


(ま、まさか…)


和子の顔が蒼白になる。



その時であった。


観覧室のドアがぎーっと開いた。


そして1人の女性が 節目がちに静々と中に入ってきた。



夢子であった。



和子とタカシは我が目を疑った。



彼女は白いシルクの豪華な肩出しウエディングドレスを着用していた。


裾の長さは10m 以上はあるであろう、それをするすると引きずりながら歩みを進める。


上品にまとめられた頭には真珠とダイヤが散りばめられたティアラが光る。


首には模造の大粒紫パールの首飾り。


両手にはブーケが持たれていた。


「えへへ…タカちゃん…夢子…来ちゃった…」


タカシは破裂しそうな心臓をなだめて声を絞り出した。


「ど、どうやって中に入ったんですか?鍵をかけてあったはずなのに…」


「あたし…合鍵作っちゃった…うふふ…やっと2人きりになれたね」


「だ…駄目です…不法侵入です…鍵を置いてすぐに出て行ってください!」


「まあ!つれないのね…でもビデオは見てくれたんでしょ…夢子の想い伝わったよね!ね!」


「み、見ました…だけど…」


夢子はそれを聞くと満面の笑みを浮かべて「ゼクシィ――!」と叫んだ。


彼女はさらに興奮状態で畳みかける。


「タカちゃん!じゃあ!じゃあ!《あの言葉》言えるよね! 聞かせてくれるよね! ね!ね!ね!」


「いえ…それは…」


「何故なの!」


「……」


「まさか…他に好きな人でもいるの!」


「い、いや!その…好き…とか…」


そう言ってタカシは無意識に後ろの玉座を一瞥した。


それを見た夢子は愕然となった。


「ま、まさか…皇女!」


夢子は血走った目で玉座の和子を睨んだ。



「ゆ、夢子さん!違うんだ!僕なんて…」



それを聞いて夢子は顔が般若に変化した。


「おのれ…皇女…死んでもなおタカちゃんを縛る気ね!許せ無い!」


(又…この展開…わたくし…何かした?…)


和子は以前の大佛殿艶子の顔を思い出しながら半泣き状態であった。


「ミラクル・ ティンクル・ちゅるるるるん!魔法の力で悪を討つ!皇女をこの手で無茶苦茶にしてやるんるん!」


夢子は叫ぶと玉座の間の入口に向かってダッシュした。


タカシは慌ててウェディングドレスの裾にダイブ。


夢子はガクッと前のめりに転倒して床に顔を打ち付け、前歯にはめてあった銀歯が外れてコロコロと転がった。




次回  意外な人物の登場











作品を読んで頂きありがとうございます。


もし面白いとお感じ頂ければご感想やお気に入り登録下さるととてもありがたいです。


宜しくお願い申し上げます。




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