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第29話 採用面接再び①

五月晴れが広がる気持ちの良い朝。


タカシは皇女記念館のエントランス前で思いっきり 深呼吸をした。


彼の顔は心なしか晴ればれとしている。


それもそのはず。


昨日、和子のガングロメイクがようやく直され、元の粛然とした皇女の姿に戻ったのである。




『わたくし…結構気に入っておりましたのに…』


和子は少し名残惜しそうだったが、タカシは心がスキップを踊っていた。




タカシが事務室に入った時、田端がネスカフェのインスタントコーヒーを啜っていた。


「おはようございます!」


「おはよう。おや…タカシ君、なんだか嬉しそうだね。なんか良いことでもあったの?」


「アハハ…いえ…特に何も…」


「そうかね。ところで経理の中村さんがまた体調悪くしてしまってね」


「え!中村さんが?」


「元々難治性の病気を抱えていたのに、代わりの人がいないから無理して出てきてもらっていたけど…いよいよダメみたいで…」


「そうですか…確かに 上映特別期間の売上はすごかったですからね…ずっと残業されていました」


「そうなんだ。だから急遽採用面接を行うことになってね。」


「ええ!」


「明後日の休館日だ。君にも出席してもらうよ」


「あうう…(せっかくの休みが…)」


脳みそが涙に濡れるタカシであった。





当日、タカシの予想通り、やはり観覧室に面接席が設けられていた。


出席メンバーは前回と同じである。



館長の田端


タカシ


パイ・フ―の着ぐるみ姿の平九郎



「め、名誉顧問!なぜそのお姿なのですか?」


目を点にするタカシを平九郎はジロリと睨んだ。


「わしの着ぐるみ姿はどうも人気があるようでな。殿下はお直しされたが儂はもう少し働かせてもらうよ」


(う!うふふ…平九郎…そんなに私をいじめて嬉しいのですか…)


すでに笑いの試練にさらされている和子。



「コホン…」と咳払いして田端は最初の志望者を呼んだ。


「では最初の方。どうぞご入室下さい」


「失礼します…」


涼やかで、しかし儚げな声が響き、華奢でスラリとした少年が入室した。


深々とお辞儀をして志望者席に着座する。


白鳳堂はくほうどう 瑠璃るりさん、でよろしかったでしょうか?御年齢は?」


「はい…17才です」


少年のピンクが映える形の良い唇から恥じらいを含んだ優しい声が放たれた。


サラサラの金髪に少し憂いを帯びた大きな瞳。


彼はシルクが艶めく詰襟の学生服を折目正しく着用していた。


黒の上質な生地に桜の花柄の刺繍が施されている。


礼和国最上位で限られたエリ―トしか通えない高等学校《国立帝国桜華学園》の制服であった。



(な、なんて可憐な少年……何故こんな方が応募したの?)


戸惑いながらも瑠璃に目が釘付けの和子。



(白鳳堂…まさか!あの由緒ある公爵家にして礼和国最大の財閥の御曹司!?)


息が荒くなるタカシ。



「学園での成績は常にトップをキ―プされて居られる…ご優秀ですね!」


履歴書を見ながら田端は感嘆を漏らした。


「い、いいえ…その様な事は…」


瑠璃は恥ずかしげにうつむく。


(か…可愛い!賢い!)


瑠璃から目が離せない和子。



「何故今回志願されたのですか?」


瑠璃は姿勢を正すと表情を引き締めた。


「僕は…国の為に身を捧げられた皇女様に常に思いを馳せています。一日も頭から離れる事は有りません。そんな中今回の募集を知りました。」


そして今までにない力強い口調で続けた。


「僕は皇女様の元で働きたいのです!お役に立ちたいです!お申し付けくだされば何だって致します!どうか僕を採用してください。よろしくお願い申し上げます!」


(なんて一途なの!綺麗なのに!可愛いのに!)


和子の脳内から天使の羽を生やしたミニ和子が飛び出し瑠璃の周りをくるくる回った。


田端はにっこり笑うと一つの質問を投げかけた。


「この記念館は、ディスティ二―映画上映から特別期間を設けています。売上は前年同期と比較してどれぐらい上乗せになっていると思いますか?大体の 想像で結構です。」


「う-ん…そうだなあ…」


瑠璃は人差し指を唇に当てながら少考して答えた。


「三億円ぐらいでしょうか。もうちょっとだけ上かな…えへ!判りません」


田端は驚愕した。


前年同期比の売り上げ増分は《3億1200万円》だったのである。


田端は一瞬の沈黙の後、咳払いをしてから質問をした。


「ど…どのようにして計算されましたか?」


「あ、はい…過去の来場者数と売上げは公開されていますから、記念館の最大の収容能力とかも計算して、それと比較して想像しました。」


(ちゃんと予習もしている!)


タカシは舌を巻いた。



それと同時に前回の面接を思い出して目頭が熱くなった。



――『何か特技を見せください』

『首が180度回ります』


――『1+1はいくらですか?』

『1+1!? うぐう!!うごおおお!ぐうううう!』


――『おはじきの数を数えて下さい』

『ひいは ひとつの観音様よ 観音様は陽楽寺』



パイ・フ―平九郎は眠るが如く腕を組んで静かに座している。



次回  パーフェクト 執事が現れる


「さ、西園寺!何故ここにいるの!」


「瑠璃ぼっちゃま…お遊びはここまででございます」





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