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第27話 《ガングロ皇女》記念館

映画《Princess Kazuko》の上映が始まってから約1ヶ月。


皇女記念館はかつてない賑わいを見せていた。


エントランスには映画キャラの立て看板が並べられて子供達が歓声を上げ、ホールにはサントラのメロディーが流されている。


1階ホールの一角にあるグッズ販売コーナーは大きく拡張され、映画に因んだ関連商品が大量に並べられている。


《Princess Kazuko サントラ CD》

《パイ・フ―・ぬいぐるみ》

《カズコフィギア・ドレスアップバージョン》

《四聖獣神具アクセサリー》

《ヨシクニの秘密の化粧箱》

《ライゼンバ―グ自慢の銃(水鉄砲)》

《慎之助の呪いの指輪セット》


など、手に取った観客の長い列がレジにできていた。



また忠国レストランでも期間限定メニューが用意され人気を博している。


《パイ・フ―の大好きな魚の丸焼きセット》

《魔道士ライス・スペシャルバージョン》

《皇女のチョコレートとサクランボのパフェ》

《アメリアナ風ビッグステーキ500グラム》

《グレートタイタニック号クルーズディナー》

など。


メニューの写真を撮るカップルや家族の姿も多い。



また、2階の特設展示コーナーでは『アメリアナの開拓史展』が開催されている。

その一角にある映像コーナーでは臨時でミニコンサートが催され、フォークソングやカントリー 、ジャズやブルースなどが日替わりで演奏され、リズムに合わせて踊り出す観客の姿もあった。


そんな中、タカシは夜の清掃作業に加え、館内の案内や販売店の手伝いもさせられ、魂が口からはみ出そうな状態であった。


今日もグッズの補充を終えたタカシは一息ついてホールに目をやった。


そこではパイ・フ―の着ぐるみのアクターが子供達に風船を配っていたが、何か違和感を感じた。


(いつもの人と違うのかな?)


気になったタカシは着ぐるみの正面に回って見て、目を丸くした。


着ぐるみの顔の中央に穴が開けられており、平九郎の顔が覗いていた。


「え!名誉顧問!」


「おお!山田男か」


「顧問直々に何をなされているんですか!」


「見ての通り風船配りじゃよ」


「そんな…アクターにお任せになればいいのに…」


「殿下も自らイベントを盛り上げる為に御身を張っておいでだ!この老骨もじっとしておるわけにはいかんであろう。ガッハハハ!」


(100歳を超えておられるのにこのパワー…)


平九郎のバイタリティに感嘆しきりだったが、(そうだ。和子様の様子はどうだろう…)


タカシは観覧室の様子が気になり足を向けた。





和子はあの平九郎の激昂事件の後、皇室庁の全面バックアップを受けてメイク直しが施された。


彼女は、当初顔に墨でも塗って髪を結い上げる程度の簡単なものを考えていたが、平九郎が『殿下の御尊顔を触るからには超一流に任せねばならぬ!』と全国からトップクラスのスタイリストとメイクアーティストが集められた。


結果、映画のカズコがそのまま画面から抜け出してきたかのような超ハイクオリティな 《ガングロ皇女》が誕生した。


しかもこれほどのメイクを施しているのに彼女の美しさや気品は全く損なわれていなかった。


『凄い!わたくしじゃないみたい!アハハハ!』


和子には大ウケだったが、タカシの胸中は複雑だった。


皇女には、常に礼和なでしこの象徴のような存在であって欲しいのである。


しかし そんなタカシの思いとはよそに、《ガングロ皇女》は良くも悪くも大評判を呼び、現在のような来場者の大幅増に繋がっているのである。





(いつにもまして凄い人だ!)


観覧室に足を踏み入れたタカシは巨大な空間を埋め尽くす人波に改めて嘆息する。


(あれ!何だあいつ?)


タカシは皇女のガラスケースの前に立つ一人の奇妙な男に目が止まった。




次回  ジャマイカ人が《皇女の真実》を語る



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