第22話 皇女 映画化される(夢と魔法の世界編②)
上映会の日の朝、タカシは連日の準備の疲れから寝坊してしまい、慌てて記念館に付いた頃には会場は満席で埋まり、『映画泥棒』のCMが流れていた。
「タカシ君、遅いじゃないか!もう始まってしまう!」
「すみません!」
田端に叱られながら、慌ただしく職員専用席に座ったタカシは、振り返って玉座席の和子の様子を伺った。
和子はタカシの顔を見るとウィンクした。
(皇女様!バレます!)
タカシは慌てて両手でバッテン。
「タカシ君。何してるんだ」
田端に問われ「何でも有りません」と慌ててスクリーンに顔を戻した。
ビ―という開始のブザーがなり、会場が一段と暗くなり、オーケストラによるメルヘンチックな壮大なオープニングテーマが流れ、画面いっぱいに山上に立つ美しい城が映し出された。
タカシは毎回このオープニングだけで鳥肌が立ってしまう。
そして静かに ナレーションが始まり、影絵によるプロローグがスタートした。
『それは遠い昔の物語。歴史ある東洋の島国レイワの皇太子ヒサヒトは西方の先進国アメリアナに留学しました』
ナレーションに合わせて人物の黒いシルエットで画面は進行していく。
『そこでヒサヒトは 美しい黒人女性ダイアナと出会い2人は恋に落ちます』
シルエットの男女が抱き合ってキスをするシーン。
『二人は身分の差や国の違いを乗り越えついに結婚します。そして2人の間には可愛らしい女の子が生まれました。皇女の誕生です』
オリエンタルな旋律が流れ出し、瓦屋根の和風の城を背景に《Princess Kazuko》の金文字タイトルが画面いっぱいに広がった。
皇帝ヒサヒトの誕生日の祝賀で湧く城下町の様子が流れ、城内の謁見の間にシーン が移る。
上段の間の玉座にヒサヒトと后のダイアナが2人並んで座し、諸侯や家臣の祝賀を順番に受けていた。
御満悦の皇帝だったが、突如声を荒げて叫んだ。
『加藤!加藤はおるか!』
『ハァイ!お呼びかしら!』
どぎつい真っ赤な口紅に超長いまつ毛、青髭がくっきりした刈り上げ白髪の中年臣下、加藤義国が身をくねらせながら燕尾服姿で登場した。
(うぷっ!これが加藤!こんな序盤から止めて。くくっ!)
いきなり腹筋に危機を迎える和子。
『カズコがおらんでは無いか!』
『そうなのよん…朝から姿がお見えになりません。義国困っちゃう…』
『皇女付けのお前がそんな事では困る!早く連れて来い!』
『ああ~ん!分かりましたわ!』
城内をあちこち探しながら見つからないカズコに苛立つ義国が、両手の甲を腰に当て胸をピンと張って
口を尖らせて嘆く。
『もう!皇女ちゃんったら!いつもこうなんだから!プンプン!』
一方、城の広大な敷地内の隅にこんもりとした小さな森があり、その中の、忘れ去られたかのような古びた祠が映し出される。
祠の中には、はるか昔に海を渡って礼和に来た皇祖神が祀られている。それはポリネシアンチックな女性の姿をしていた。
森の木の陰から黒い肌で腰まであるドレッドヘア―のカズコがひょこっと姿を現した。
『城内にこんな場所があったんだ…』
はち切れんばかりの好奇心に満ちた顔で、祠に歩み寄る。
祠の四方は、それぞれに青龍、玄武、朱雀、白虎の苔むした小さな像が置かれている。
『まあ!可愛い!』
和子はそのうち 西側に置かれている白虎の像に近付きそっと頭を撫でた。
『おい!何しやがる!』
像が喋った。
両手を広げて驚愕するカズコ。
次回 《パイ・フ―》登場。顔が平九郎 そっくり。




