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第21話 皇女の映画化(夢と魔法の世界編①)

寒明けの忠国記念館。


周辺の道路脇には所々に残雪。


まだ寒さが残るが、皇女の新しい装いは大きな話題となり、平日だというのに観覧室は普段では見られないほどの人数でひしめき合っていた。


「耳飾りが綺麗!」


「新しいブーツも素敵!」


「何だか皇女様“楽しそう”」


観覧者から途切れなしに感嘆の声が漏れる。


たかしは様子が気になって見に来たが、皇女の様子を見て顔をしかめた。


和子はいつものようにポーカーフェイスを決め込んでいるが、明らかに上機嫌で肌もツヤツヤなのである。


無言だが『私のブーツと耳飾りを見て』と言っている。


(不味いなあ…)タカシは気が気でならなかった。



その夜タカシは皇女に注意を促した。


「和子様…ご機嫌麗しいのがチョンバレです」


「ええ!そうなの…表情は変えていないつもりだけど…」


「はい。でも喜びのオーラで全身が輝いておられます。まずいです… はい…」


「まあ!そうなのですね!でも仕方ないわね。靴やアクセサリーは女性に魔法をかけるの。私のせいじゃないの。だから大目に見て。うふふ」


「うう…分かりました」


タカシは溜め息を漏らすしか出来なかった。



(靴は魔法をかける…か)


タカシはこの時何故かシンデレラを思い出した。


かって彼はこの物語をアメリアナ製アニメ映画で見ている。


戦後、礼和国にはアメリアナ製の映画作品が大量に流入した。


その中でアニメといえば《ディスティニープリンセス社》制作物が定番であった。


『夢と魔法に満ちたファンタジ―』を謳い文句にした数々の作品。


『白百合姫と7人の大人』『ビンバ』『101匹猫ちゃん』『アリババ』『プリンチェル』『ビッグ・マ―メイド』『タイガ―キング』『美男と野獣』などの名作が次々と走馬灯のように頭に思い浮かぶ。


タカシは激しく頭を振った。


(何故!今、ディステニーが?)


彼の脳裏に灰色の雲が渦巻いていた。




数日後、事務室で田端が壁に貼っているポスターを見てタカシは驚愕した。


《アニメ画のドレッドヘアーの黒人の少女と小さな虎(猫?)が笑顔でグ―タッチしており、それを両手を広げて見守る化粧の濃い燕尾服の中年男性》という絵面に


『この春ディスティ二―が送る最高のプレゼント』


『Princess Kazukoの愛と夢のファンタジ―』


などの文句が躍っている。


「ま、まさか…ディスティ二―で映画化ですか!」


ポスターを貼り終えた田端が額の汗を拭いながら

「そのまさかだよ」と答えた。


「でも…今度はここで上映は無いですよね…」


「いや!今回も上映会を行う。皇室庁の指示だ」


タカシは心の中で悲鳴を上げた。


「マジですか!でも名誉顧問は前回でもう止めと仰っておられた気が……」


「それが不思議なんだが、『アメリアナとの関係深化の為、耐えねばならぬ』と言い出されてな。」


(しまった…なんちゃって降霊が効きすぎてる…)


「だから 前回の倍の2000人を集めなくてはならない。今度も忙しいぞ!」


「ぐほっ!…」


タカシは魂を吐き出しそうになった。






程なくして、各メディアにて正式発表が華々しく行われた。



題名『Princess Kazuko(礼題:黒桜姫)』


──"手を取り合って"──


【作品概要】


監督:ジョン・オスカ―(『ビッグ・マ―メイド』『イワナと伝説の川』『アリと雪の大王』)

脚本:ロン ・クレセント

音楽:アレン・メンケン

制作:ディスティ二 ―プリンセス・スタジオ

公開予定:今年春 全世界同時ロードショー


【ストーリー】


それは遠い遥か昔の出来事


東洋の美しい国レイワの皇太子がアメリアナに留学した時、現地の美しい黒人女性ダイアナと恋に落ちました。


周囲の反対を押し切り 2人は結婚。


可愛い女の子を授かり『カズコ』と名付けられました。


カズコは美しく成長し黒桜姫と呼ばれます。


そんな彼女を暖かく見守るのが忠臣《加藤》と守護神の《パイ・フ―》。


ある日礼和国を訪れたアメリアナの青年将校ライゼンバーグはカズコに一目惚れします。


しかし邪悪な魔道士斑目慎之助の企みでアメリアナとレイワは戦争に…。


2人はこの危機にどうやって立ち向かうのでしょうか……



【礼和語吹替版 主要キャスト】

  

カズコ(芦田真菜)   


ライゼンバ―グ(木村卓也)


加藤義国(三輪明弘)


パイ・フ―(山寺広二)


ダイアナ(澤城ゆきみ)


エンペラー久仁(大塚昭男)


斑目慎之助(宮野守)



【特報ナレーション】


《信じる心が、奇跡を起こす!》


《奇跡は、ここから始まる!》


《語り継がれる、真実の物語!》



上映が間近に迫った夜、連日の準備でへばるタカシに和子は声掛けした。


「本当にお疲れ様…わたくしも手伝いましょうか」


椅子でぐったりしていたタカシは跳ね起きた。


「と、とんでもございません!元気いっぱいです!」


「本当に?無理は行けませんよ…」


「はい、大丈夫です。ところで皇女様はディスティ二―のアニメを見るのはお初めてですよね?」


「ええ。礼和に紹介されたのは、わたくしが記念館に入ってからですもの。でも夢と魔法のファンタジ―がコンセプトなんでしょう!すごく楽しみ!」


それを聞いてタカシは顔を曇らせた。


「ええ、今迄は確かにそうだったんですが…最近のディスティ二―はちょっと変というか…」


「変?」


「ま、まあ僕の気のせいで有れば良いのですが…」




外には初春の嵐が吹き荒れていた。



次回 ディスティ二―版映画《Princess Kazuko》開演!






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