第11話 カラスが三羽寄れば犬もキャンと鳴く
先日の大騒動からの1ヶ月後。
本日の皇女記念館は休館日であったが、二人の作業服を着た男性がタカシに案内されて観覧室に入ってきた。
彼らは、大佛殿艶子と豆柴誠也がめり込んで出来た壁の穴の補修を依頼された関西の施工業者(倒壊工務店)である。
「どえらい穴でんな」
坊主頭にまん丸の目が愛嬌の職人、三吉三吉が唸った。
「ごっついのう。どないしたらこないになるんや」
ポマードで頭髪をガッチリ固めた ブルドッグ 似の社長 剛田剛も嘆息した。
「どうですか…なんとか治りそうですか?」
たかしは不安そうに尋ねた。
「まあ今日のところは一通り現状確認させてもらって 、改めて準備して来さしてもらいまっさ」
「そうですか。また何かありましたら 事務室におりますのでお声掛け下さい」
タカシは2人と別れた後事務室に戻った。
そこには館長の田端と脱糞馬場がいた。
「馬場さん !今日は休みですよ。なぜいるんです?」
「おったらあかんのかいな!わたいはここの職員やねんで!」
そう言いながら くちゃくちゃ と丸い焼き菓子をうまそうに頬張っていた。
「それは?どら焼きですか?」
「何がどら焼きやねん!これは阿闍梨餅や!」
「阿闍梨餅?」
「ハア―、情けない。阿闍梨餅を知らんとは…京都の知り合いから送ってもうたんや。まあ 1個食べてみ」
そう言ってどら焼きよりも少し小さめのそのお菓子を 手渡された。
「ありがとうございます。 頂きます」
そう言って頬張ると、皮は薄いが中はもっちりとしていて甘すぎず餡の味が前面に出ている。
「美味しい!」
「当たり前や!阿闍梨餅は世界のお菓子を終わらした 存在やさかいな。」
そう言って歯がまばらな口を開けてかっかっかと笑った。
「馬場さんは我々のためにお菓子をわざわざ お持ち頂だいたんだ。ところで上の様子はどうだった?」と館長が尋ねた。
「今日は下見だけみたいです。 でも何故わざわざ大阪の建築会社に頼んだんですか?」
「東郷特別顧問のお知り合いの業者らしいんだ。(倒壊に頼め)と一言だよ。工事の腕は確からしいんだけど…」
「だけど?」
「会話が独特らしいんだよ。変な言い回しを多用したりして。意思疎通が大変らしいんだ。」
「そうですか…」
タカシは何か嫌な予感がした。
一方観覧室では2人の現地確認が進んでいた。
二人は職方らしく声がでかい。
誰もいない 観覧室に会話が大きく響き渡り、和子の耳にも 丸聞こえ であった。
剛田が穴の周りに発生している亀裂を見て叫んだ。「なんやこのクラック! 天井裏まで行ってもうてるで!もしかして 天井もめくらなあかんのか。」
「こいつは いわゆる(カラスが三羽寄れば犬もキャンと鳴く)いうやつでんな。心してかからんと」
三吉が頷いた。
(「カラスが三羽寄れば犬もキャンと鳴く」そんなことわざ あったかしら??)和子は首を傾げた。
続けて剛田は穴の中に電気配線の切れ端を見つけた。
「電配もやられてるで。これ何の線やろ?」
「エアコンちゃいますか?ちょっと細めやけど」
「そやな 。でもこれ前の規格やで。6.4 ちゃうか!
今 12.5 やで」
「こいつはまさしく(隠れイタチの数珠返し)ですわ。やばいでっせ!」
(これも聞いたことない!一体どんな意味!?)
和子の腹筋がピクッと動いた。
さらに剛田は穴の裏側を覗き込んで叫んだ!
「アスベストが吹いてるやないか!聞いてへんでこんなん!」
「そいつは(リャマの皮を被ったアルパカ)ちゃいますの!めんどくさいことになりましたな!」
(リャマの皮をかぶったアルパカ!? ぷ、くく!!似たようなのが出てくるのね…)
和子の腹筋がピクピクする。
「三吉!担当者呼んでこい!」
剛田は叫んだ!
呼ばれたタカシは2人に食ってかかられた。
「こんなん(白目うさぎの化粧遊び)やないか!話が違いまっせ!」
「白目うさぎの??ええ?一体 意味が?」
タカシは目を白黒させた。
(又わからないのが出てきた!ふふふふ!)
和子も謎のことわざにはまりだした。
社長は ますます ヒートアップした。
「(次郎狸も出戻り嫁は三度まで)や!なめたらあきまへんで!」
「???」
タカシは半泣き 状態。
(や、やめて!うふふふふふっ!)
和子は腹筋崩壊寸前。
その時であった。
「ええ加減にせんかいな!」としわがれた 怒鳴り声が響いた。
全員が観覧室の入り口を見ると馬場が両手を組んで怒り顔で立っていた。
「あっ!脱糞のおばば!」と2人が同時に叫んだ!
「あんたらも礼和国民やったら四の五の言わんとやりんかいな!(烏滸沙汰ねずみは猫も舌を出す)やで!」
「(烏滸沙汰ねずみ)言われてしもたら辛いなあ…」
2人はしょんぼりした。
「(ついでの鳩も梅の実は吉兆)やないか!元気出してやり!」
「なるほどそうでんな!」三吉が頷いた。
「行かせてもらいます!」剛田が了解した。
工事は進められることとなった。
タカシは煙に巻かれたようだった。
夜更けの観覧室。
「(カラスが三羽寄れば犬もキャンと鳴く)ですわよ!」
「殿下…ご勘弁ください。まだ 訳が分かりません…」
「あははは!」
「しかし馬場さんって何者なんでしょう?2人は知っていたようでしたが…」
タカシは首をひねった。
「そうね。二人も一目を置いていた感じがしたわ。(ついでの鳩も梅の実は吉兆)なのかも!」
「だからもうそれはいいですって!」
広い観覧室に響くのは2人の声だけであった。
次回 和子の偽物が現れる。




