序章
—ここは「礼和国立忠国皇女記念館」
国を救う為に 首を切断して命を捧げた和子第二皇女が祀られている。
彼女は3階の大観覧室で、ガラスケースの中で巨大な金屏風を背に自らが展示物として玉座に鎮座していた。
彼女は格式のある儀礼用軍服姿で、右脇に自らの生首を抱えていた。
艶のある長い黒髪に涼やかで凛とした瞳。
皇女は展示物として完璧な美しさを纏って座っていた。
国民には(心が失われた美しくもおいたわしい存在)として扱われていた。
だが、実は彼女にはしっかり感情があったのだ。
でも、ある理由があってそれを悟られる訳にはいかなかった。
(それなのに…うう…)
――その日も彼女はピンチに陥っていた。
(う、うふっ!も、もう駄目!腹筋が持たない!うふふふ!)
ガラスケースの前。
正座したまま固まっていたのは、
真っ赤なブラジャーとパンティー姿の侍である。
下着のブランドは《ワコール》である。
その男が、ビクッと肩を跳ねさせ、振り向いた。
「ば、馬鹿な!今皇女様が笑ったような…」
和子は慌てて無表情を装った。
侍は血走った眼で下着姿で皇女を睨んでいる。
(しまった!ばれちゃう!)
彼女は火の様に焦った。
今回で何度目の危機であろうか。
何故こんな目に会うのか!?
(わたくしの笑いの沸点が低いのが恨めしい…)
これから語るのは、決して感情を悟られたくない皇女が数々の悪意のない笑いの刺客を前に腹筋崩壊を耐え忍ぶ苦難の物語である。




