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癒しの一皿、語らいの杯

(対談が終わり、舞台のライトが柔らかく落ち着いた色に変わる。

円卓の中央にはクロスが敷かれ、それぞれの対談者が選んだ料理と飲み物が美しく並べられていた。

先ほどまで重々しかった空気は、まるで家族の食卓のように和やかになっている)



---


【ヒルデガルトのハーブと蜂蜜の饗宴】


ヒルデガルトが選んだのは、カモミールとレモンバームのハーブティーと、

蜂蜜とナッツのパン・トーストにラベンダーの香りを添えた焼き菓子。


ヒルデガルト(にっこりと):

「これは“心の静けさ”をもたらすお茶です。

そしてこのパンは、“viriditas”を感じる朝の祈りの味。」


ナイチンゲール(一口かじって目を見開く):

「これは……ほっとしますね。まるで教会の庭で風に包まれているみたい。」


パラケルスス(口を開けながら):

「ちょっと甘すぎるな。俺の舌には“魂の蜜”が濃すぎる。」


ヒルデガルト(微笑んで):

「毒と薬は紙一重でしょう? あなたの言葉そのものですね。」



---


【パラケルススの苦くて熱い“賢者の一杯”】


パラケルススは、ハーブの根と黒胡椒、ワインを煮込んだスイス風“メディカル・グリューワイン”と、

石焼きの燻製チーズと塩漬け肉の薄切りプレートを用意。


パラケルスス(ニヤリと):

「このグリューワインは“心を覚醒させる”毒だ。飲めば頭が冴える。飲みすぎれば寝るぞ。」


華佗(少し顔をしかめて):

「これは……肝に強すぎる。気が逆流しそうです。」


パラケルスス:

「それが“治療”だ。ちょっと混乱させて、再構築する。哲学も身体もな。」


ナイチンゲール(そっと口をつけて):

「……熱くて、痛くて、でも目が覚める味ですね。あなたにぴったりです。」



---


【ナイチンゲールの看護飯:滋養のブロスと麦パン】


ナイチンゲールは、根菜と豆、鶏肉の滋養スープ“ブロス”と、

粗挽き全粒粉で焼いた、香ばしい麦パンを持参。


ナイチンゲール:

「これは、私がクリミアで兵士たちに出していたスープを再現したものです。

水と塩と時間がすべてです。」


ヒルデガルト:

「まるで“聖餐”のようなスープですね。内側から命が湧いてくるようです。」


パラケルスス(意外にも満足そうに):

「……こういうのを“薬”って言うんだよな。味気ないが、腹には優しい。」


華佗:

「身体の“根”を温める味だ。五臓六腑が喜んでいる。」



---


【華佗の五行膳:気を巡らせる茶と軽食】


華佗が用意したのは、なつめと生姜、薄荷のブレンド茶と、

蓮の実と百合根を使ったあたたかい粥、五目蒸し団子。


華佗:

「これは“気の巡り”を整える膳です。

食べることは、治療の第一歩。」


ナイチンゲール:

「繊細ですね……私の粗野なスープが恥ずかしくなってきました。」


華佗(微笑む):

「いえ。スープは“人の心を包む”食事です。

これは“静けさ”を取り戻す食事。役割が違うだけです。」


パラケルスス:

「この団子、口の中で消えたぞ……こんなに柔らかいのに、芯がある。

お前の話に似てるな。」



---


【交差する笑いと、最後の一杯】


(料理を口にしながら、彼らの声が少しずつ砕けていく)


ヒルデガルト:

「ねえ、もしこの4人で診療所を作ったら、どうなるかしら?」


パラケルスス:

「俺が薬の調合、あんたが魂の相談、ナイチンゲールが全体管理、華佗は……気の巡回係か?」


華佗(真顔で):

「まずはあなたの“怒り”を巡らせるところから始めます。」


(皆、声を上げて笑う)


ナイチンゲール(ティーカップを掲げながら):

「では――この奇跡の出会いに、そして“癒し”を探し続けるすべての人に。」


全員:

「乾杯(Cheers/Salut/Ganbei/Prost)!」


(カップが鳴り合う音が、やわらかく響いた)



---

アスクレピオス:

「癒しとは、きっと、こんな風に“ともに笑える”瞬間にも宿るのであろうな。医学の未来は明るい」


(笑顔を浮かべ、盃を軽く差し上げる)

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