表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/10

エピローグ:癒しの余白にて

(照明が少しずつ落ち着いた温かみのある光に変わる。

舞台中央の円卓はそのままに、対談者たちはそれぞれ椅子に背を預け、やわらかな余韻に包まれている)


(あすかが静かに立ち上がり、会場を見渡す)



---


【司会・あすかの振り返り】


あすか(ゆっくりと語る):

「今夜、私たちは時を超えた対話を通じて、“癒し”と“医学”という言葉の奥深さに触れました。

病とは何か、癒しとは何か、科学と霊性は共存できるのか――そして、

“本当の医学”とは何か。

その問いに対する答えは、一つではなく、誰か一人だけが持つものでもない。」


(少し間を置いて、対談者の方を見ながら)


あすか:

「だからこそ、ここに集まってくださった皆さまが、互いの声に耳を傾け、

時にぶつかりながらも、歩み寄ってくださったことに――心から、感謝いたします。」



---


【ヒルデガルトの感想】


(ヒルデガルトが立ち上がり、両手を胸の前に重ねて一礼する)


ヒルデガルト:

「この場は、まるで祈りのようでした。

声が交わるごとに、心が澄んでゆきました。

私の中で、医学とは“神の声を聴く術”ですが――

今夜、それが“人の声を聴く術”でもあると、気づかされました。」


(ナイチンゲールが微笑む)



---


【パラケルススの感想】


(パラケルススは立ち上がらず、椅子に深く座ったまま、腕を組みつつつぶやく)


パラケルスス:

「ふん……面倒くさい時間になると思っていたがな。

悪くなかった。

俺は相変わらず“理”を信じる。だが……心が、理より先に動く時もあるってことは、

今日はちょっと、認めてもいい。」


(彼の隣で、華佗が静かに笑う)



---


【華佗の感想】


華佗:

「医術をめぐる対話が、これほど“心”を通わせるものだとは思っていませんでした。

私は昔、戦乱のなかで多くの命に触れました。

あの頃、こんな風に“言葉”を交わせていたら――もっと多くの命を救えたかもしれません。

……ありがとう。とても、静かな時間でした。」



---


【ナイチンゲールの感想】


(ナイチンゲールがすっと立ち上がり、手帳を閉じながら語る)


ナイチンゲール:

「統計や記録だけでは、人の痛みを完全には捉えられません。

今日の対話は、“数値にならない人間性”を可視化する試みだったと感じます。

私はこれからも、科学の力を使いながら、

人を“数字”ではなく“存在”として見る看護を信じていきます。」



---


【対談者同士の言葉の交差】


(ふと、ヒルデガルトがナイチンゲールに向かって微笑みながら)


ヒルデガルト:

「あなたの看護の中には、神の優しさが宿っています。

あなたこそ、この時代の修道女です。」


ナイチンゲール(少し照れたように):

「私は、あなたのように神と語ったことはありません。

でも、患者と向き合った瞬間に、確かに“祈り”は生まれます。

その感覚は、きっと私たちの間でつながっているのだと思います。」



---


華佗(パラケルススに向かって):

「あなたの“火”が、私の“静けさ”をかき乱しました。」


パラケルスス(苦笑して):

「お前の“静けさ”が、俺の“火”を鎮めたよ。」


(互いに小さく頭を下げる)



---


【あすかによる結び】


あすか:

「皆さま、本当にありがとうございました。

この場は、たった一夜の出来事かもしれません。

けれどここで交わされた言葉は、

医療にたずさわる者だけでなく、誰にとっても、“癒しとは何か”を問うきっかけになるはずです。」


(観客席に灯りが戻り、聴衆の表情が静かに浮かび上がる)



---


【最後の言葉】


(舞台が徐々に暗転していく。その中で、アスクレピオスの声が、遥か上空から穏やかに響く)


アスクレピオス(回想のように):

「癒しとは、分かたれたものが再びつながること。

それが、医学の原点にして終着点だ。」



---


(完全に暗転し、舞台に浮かび上がる一文)


> 「すべての命が、癒しの光のもとにあるように」




(静かな音楽と共に、幕が閉じる)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ