ラウンド4:本当の医学とは?
(舞台が再び照らされる。中央の円卓には柔らかな金色の光が注がれ、まるで黎明のような空気に包まれている。
対談者たちは静かに座り、あすかが中央に立つ)
あすか(司会者):
「これまで、私たちは“病とは何か”、“癒しとは何か”、“科学と霊性は共存できるのか”を語り合ってきました。
そして今、この舞台が最後に問いかけるのは――“本当の医学とは?”です。」
(あすかが一枚の透明なガラス板を掲げる。その中央に、淡く浮かぶ言葉)
> 本当の医学とは、命に何をもたらすのか?
(ヒルデガルトが静かに目を閉じ、最初に語り出す)
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【ヒルデガルト】
ヒルデガルト:
「本当の医学とは、“神の秩序を思い出させる営み”です。
病は魂が世界との調和を失った証。
医学はそれを癒すための、“再び世界とつながる扉”です。」
パラケルスス(静かに目を開き):
「…詩のようだな。だが今回は……少しだけ、うなずける。」
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【パラケルスス】
パラケルスス:
「俺にとって、本当の医学とは“自然と人を見抜く力”だ。
それは薬の調合でも、理論の探究でもなく、“人間の本質を見抜く眼”だ。
なぜこの人が苦しむのか。なぜこの毒が薬になるのか。
その“なぜ”を問い続ける勇気、それが本当の医学だ。」
ナイチンゲール(うなずきながら):
「問い続ける……それが、私たちの共通点なのかもしれませんね。」
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【ナイチンゲール】
ナイチンゲール:
「私にとって、本当の医学とは“人の尊厳を守ること”です。
清潔な環境、正確な情報、思いやりのある言葉――
それらは、すべて“患者が人間らしくいられる”ために必要なのです。」
(ヒルデガルトが手をそっと胸に当てる)
ヒルデガルト:
「あなたの看護は、祈りのように静かで、確かで、強い。
それもまた、医学の“魂”ですね。」
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【華佗】
華佗:
「本当の医学とは、**“生きることの流れを正す術”**です。
それは、病をただ消すことではありません。
気の巡りを整え、身体と心を調え、“その人らしく生きる力”を取り戻すこと。
医術とは、“人が人として生き直す道”を支えるものなのです。」
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(あすかが一歩前に出る)
【対談者たちの対話】
あすか:
「では、もし“完治できない病”に出会ったとき……
“治らない”と分かっていても、それでも“医学”は意味を持ちますか?」
(全員が一瞬、沈黙する。そして、ナイチンゲールがゆっくり答える)
ナイチンゲール:
「意味はあります。
“治らない”と知ったそのときから、“癒す”が始まるのです。
痛みを和らげる、話を聴く、寄り添う――そのすべてが医学です。」
パラケルスス(低く):
「……そのとき医者は“神”じゃなく、“人”になるのかもしれんな。」
ヒルデガルト:
「“神”ではなく、“神の器”として、愛を注ぐ者。
それが、私の思う医者の姿です。」
華佗:
「医は“術”であり、“道”でもある――
歩き続ける者だけが、癒しに近づける。」
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【ラウンド4 締めの言葉】
(4人の言葉が交差し、静けさが戻る。あすかが舞台中央で深く一礼する)
あすか(穏やかに):
「本当の医学とは、“命を数字ではなく物語として見ること”かもしれません。
そこには、科学も、霊性も、知識も、愛も宿る。
――そしてそれは、この対話そのものだったのかもしれません。」
(舞台がゆっくりと暗転し、静かな音楽が流れ始める)