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漆黒の甲冑とユニコーンとニキビ面少年

作者: 来栖雅之

ファンタジーにしましたけど、どっちかっていうとホラーに近いかもしれないです(笑)非現実なのは間違いないですけどね。


 聖なる一角獣「ユニコーン」の彼が、甲冑を身に纏った男を運んで、やって来た。

 何処にかということが、一番の問題である。甲冑とユニコーンは、町の一角の、公園にやって来たのである。

 公園といってもそこはただの空き地。何の遊具も設置されておらず、それ故に、子供たちが草野球をするための場として利用している。

 あるニキビ面の身長の低い男の子が、その日も草野球をするべく、体に合わない大人用のママチャリを必死に漕ぎながら、その何も無い公園に訪れる。

 普段ならば、何時だって彼が公園に一番のりである。

しかしその日は違った。

「……」

ニキビ面の少年はポカンと、薄い唇をポッカリ、空洞にしてしまった。言葉が出るわけもなかった。

純白過ぎる一角獣が、甲冑を纏った勇ましい男を乗せて、ドタバタとやかましい音を立てながら、広めの公園を走り回っている、光景。

幼い彼の目の前に展開されたそれはあまりにも、衝撃的で、非現実的だった。

少年はどうしようかと思った。

まず彼の内部で恐怖と興味の二つが渦巻いて『混乱』が生み出されていた。

身動き一つ取れない。カチンコチンでペダルを踏む気力すらも湧いてこないような気が、彼にはした。

しかしドタバタとそれが走り回っている様子をしばらく眺めた後、彼は何か、突然「ハッ」とした顔をした。

「やばい、やばいよこれ、やばい、やばい、やばいよこれ」

あまりにも気が動転してしまっている。彼は周囲の民家をキョロキョロ見回して、誰か他人にもこの非現実を共感してもらおうとしたが、どうにも、一人も見当たらない。草野球を一緒にやる友達の来る方角を、呆然としながら見つめてみたりもしたが、一向誰も来ない。

「やばいよ、やばいやばい、やばいよ、やばい、やばいよこれ」

ずっと言い続けている。いい加減に誰か来ないと、このニキビ面の少年は窒息死してしまうかもしれない。

と、そんな時。ユニコーンの蹄の鳴らす、砂地を蹴り上げる音が、ニキビ面の少年の耳に、大きくなって聞こえた。

どんどん大きくなるそれに危険を感じた少年が目のに顔を上げた瞬間、ユニコーンと漆黒の甲冑が、ニキビ面の少年の目の前に。

少年の前に圧倒的存在感でそれが、襲い掛かって来ていたのである。

「あ…」

驚きを言う間もほぼない。銀色の刃。夕陽を吸い込んで燈に煌く一刃が、少年に向かって、振り下ろされた。

――シュ。

空気を切るような軽快な効果音。それは少年の柔い肉体を切り裂く。

…少年はそういう未来を想像していた。

だが非現実な現実は少年の肉体を切り裂いたりはしなかった。

非現実な、ユニコーンと漆黒の甲冑。その燈の一刃はニキビ面の少年の乗っていた、体に合わないママチャリを、完膚無きまでに鉄くずに変えたのである。前輪も後輪もペダルもチェーンもベルも全て纏めて一刀両断。甲冑戦士の一撃でぶち壊された。公園の入り口で巻き起こる大スクラップ劇。それを眺める第三者はニキビ面の少年以外はいない。

その一刀両断の衝撃は、ニキビ面の少年の体を宙に吹き飛ばした。彼は空中で二転、三転しながら舞い上がる。

彼は死ぬと思った。宙で見える彼の視界に、民家の二階に干されている洗濯物。ピンクのバスタオル、オヤジのステテコ、誰かの体操着…。

「俺の人生、おわた。」

重力に引っ張られて、彼の全身がスピードをつけたまま、地面に叩きつけられる。

景色が暗転する。


目が覚めた。

夢だった。

なんだ、よかった。


公園のすぐ近くに彼の家はある。二階の彼の部屋からは、公園を見下ろすことが出来る。

安堵のため息をつきながら彼は、今が何時なのか知りたくなったが、目覚まし時計が止まっていた。

夕焼けが差し込んでいて、漆黒のテーブルを燈にしている。

ニキビ面の少年は甲冑を思い出して、少し身震いをしてから、しかし現実に帰ってきたことを思って安心した。

ふと、窓の外を覗いてみた。



漆黒の甲冑がいた。

その刃には、血のりが付いていた。


本当は長編にしようかと思って書き出したんですけど、面倒くさくなったんで短編にしました(笑)

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