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21 仏W杯 ある旅行会社社員の告発1

前回までに、ワタナベが東京の国際部デスクに対する不信を囲ったのが

ベネチア映画祭での「北野武監督取材」と「ダイアナ元妃の葬儀取材」であることは既に語った。


ワタナベにとってみると、その後も東京が冷たかった、というか、

相当信用が無かった事例をついでだ、語ろう。


1998年のサッカーW杯はフランスで行われた。

実は、この際にFIFAがW杯の、そしてそれを受託した組織の暗躍は、

案外知られていない。


これは、FIFAか、その受託業務を担った組織が、

アンダーグラウンドな世界にチケットを流したことを暴こうとした

馬鹿なワタナベが一蹴される物語である。


ある時、ロンドン在住の旅行業者でW杯チケットを担っている方から

相談があった。

「ワタナベさん、FIFAとその請負業者がチケットをヤミに(正規ではないルート)流していて、我々旅行業者が、既にお客さんに約束したW杯ツアーを提供できないかもしれない、チケットが足りない」


いやいや、そんな馬鹿な、と普通は思うのかもしれないが、

この方は、自分の会社のW杯ツアーが成立するかどうかのギリギリで

ワタナベにその状況を相談したのである。


そして、彼は殺されるかもしれない利権を前に、覚悟の上、報道を頼ったのである。


以前よりゲッソリ痩せて目の下には恐ろしいほどのクマ、あと一歩踏み出したら倒れそうな状況であった。


その方の情報によると、フランスの有名ホテルのロビーで、チケットが

自分のところに発行されるかどうか、多くの関係者が集まり待っているというのである。


ワタナベは今でいうバッテリーズのエースのようなアホではあるが

自分なりのアホの勘。

ロンドン支局のスタッフのアリスを偵察のため、フランスのその「多くの人が集まっている有名ホテルのロビー」に向かわせた。

彼女は「マイルのためなら何でもやる女」と言われる人間で、通常マイルのためなら仕事にかこつけてどこでも行くのであるが、彼女とてジャーナリストである。


偵察数時間、このマイルチャンピオンシップのアリスからは「JT」などの日本企業が、数時間に渡りその場所をうろついているという情報が入る。

アリスは日本人の偉そうな連中に「なぜここにいるのか」と聞いたのだが

彼らは口をつぐんだ。

言えないのである。

「チケットの割り当ての連絡を待っている」などとは。


アリスから連絡を受けたワタナベは、既に旅行業者の方から「チケットが足りない」と聞いている訳で、

フランスの有名ホテルのロビーで日本のスポンサーの人間たちがウロウロと連絡を待っている異常な状態自体が取材対象。


聞けば、日本の大手も含んだ旅行会社の多くがチケットを手に入れられていないという。


ワタナベは1998年のW杯直前に「各旅行会社がW杯ツアーでチケットが手配できているかどうか」

そのウラ取りを東京に求める。


東京が、各旅行会社に聞けば良いだけなのである。

(次回に続く)


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