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20 ベネチア洗面物語

前回の北野武監督の「HANABI」取材から2年後、ワタナベはまたベネチア映画祭に来ていた。

今回は黒澤明監督の遺作シナリオを映画化した小泉堯史監督の「雨あがる」の取材である。


ひと仕事終え、日本から来た映画買付の責任者の先輩Aと一緒にホテルに泊まり、朝起きると、陶器の洗面台の横に、同様の柄の陶器の洗面台が一段低い位置に置かれている。

なぜ洗面台が2つあるのか、顔を見合わせたのであるが、二人で宿泊したから二人用の部屋が用意されたのだろう。仕事前に先輩Aは高い方の洗面台で、ワタナベは低い方の洗面台で顔を洗い、レストランで朝食を取った。


荷物をまとめ、現場に先輩Aとともに向かう。

「雨あがる」は見事「緑の獅子賞」を獲得。

自分は先輩Aと別れ、すぐに近くに設営されていたプレスルームで、旧式の編集機で2~3分程度のショートストーリーにまとめ、東京へ伝送。

そのままロンドンへ帰ったのである。


数日すると、東京ではなんやらワタナベに関する噂が広まっているという。


先輩Aは帰国後「不思議なことに洗面台が2つ高低差をつけた状態で存在していた」という摩訶不思議な都市伝説として、それを妻に語ったところ、その低い方は「ビデ」なるものだということを初めて知った。


今となれば、それが何なのかは分かるが、当時は女性トイレにしか無かったのではないか?入ったことの無い我々男二人には、それが何か分かる訳が無いのである。


ところが。

ところがである。

先輩Aはあろうことか「ワタナベはビデで顔を洗って、恍惚の表情を浮かべ、陶器に顔をうずめクンクン匂いを嗅いでいた」と、ありもしない描写まで付けて言いふらしたのである。


第1話「『仙台出身者』は真冬でも寒くないとか」でも、その変態ぶりは格段であった評価されていたが、ベネチアでの経験を経て、東京でのワタナベの変態ぶりにはみな凄味すら感じていたと聞く。



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