未来予測器
「ふう、博士。これで完成ですね」
助手が完成した機械を前にしてそう言った。博士はうむと頷き、時間と金こそかかったがこれがあればそんなものはすぐに取り返してまた次の研究を始められると言って笑った。
いま博士と助手の前にあるのは、薄型のテレビになにか箱がくっ付いたような奇妙な機械だった。上部には画面が存在し、その下の箱にはなにやらたくさんのボタンが付いている。
「ではさっそくこの機械の性能実験をしてみましょう、博士。見るのは一分後で良いですか?」
助手の言葉に博士はうむと頷いた。それを確認してから助手はボタンを操作し始める。機械は軽い音を立てて作動し始めた。
この機械は、未来の時間を見ることが出来るはずの装置なのだ。いま助手は一分後を設定した。つまり画面には、一分後の部屋の様子が映されるはずである。
一秒後とも一時間後とも思える緊張の時間のあと、画面にははっきりと機械を覗き込む博士と助手の姿が映し出された。
「成功だ!」
と部屋の中に四人分の声が響き渡る。博士と助手の声、そして、画面に映る博士と助手の声だった。
博士と助手の二人は顔を見合わせると、お互いに首を傾げ、次に画面に顔を向けた。画面に映る二人も不思議そうな表情で、画面を見ている。
一分後を映すはずの機械は、正確に現在の状況を映し出していたのだ。
その後検証を行った博士はがっかりした表情でため息を吐いた。
この機械で未来を映そうとすると、映したい未来と同じだけの時間をかけてようやくその時間の映像が見れるようになるのだ。
つまり、一分後の未来を見ようとすると機械を動かし始めてから一分の時間をかけて演算を行い、未来のはずの映像が現在になったときにようやくその映像を見れるようになるのだ。一時間後を見ようとしても結局一時間かけて演算し、一時間後になってようやく一時間前から見たの一時間後の映像が見れるのだ。
「これじゃあただの使いにくいカメラですね」
助手の言葉はこの機械のことを適切に表していた。
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