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夜間専門学校に入学して5ヶ月が経ち、啓徳はそろそろ恋愛したいと思うようになる。しかし叶絵と別れて以来彼女がいなかったので、啓徳は恋愛のしかたを忘れてしまっていた。そんなとき同じクラスで3歳上の白川夢乃にマッチングアプリを勧められ、啓徳は軽い気持ちでマッチングアプリに登録する。
プロフィールを自分で書いてみたけれど、なんだか就職活動のエントリーシートのようだ。もう少しオリジナリティを出した書き方にしたい。そこで啓徳は夢乃にプロフィールの書き方も教えてもらうことになる。
「アプリで加工した、動物のフィルター付きの写真はダメ」
「これじゃ堅苦しいし就活みたいだから、絵文字とかも使って明るめな印象にして」
と夢乃からアドバイスを受け、啓徳はプロフィールに「公務員を目指す夜間専門学校に行っていること」「休日は友達と遊ぶことが多いということ」「色白で面白くて声が可愛い人と出会いたいこと」を記入した。
その後啓徳はマッチングした女性とやりとりを始める。しかし相手の求めに応じて顔写真を送るといきなりブロックされたり、今までやりとりしていた女性から「ここで彼氏できたのでやりとりできなくなりました。ごめんなさい」と言われたりして、なかなかうまくいかない。そんな中、19歳の大学1回生である敦子とマッチングする。
敦子は叶絵とは真逆の、ふわふわした可愛らしい女子大生だった。メッセージでのやりとりや電話を重ねるが、アニメっぽい感じの声で啓徳の好みに当てはまっている。啓徳は敦子をデートに誘ったけれど、敦子はやりとりを重ねてから会いたいとのことだ。そこでLINEを交換し、LINEや電話で1ヶ月間やりとりを重ね、実際に会うことになる。
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ついに敦子との初デートの日がやってきた。駅で待ち合わせすることになるが、啓徳は10分早く着いて敦子を待つ。すると、敦子が啓徳のところに向かってくるのがわかる。
「啓徳さんですか? 初めまして、敦子です!」
敦子は啓徳に明るく挨拶した。マッチングアプリでよくある写真と実物が違うといったことは一切なく、敦子は写真通りの可愛らしい人だったので、啓徳は敦子に一目惚れする。まずはカフェでお茶することにした。
啓徳はパンケーキとコーヒー、敦子はパンケーキと紅茶を注文する。それから2時間、お互いについて語り合った。なぜアプリを始めたかという話から、地元のこと、敦子の大学のこと、啓徳が夜間専門学校に入学した経緯まで。4歳下の女子大生にお金を払わせたくなかったので、啓徳は敦子の分も全額お会計を済ませる。