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地元には公務員を目指せる夜間専門学校は見つからない。しかし京都に目ぼしい学校があったので、啓徳は次の日曜日に開かれるオープンキャンパスに参加することにした。
その後の平日は仕事に集中する。土曜日の退勤後、啓徳は1度家に帰り夕食とシャワーを済ませた。持ち物などはすでに準備してあったので、母親に車で夜行バスのバス停まで送ってもらう。母親と別れた後はバスの時間までスマホゲーム(といっても課金なし)などをして時間を潰した。それからバスに乗り、京都まで向かう。隣の席には誰もおらず、啓徳は気づいたら眠っていた。
そんなこんなでバスは京都駅に到着する。コンビニのイートインスペースで適当に朝ご飯を済ませ、市バスで学校の最寄りまで向かった。約25分間バスに乗り、学校に到着する。受付に行き、「本日オープンキャンパスに参加する辰巳です」と名前を名乗った。周りを見渡すと制服姿の高校生が多く、啓徳はどこか浮いているような気分になる。しかし夜間部の説明会に参加した時、周りは20代以上の社会人っぽい人が大半だったのでそこまで気にはならなかった。模擬授業を受けてみて先生の教え方が分かりやすく、啓徳は「行くならここしかない」と強く思う。
帰宅後、啓徳は「今すぐじゃないけど、公務員を目指せる夜間専門学校に行きたい。京都だから1人暮らしすることになるけど、学費とか引越し代は自分の貯金から出すから」と両親を説得する。「そこで啓徳のやりたいことができるならいいよ」と快諾してもらい、学費くらいなら出すとのことだった。けれど啓徳はこれ以上親に負担をかけたくないと思い、その申し出を断る。なるべく自分で出したかったからだ。
翌日、啓徳は「福徳マネージャー、相談があるんですけど……」と福徳マネージャーを呼び止める。それから「専門学校に行く学費とか引っ越し代を貯めたくて、シフトを増やしてもらうことってできますか?」とお願いした。福徳マネージャーは「あーいいよ。ついに辰巳もやりたいことできたんだな」と了承する。それから啓徳は22歳になる年まで週に5日クリーニング工場でのアルバイトを続けた。
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22歳になった年の11月中旬に、啓徳は専門学校の入試を受ける。内容は面接と簡単な筆記試験だった。面接の練習は弟2人に付き合ってもらい、テスト対策もアルバイトの合間にした。緊張感があったけれど、対策はばっちりしたので大丈夫だと啓徳は自分に言い聞かせる。
12月上旬、啓徳は希望の専門学校に合格した。結果は真っ先に両親と弟2人に報告する。その日の夜ご飯は啓徳の合格祝いということで、おろしハンバーグとちらし寿司だった。その後啓徳は自分の貯金から入学金を支払い、アルバイトが休みの日に両親と不動産屋に行く。そこで京都で1人暮らしするためのマンションも決まった。




