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 叶絵も啓徳もイベント事にはあまり興味がなく、記念日もそこまで重視していなかった。そういうわけでクリスマスにはプレゼント交換やパーティーなどはせず、家でゲームして過ごしたという。人混みが嫌いというのもあるからだ。啓徳は叶絵といて気を遣わず、自分らしく過ごすことができていた。こんなに一緒にいて楽な彼女は他にいないと思っているほどだ。


 時が過ぎ、啓徳は高校を卒業して地元の国立大学に進学する。しかし同じ学科に啓徳の高校の同級生はおらず、すでにグループが出来上がっている状態だった。恐らく入学前にTwitterなどのSNSで「#友達募集中」「#春からK大」などのハッシュタグをつけ、友達募集した結果集まっているのだろう。あ、やばい、出遅れたかも。啓徳は頭が真っ白になる。

 このままじゃいけない。そう思った啓徳はグループワークの授業中、近くにいた男子学生に勇気を出して声をかける。しかし彼に「ごめん、俺もう田中と組むって決めてるんだ」と断られてしまった。入学して数週間経つのに未だに誰とも仲良くなれず、啓徳はどんどん孤立していく。周りは和気藹々としているだけに疎外感だけが増幅する。ギリギリで合格したので授業にもついていけない。啓徳はそんな状態が長く続き、大学を休みがちになった。心配した両親が啓徳を精神科に連れて行くと、「適応障害」と診断される。

 それでも叶絵は相変わらず啓徳のことを気にかけてくれていた。学校終わりなので、いつも決まった時間に啓徳の自宅に来る。最初は叶絵と話して元気をもらおうとしていたけれど、啓徳はどんどん塞ぎ込んでいく。母親に「叶絵ちゃん来たよ」と言われても、「いないって言っといて」と返すようになった。啓徳はこの世で自分が一番惨めだと思い込み、家族以外は誰にも会いたくないという気持ちが強くなっていったのだ。内向的で人見知りなので大学生になっても友達ができず、授業にもついていけず、学校に行けなくなってしまったから。こんな情けない姿は誰にも見られたくないと啓徳は思っていた。


 叶絵は高校生でまだ若いから、こんなメンタル弱い俺と付き合うんじゃなくて健康な男性と幸せになった方が良いんじゃないか? そう思った啓徳は叶絵に別れを切り出そうか悩むようになる。しかしいまは重大な決断はしない方が良さそうだという考えもあり、別れを切り出すタイミングが掴めなかった。そんなある日、叶絵からLINEが来る。中身を見ると「私では支えてあげられないかもしれない。ごめんなさい」という内容だった。叶絵が一番遠い存在になってしまい喪失感はあったものの、叶絵から言ってくれて安堵する気持ちも啓徳の中にあったのだ。

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