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 敦子と別れて以来、啓徳は特定の彼女を作ることはなかった。マッチングアプリも向いていないとわかり、2度としなくなったのだ。それ以降は公務員試験対策に打ち込むことになる。

 勉強の甲斐もあり、2年生の夏に啓徳は大阪市の公務員試験に合格した。来年の4月から啓徳は大阪で公務員として働くことになる。京都市も受けたけれど不合格だった。京都から大阪への通勤なので距離はあるけれど、啓徳は今すぐの引っ越しは考えていない。公務員試験が終わった後は相変わらず、男友達と遊びに行ったり飲みに行ったりしていた。



 そうこうしているうちに啓徳は夜間専門学校を卒業し、社会人1年目となる。大阪市内で公務員として働いているが、市民から窓口のカウンター越しに怒鳴られたこともあるし、名札を見られて「あー辰巳さんね。覚えとくわ」と名前を呼びながら捨て台詞を吐かれたこともある。それでも啓徳が辞めずに頑張れたのは、職場の同僚に恵まれたからだ。


 入社して半年が経ち、啓徳は仕事にも慣れてきた。金曜日に飲み会から帰宅しようとしていたとき、啓徳は女子高校生がスーツ姿の年配の男性に絡まれているのを目撃する。近くで話を聞いていると、どうやらAV女優にならないかと勧誘しているようだった。

「君、エッチな女優さんとか興味ない? 君のルックスなら年収億稼げんで!」

勧誘する男性に、女子高生は「あの、私、そういうの無理です……」と困惑している様子。それでも男性は「無理とか言うけどさ〜。そんなんやってみなわからんやん? 今からホテルでおじさんと試さへん? ホ別10万で」としつこく迫っていた。女子高生は「は……? ホ別……?」とさらに困惑し、震えている。

 啓徳は女子高生の前に立ちはだかり、「はい、そこまで。警察呼びますよ?」と男性を牽制する。

「なんやねんキミは!」

激昂する男性に、啓徳は冷静に返した。

「いま女子高生に卑猥なこと言ってましたよね? あなたのしていることは大阪府迷惑防止条例違反になります」

一連のやりとりを見ていた群衆から

「そうだそうだ!」

「お兄さんの言う通り!」

「おっさんキモー!」

「サイテー!」

といった声があがる。中には動画を撮っている人もいた。男性は「若いだけのブスなんて、仕事やなかったら声かけへんから!」と捨て台詞を吐き、去っていったのだ。

 それから啓徳は女子高生に「大丈夫だった? 怪我はない?」と声をかける。「はい、ありがとうございます……!」と女子高生は返した。

「夜道危ないし、気をつけて帰ってな」

女子高生が駅に向かったのを確認し、啓徳は女子高生を見送る。

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