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働く使用人を観察する公爵夫人を観察する公爵

「ふふふ、旦那さま」

「なんだ?」

「こんなところで何をなさっているのですか? 奥さま観察ですか?」


 アスランは、物陰に隠れるようにしてリネットを見ているところをアルフレッドに発見されて笑われた。


「笑うなよ、アルフレッド。『観察しろ』と言ったのはお前じゃないか」

「そうですが。ふふふ。かくれんぼみたいですね」

「……子供みたいだと?」

「まぁ、旦那さまは若々しいですから?」

「ん……」


 ちょっとむくれたアスランに、アルフレッドは笑いを押し殺して肩を揺らした。


 アスランが物陰から見ていたのはリネットの姿だ。可愛らしい彼の新妻は、屋敷中を駆け回って使用人たちを観察している。商売のヒントを得るのだと目をキラキラさせながら使用人たちを見ている姿は神々しいばかり。光り輝き過ぎて、ちっとも隠れていない辺りは可愛らしい。真面目で一生懸命で、いじらしくも美しく、可愛らしい妻の姿を、アスランは見ていた。


 本当は見ているだけでは足りない。触れたいし、抱きしめたいし、もっとなんだか色々したい。いいじゃないか夫婦だもの、そうだろう? と、思うのだが。可愛く賢いリネットは、簡単にアスランの腕には収まってくれない。


 アスランだって頑張っているのだ。花も贈れば、宝石も贈る。お出掛けだって一緒にする。その行き先がリネットの商会が置かれている事務所だって構わない。本当は一緒に観劇もしたいし、ディナーもしたい、もっと色々としたい事はあるけれど、スルッと逃げられてしまうのだから仕方ない。


「ところで、何の用だ?」

「はい、旦那さま。奥さま観察をなさっている所、申し訳ないのですが。隣国から問い合わせのお手紙が来ております」

「ああ、分かった。アレだな?」

「はい。アレでございます」


 アスランだって考える。これでも四十を超えた大人の男なのだ。気になる相手を口説くのに、花や宝石を贈るばかりが手ではないことくらい、まるっとお見通しなお年頃である。


 可愛く美しい新妻には笑顔が似合う。笑顔を引き出すには喜ばせることだ。リネットが喜ぶ顔を見たい。リネットが喜んでくれることってなんだろう? アスランは考えた。幸いにもアスランには、生きてきた年月に得た知恵と人脈、財力と使える物は色々ある。


「ならば、早々に返事をせねば。私だってリネットの役に立ちたいのだ」 


 アスランは隠れていた棚の影からスックと立ち上がり、金色の髪をキラキラと煌かせながら執務室へと向かった。



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