第七話:オケウエーとヒルドレッド、それぞれの『奥の手』
「うううおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
『え?何なんですのー?あれは?』
『気をつけるんじゃー!ヒル嬢!あの餓鬼、なにか仕掛けてくるんじゃぞー!』
『アールドヴィオーレ』の助言に、ヒルドレッドが城の中の操縦室で玉座で腰を下ろしながら、部屋の中にある大きな魔道クリスタルでオケウエーが迸らせている聖魔力の純粋なる本流が見えるような映像を観察しながら驚いている様子だ。
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「ううううおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!!!! 【改:絶清大聖魔術技】!!!第2部類、【十字型敵動十倍低下聖痕】ーーーーーー!!!!!!」
俺がじちゃんとの記憶を思い出して漲ってきた気力を頼りに、その瞬間にイーズから与えてもらった『感覚』を元に、俺は更なる力を全身から感じるようになり、思わず漲ってきた勢いそのままに全身で高まった聖魔力量を大聖魔力へと衝動的に変換させ、感覚に従うままに新しい【大聖霊魔術】の究極な奥義、【改:絶清大聖魔術技】の第2段階、【十字型敵動十倍低下聖痕】を習得し、使えるようになった瞬間を噛み締めた!
『ねえ、 アールドヴィオーレー!明らかに異常ですわよ、オケウエーサンの今の状態ー!!どうなっているんですのー?何で彼にそこまでの聖魔力量がー!?』
『いかんー!ヒル嬢ー!今すぐ【内面反映巨大型鏡城】を解除してここから離れー』
ピカアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!
もう遅いー!
さっき、ヒルドレッドが見せてくれたあの強烈な真っ白い光よりももっと超巨大な太陽のような真っ白い光り輝いている四角いオーラが遥か天井から出現するようになり、真っ直ぐに光のような速さでここの地面一帯の一列を上から睥睨する長いオーラが十字のような形に変え、そしてーーー!
ピカアアアアアアアアアアアア――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!
十字のような形になったそれは、すぐ直下にある俺、そしてそこでデンと鎮座して破壊できそうにない巨大な城をも十字のオーラで全体を覆い隠すようにして宙から落下してきたー!
屋根から塔から尖塔から柱から壁からへとその十字型のオーラが着地して、真っ直ぐにあそこからここまでいる俺のいる位置へと伸びて、そしてーーー!!
パチ―――――!!
俺が指を鳴らすとー、たちまちその城が本当に存在していたかを疑いたくなるほどに秒速で全てが霧散して無くなり、そこで腰を下ろしていたヒルドレッドもを巻き込んで地面へと十字のオーラがひれ伏させ、苦しいながらもどこかやっとの思いで立ち上がることができたみたいなヒルドレッド!
「どうだった?俺の【愛の大聖霊】が最も得意とした奥義、【改:絶清大聖魔術技】の第2段階、【十字型敵動十倍低下聖痕】を喰らった感想はー?」
「うぅぅぅ………さ、最悪ですわーー!!そ、それはともかく!どうしてこの十字の白い線がわたくしの身体も範囲に入ったこの地面に落下してきたら、まるで地面に縫い付けられてるかのように身体中が重く感じてるんですの―――!?貴方の技でなにかしてきましたわよねーーーー!!?」
「如何にも。俺の【十字型敵動十倍低下聖痕】というのはな、巨大な十字のオーラが天から落下し、その一線のどこにでも入っている敵を地面に重力でも倍増させていそうな効果で以って、対象としたターゲットの動きを10倍までも低下させる能力を持っているんだぜー!もちろん、十字に入っている対象が発動している最中のどんな魔術、精霊魔術、反人力に基づく技であろうとも即座に無効化し、霧散させることができたのだ!だから、お前の発動中だった城が解除され、いま身体中が重く感じるっていうのは、俺の術中にハマったって証なんだぜー!」
俺のこの最終奥義は属性を無視できるものなので、例えヒルドレッドの城が同じ聖なる能力を持っている精霊が形成したものであろうとも、同属性であっても無効化できる俺の今の唯一の究極な聖霊魔術だ!
後、あえて名言しないが、対象が線の中に入ってる限り、外へと抜き出すのは相当な聖魔力量を持ってないと出来ないようにしてるので、さっきあの城を召喚して、おそらく聖魔力量の四分の三も消費しただろうヒルドレッドに外へと抜き出すことは不可能なはず!
実は、ヒルドレッドが展開していたあの城も、イーズが見積もっていた通りに破壊することが難しいそうだったので、たとえ俺が近くに寄っていき、聖剣の切っ先を触れさせ【聖封第7、莫大規模聖白浄清球状魔封】を発動しても真っ白い球体に包み込んでいる城を石化させることが不可能だったのだろう。
そして、たとえ俺に第4階梯のいずれかの四元素魔術が使えるようになっても、それだけの威力でもヒルドレッドの立てたあの城を破壊することは難しかったであろうー!
それほどに強力な奥の手みたいだったね、彼女のそれはー!
例えば、その技の有効なる活用方法は、【世界獣】と戦う際に、仲間達をあの不滅の城で護ることもできるし、全員を防御しながら敵の嫌な内面のところまで見せて(敵が人間だった場合)、世界獣に至っても何らかの発狂させられたり、敵集団を同士討ちさせるような錯覚までも幻覚を見せる可能性がありそうなのだろう…………
オードリーから聞いたんだけれど、ヒルドレッドの契約精霊である『アールドヴィオーレ』は確かに普通な【聖魔力】による攻撃が出来なくて、『白霊気流』だけが『アールドヴィオーレ』に使用できる唯一な能力だ。普通な聖魔力と違って、禍々しき反人力の存在を真っ白い霊力の載せられている気流で浄化できるそれは魔術的な破壊攻撃や遠距離攻撃がまったくできないらしいので、いつも武器の巧みな扱い方で物理的に世界獣を至近距離から身体能力強化で撲殺してきただけの脳筋少女だって聞いた。
だから、その城からは聖魔力がベースとなっている遠距離攻撃用の精霊魔術がまったくできないというのは把握済みだったので、その城から発生した能力が【精神系攻撃方法】であることも不思議じゃなかった!
だから、それ程の究極な防衛型な精霊魔術であるヒルドレッドのそれが、確かに俺の今のイーズベリアがあっても破壊することが超難しかったろう。死霊魔術でも使わない限り………………。
だが、この【改:絶清大聖魔術技】の第2段階である【十字型敵動十倍低下聖痕】だけが、その巨大な城を霧散させられる唯一な聖霊魔術なので、もうこっちの勝ちになるんだぜー!
「十倍まで動きを鈍くさせるんですってーー!?……くっ~!でしたら!わたくしの動きが遅くなっても、この大きい一線が地面に塗りつぶされている位置から外へと亀のような遅さでも移動することができればーー!」
「はてさて、俺がそう簡単にお前をその線の外へと歩かせると思うのかー?」
「ー!?」
タ――――――――――!!
真っ直ぐにヒルドレッド目がけて、肉薄していく俺!
この【十字型敵動十倍低下聖痕】に入ってる全ての者で、唯一に普段通りに動けるのは術者である俺だけ。
だが、この【大聖霊魔術】を発動できる期間もそうそう長くなくて、5分しかないので早く決着をつけに行かないと―!
「オケウエーサンーーー!!!ですから舐めないで下さいましって、何度も言えば分かるんですの―――!?」
「えー?」
駆け出して行った俺にそう叫んだヒルドレッドはー!
「『奥義―!わたくしの手足となりて敵体に白霊の静謐さと清廉さを刻みこみなさいー!』」
『御意じゃー!我がヒル嬢!』
あろうことか、彼女の握り持っているその槌鉾の先端についている撲撃に使う、尖った鋼の出っ張りもある真っ白い球体がいきなり外され空中に浮くようになって、そしてーー!
ガチャー!ガチャーガチャーガチャーガチャーガチャーガチャーガチャーガチャーガチャー!
その尖った出っ張りもある球体がいきなり分解して、10までに分裂したそれぞれが突如として小さな全身を鎧に纏う小型な剣使いの騎士達が形成され、そしてー!
『ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!ヴィオーレ!』
自身の名前の一部を可愛い掛け声で連呼していて、俺に向かってその10体の小型な騎士が襲い掛かってきたのだーー!!!
くそー!
確かに俺の【十字型敵動十倍低下聖痕】がもっとも効果を発揮するのは人間の精霊術使いや魔術使いの身体に対して、そして世界獣の身体に対してだけになっているので、『契約精霊』本体かのその『真体姿』の一部か、目の前でミニ化した分裂型の精霊には動きを10倍遅らせることはできないはずだよなー!!
この個人戦の決闘にはそれぞれの契約精霊を『真体姿』に変えて戦うことが禁止されると学院長が決めたので、本来はそういうのが『真体姿』になるかどうか議論の余地もありそうだが、きっと学院長の中にはあの『アールドヴィオーレ』の『真体姿』はルネヨー・フラックシスで見た時みたいなもっとデカくて巨大な騎士の本体になるので、今のあそこの10の小型騎士は学院長的にカウントされないはずだろうなー!
タ―――――!!!
仕方なく後ろへ飛び退った俺はその小さな騎士たちを迎え撃つために、剣を構える姿勢を取った!
この【十字型敵動十倍低下聖痕】の影響下で確かに俺だけが動きを10倍以下までも遅れることになることはないけど、その代わり、線の中にいる俺が一切合切の聖霊魔術と魔術が使えなくなったので、ただの剣術であの騎士達からの猛攻を耐え忍ぶしかないーーー!!!
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観客席の『チーム・オケウエー』のところで:
「ああぁ…あぁ~!ごめん、僕の目が間違えないか、心配だったんすけど、さっきのあれ……マジでありえるっていうんっすかね?…」
「あ~ははははは……私も同じ気持ちなんですね……。まさか、あんな超巨大で超頑丈そうな真っ白いお城をヒルドレッドさんが『精霊魔術』として一瞬で召喚できるなんて……そしてそのお城を見た瞬間のオケウエーさんが何故そんなに自身を取り乱させていたのか全然ついてないです………後、いまのオケウエーさんが発動したあの十字の光も……」
「ふ~。確かにすさまじい光景だったのね、ジェームズ君にジュディ。オードリー嬢もそう思ってるでしょう?」
「……え、ええ…。ま、まさかヒルドレッドにそこまでの隠し玉があるなんて……びっくりさせてくれたわねー!……やっぱり、私を倒すために色々と過酷なトレニンーグを自分に課していたのかもしれないわね……」
「でも……さっきのオケウエーさんの様子……明らかに普通じゃないですよねー?その城を見て、一体何が見えたというんでしょうか……」
「あの発狂ぶりだと、きっと何か幻覚を見せてたんっすよね、あの城が!」
「ええ、多分……敵、…というか『対象』にしているターゲットに何かの幻の類を見せて、相手の弱さや心理的な弱点につけこんで取り乱させていたみたいわね……。それで、オケウエーがあんなに、...あんなに初めてで狂っているような仕草を見せちゃう様子だったわよね…」
「それだけ聞くと、なんかうちの【サリシャー】みたいな能力なのね。……まあ、うちのは相手を発狂させるような幻覚を見せるんじゃなくて相手を眠らせられる矢を射られるだけのものなのだけれど……」
「はははは~、いいや~!それにしても、マジで次元が違い過ぎる話で僕まで信じられなくなってきてるんっすよー!やっぱ、学院一年生の2番目な入学試験点数を取ったドレンフィールド嬢さんに喧嘩を仕掛けられるだけあって強いんっすよねー、ヒルドレッド嬢さんって」
「ええ、そうみたいわね、ジェームズ男爵。……ところで、下の舞台を見る限り、なんかあの十字の聖霊魔術を彼が発動してから、ヒルドレが全然うごかない様子だけれど、きっともうすぐ勝つわね。なので、ひとつ聞きたいんだけど、あんたってオケウエーと同じ男性でしょ?なので、そのゥ……男性が喜ぶようなプレゼントって、…何がいいと思う?」
「「「……え?」」」
オードリーの問いに対し、その場にいた誰もが意外そうな顔を浮かべるだろう。
「「「へえー!!?」」」
「オードリーさんが、……オケウエーさんにプレゼント…を贈るっていうんですか…?…」
「……失礼な言い方なら予め申し訳ないんっすけど、……本当にお体の方は大丈夫……なんっすか、ドレンフィールド嬢さん?熱でもあるんじゃないっすかね?」
「ふふふ……ついにデレ期に入ってるんじゃないかしら?…よもや【希望の才女】とも言われる貴女が散々嫌っていた男の子に対してプレゼントを贈るようになるとはね~?」
「~~~!?あ、悪までも友達としてのギフトだけわよーー!まったくもう~!友達にプレゼントを贈ってなにがわるいっていうのーー!?そうだわ、ギフトを贈りたいってだけで病人扱いしたそこの減らず口な失礼極まりないジェームズ下級貴族はそこで直りなさいよー!2度と無礼な言葉を吐かせないよう氷漬けに―」
「うわあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
オードリーが最後まで言おうとした言葉を遮るように、下の舞台から声が若い男の子の悲鳴が聞こえてきて、全員が斜め下の方の舞台へ目を向けるとー!
「あぎゃあーーーーー!!うがあああああーーーーーーー!!!!近寄るなお前らーー!!」
どうやらオケウエーが苦戦しているらしく、小さな騎士の姿をしている小型な精霊に襲われていて身体中の何箇所かが一杯に切り刻まれた傷と裂傷がたくさん出来て、夥しい血を流している最中のようだ!
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