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三十四話:ジュディの契約精霊

「イーズ!起きてるかー!?」


『イエース、マイ―マスター。ちょっと休眠……したんだけど状況は……すべて把握した。オケ兄ちゃんの……切り札のことも』


さすがは俺の契約精霊だ。【大聖霊】という肩書はお飾りじゃないってことだね!


「よーし!オードリーは自分のお姉さんとなると慌てて冷静な判断が出来そうにないみたいだから、人質を取られて後手に回っていてもおかしくない!急ぐぞー!」

『御意』


窓から外へと飛び出していくと、

キーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンン!!!!!


「ーー!?な、何事だー!?」


空へと飛び上がろうとすると、いきなり強烈な耳鳴り音が発生した。

発生源を辿ると、ここの学院寮すぐ後ろの森の入り口に、『それ』が見えたー!


キーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンン!!!!!


「くそー!またか!」


あれだ!ルネヨー・フラックシスにいた時に、見えざる【樹界脈】がいきなり実体を得るように見えるようになって、けたたまし耳鳴り音を鳴らせてからー


パチイィィィィーーーーーーーーーーーーーイィィンンンンンング!!!!

ピカ――――!!


突然に大きな光をそこの脈から発光し出したら、すぐに白い霧が出来上がる。

中からだーー!世界獣の気配が!


「くーっ!前のと反人力の規模が小さいけど、それでもー!」

「「「「「「グワオオオオオーーーーー!!」」」」」」


霧がすぐ晴れるとなかから、小走りでこっちへ向かって襲い掛かってきたのが6体の『レイジ・エープ』のようだ。


「イーズベリアを手に入れた今の俺じゃなくても、前に『轟炎雷刃(ロアーリングフレームズ・オブ・ライトニングブレイド)』という武器化した大聖霊よりも遥かに劣っている精練魔剣を持っていた俺でさえ相手にならなかったってのに、6体だけの『闘志級』のお前らが『今の俺』に対して襲ってくるとはさすが知能のない世界獣下級クラスだなー!」


向かってきた6体の『レイジ・エープ』に狙いを定め、腰を少し屈んだ俺は、


「一の型、【聖刃波斬ホリーブレイド・カッティングウェーブ】」


それだけ唱えると、腰に提げられてる鞘から聖剣イーズベリアを抜き放ち、鋭い一振りを完成させた後、聖なる真っ白い斬撃波が目の前にある6体の『レイジ・エープ』目がけて飛翔し、そしてー


バザーー!!バザーー!!バザーー!!バザーー!!バザーー!!バザーー!!


6体すべてをたった横長い真っ白い一線の斬撃波が綺麗に胴体の半身から両断してやった。


ドサ!ドサ!ドサ!ドサ!ドサ!ドサ!

両断したまますべてが地面に倒れているのを確認すると、


「イーズ!ナイス精霊魔術だ!いや、『精霊魔剣術』と言った方がいいのかな…」

『どっちでも……いいんだよ、オケ兄ちゃん。イーズ、ネーミングセンスは……難しくて、分からないから』


「それもそうか。何千年間も前からあのクリスタルの柱で眠ってたもんな、お前」


あんな籠の中で閉じ込められたまま眠ってたなんて……イーズの合意があったかどうか詳細なことはまだ聞いてないが、あれほど世界の情勢と無縁なとてつもない長い月日を過ごしてきたのなら物を命名する時の心得が下手なのも納得できることだね。


シューーー!


さっき暴れ出していた【樹界脈】が沈静化したのを見ると、もう世界獣の襲撃に警戒する必要のなくなった俺は聖剣を鞘に納めた。


実は、イーズを腰の鞘に提げなくてもいいけど、【異空間収納】に保管するとなるといざという時に持ち出してくの手遅れになる可能性もあるかもしれないので、いつでも持ち出せるようにしておいたのだ。


「それにしても、あそこから出てきた世界獣を倒したから樹界脈の暴走が沈静化したようなのか、イーズ?」


『詳しいこと……まだ判明してない。おそらく……そうだと思う。世界獣の具現化に費やす……聖魔力気の量が……尽きたのかも』


なるほど。つまり、ここへと流れてきた聖魔力気の流入が前のルネヨー・フラックシス第二階層にいた時とは規模が小さすぎるから、こうも下級の世界獣だけを出現させ全部が倒されたらそれっきりで鎮められたってことなんだなー!


ん?待て!

「でも、ここの精霊術学院には確かに『聖なる結界』が張られてるとイリーズカ先生に教えてもらったことがある!聖エレオノールの手掌紋がここに保管されてあると教えられる前にも伝わってきた情報だから、たとえー...はー!?」


あることに気づいた俺は、


「そうかぁー!あの結界は学院から半径150メートルに見えざる結界が張られ、そしてその外から中へと世界獣の侵入を防げるけど、既に中へ伸ばされてきた樹界脈からの発生だと、世界獣の出現を結界内で防げなかったっていうのかー!」

『どうやら、その通りみたい......だよ』


前代未聞の『樹界脈』の可視化だからな!

今までの常識がひっくり返ってもおかしくない程に状況が未知なる境界へと突入しちまったみたい!


「じゃ、オードリーのとこへー」

キイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!


なんだー!?今度はー!?

【空中浮遊魔術】を発動しようとしたら、またも耳鳴り音が聞こえてきたから周囲を見回してると、


『オケ兄ちゃんー!空から!』

「ーはっ!?」


言われた通りに森の入り口の位置からその上空へと見上げると、

キイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!


またも【樹界脈】の具現化だーー!

今度は物凄い反人力を感じ取れたけど、前の6体よりも強い方かーー!


パチイィィィィーーーーーーーーーーーーーイィィンンンンンング!!!!

ピカア―――――――――!!


『キキキキキキイイイイーーーーーーーーーーー!!!!』


光と霧の発生後、そこから出てきたのは巨大な真っ赤な蜥蜴が爬虫類型の両翼を羽ばたかせ、俺を認識した途端すぐにそんな五月蠅い鳴き声を轟かせた!


『オケ兄ちゃん!【レッド・ワイバーン】だよ!……周囲への被害が及ばないよう……早く消した方が……いいよ?』

「わかった!これでも喰らえー!一の型、【聖刃波斬ホリーブレイド・カッティングウェーブ】ーーー!!」


意気込んで精霊魔剣術を放った俺だ。これでも普通の魔剣技ではなく、【愛の大聖霊】特有の『精霊魔剣術』だ!


ただの下級の世界獣だったら、これで仕留められたはずなんだがー


『キキキキイイイイイイーーーーーーーーーーー!!!』

バザー―――!!!バザー―――!!!


「ーー!?ほう…」


両翼を使って叩き消したようだ、俺のイーズベリアが放った【聖刃波斬ホリーブレイド・カッティングウェーブ】だ。


『剛力級クラスだよ、オケ兄ちゃん。それもただの雑兵格の【ドレッド・スパイダー】じゃなくて……中級格の【レッド・ワイバーン】だ。熟成体【レッド・フーリックス】までに強くなくても……火炎系を除いての多種類の【精霊魔術】と【精霊魔剣術】への耐性が……とても高い』


「なるほど!でも、『二の型』ならいけるだろう、イーズ!」


『待って。この先……異常事態だから……なに起こるか分からない。聖魔力……温存すべき』


つまり、負担の小さな【四元素魔術】でも使えってところだな!よし!


前は第一階梯の【翔刃烈風斬】しか使ってないけど、これほどの大物なら、派手にー

「オケウエーさんーー!!」


ん?声が後ろからしたかと思うと、


「ジュディーー!!」


「すごい音がしたから心配で寮へやってきたら既にマティールダさんが寮のスタッフの避難をー」

「説明は後!集中しないとー」

『キキキキイイイイイイーーーーーーーーーーー!!!』


ズシュウウウウウウゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

「避けろ――!!!」

「はいーー!!」


空にいるワイバーンがいきなり激しく両翼を羽ばたかせると同時に、両方の翼からこっちへと向かってきたのがー


バサザーーーー!!!!バサバサバサバサササーーーーーーーーーー!!!!


何十発もの鋭い鱗状の矢が俺とジュディの元いた位置の地面で刺さったー!


でも俺とジュディはそれぞれに逆方向の左右へと避けたので当たらなかったんだが……ん?


どうやら勢いつけすぎちゃったか、俺の方が遠くへと跳躍してしまったみたいだ(空中浮遊魔術を使わなくても大聖霊と契約してる今の俺は身体能力が前よりずば抜けて高くなったから)


「こいつ!やっぱり周囲への攻撃範囲が広いタイプなのかも!早く仕留めないとどっかへ飛んじまって他の学院生に届ー」

「我が手足となりて地下から蠢けー!【フロンデルヒート】ーー!!』


バコココオオオオオオーーーーーーー!!!

いきなりそう声を上げたジュディと共に地面が大きく揺れ上がっているような高くない爆音が聞こえてきたので、そこへ振り向くと、


『ミミミミヤヤヤアアアーーーーー!ミミミヤヤーー!!』


変な鳴き声を発している植物とも蛇とも言い難い中間的な何かが地面から魔法陣を形成してジュディの隣で舞踊さながらの動きで蠢いている最中だ。


体形はジュディより少しだけ一回り大きいけれど、どこか可愛げもある姿をしているようだ。


黄色の花々と葉っぱが生えている丸っこいオレンジ色の植物のような本体から伸びてくるのは12本の蛇のようなぽよんぽよんとした蠢動をしている粘着性の弱い肢体で、それが手足となり周囲へと手を振るようにも見えた!


「フロンデルヒートー!私の初めてのコンバートパートナーに!我が敵に向け【長燃十二火球(トゥーエルヴファイ―ボールズ・オブ・ロングバーニング)】を放って下さい!」


『ミヤアアアーーーーー!』


ジュディの掛け声に従うように、その12本の手足を伸ばして上空のワイバーンへと狙いを定めた先端から十二の火球が出現し、


ゴウーー!!ゴウーーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!ゴウーー!!


すべて12発をぶっ放したようだ!


前のジュディが入学試験で使ったことある【四元素魔術、第一階梯】の【小炎火災砲(スモール・フーレムズ・オブ・インフェルノキャノン)】より3倍も幅と全長の大きい火球が12発まで飛んで空に浮かぶ『レッド・ワイバーン』へとその炎で以って焼きはらおうとした!


バココココーーーーーゴウーー!!ゴウゴウゴウゴウゴウゴゴゴゴゴーーーーーー!!!!

『キシシシャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


避けようとした動きをするようにもっと上へと飛び上がろうとした『レッド・ワイバーン』だったけど、短い距離なら追尾できるように全部12発の火球がものすごいスピードで追っているので、最後は成す術もなくあのワイバーンがすべての火球に着弾されたーー!


だからその高鳴りな五月蠅すぎる苦痛の鳴き声を上げているようだ。


ゴウゴウゴウゴウゴウゴゴゴゴゴーーーーーー!!!!

『キシ!キキシシシシャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


身体中が熾烈な紅蓮な炎で燃えている最中なのに、それでも抗う姿勢を諦めないその剛力級の世界獣は今度、


『キシ!キキシシシシャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』

長い間で燃えてるままに、苦痛の声を上げてる最中なのにまるでさほどのダメージが入らないように平然とジュディの方へと飛び降りようとしたのが見えたので、


「ジュディーーーーーーー!!!」

すかさず、俺は聖剣の『二の型』を発動として、断念した。


何故なら、ジュディから強い聖魔力の波動を感じたから!


「我が敵を跡形もなく消し炭にして下さい、【絶燃消大強巨花猛火災(アブソリュートエキスティンギシーングフレームズ・オブ・ビッグストロング・ヒュージュフラワーインフェルノ)】ーーーーーー!!!!」


早口で以って、素早い詠唱を唱え終えたジュディは燃えてるままに動きが鈍くなってるレッド・ワイバーンへ向けて、自身の契約精霊であるそこの変な球体の植物に命令して、12本の手足がすべて交差するように一点へと触れ合わせるように結集して、そしてそこからー


バゴゴコココココココココココーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


巨大な花の形をしている紅蓮な炎がその絶大な大きさで以って、紅蓮の炎で形成されている紅色の大型な花がたった2秒の間で、あのレッド・ワイバーンへと当たって、耳が劈くような轟音を伴いながら大規模な爆燃を巻き起こしたようだーーーーー!!!


あの距離だとジュディも衝撃波に巻き込まれそうだけど、契約精霊持ちの者は精霊魔術に対する強い耐性を発揮する強靭な身体を手に入れたので、きっと大丈夫だろうー!


……………………………………………………………


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